シュガータイム (中公文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 中央公論社 (1994年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122020863

シュガータイム (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 季節の描写がものすごく美しくて、はかなげで淋しい感じがした。
    多感な年頃って、いったいいつのことを言うのだろう。
    人間って淋しい生き物なんだなぁって思う。
    真由子の友情が健気で、優しい。

    決して力強い文章ではないのに、何だか勇気づけられる。

  • かおるが、“あるときふと気が付いたら、わたしは十分におかしかった。”と振り返ることから始まる。
    わたしにも経験がある。
    何でこんなことになってるんだろう。ふと我に返ると何だかおかしいことをしている。それは他人様に迷惑をかけたり、自分を追い詰めたりするものでもないし、特にそれが苦痛とか快感とかそんな気持ちになるわけでもない。
    だから気づくのが、ふとした瞬間になってしまう。
    あれ?何でだっけ?原因がわからない。いや、あれかな、これかなと思い当たる節は何個かある。でも決定的ではないし、そのうち悶々とした気持ちが薄れてしまって、またふと我に返るときまで同じことを繰り返している。

    かおるの胃袋はまるでブラックホールのようだ。食べても食べても食べ物への執着が収まらない。特に体や心が不調というわけでもないし、過食症でもない。かおるは淡々と異様な食欲を受け入れる。原因はいくつか思い当たるけれど、それがそうなのか本当のところわからない。
    親友の真由子には相談したけれど、彼氏の吉田さんには打ち明けなかった。
    「いいの。別に、必要性をかんじないから」
    この言葉に彼女自身が気づかない心の砦のようなものを感じた。特別意味のあることではないから、必要性がないからと、かおるは言うのだけれど、これから彼女の身に起こる何か不安めいたものを、先に体が感知したんじゃないかなと思った。
    かおるは吉田さんとの別れを経験して、今の状況を抜け出たいと思うようになる。そして今自分に必要なのは、心を込めて作った料理だと悟る。彼女は弟の航平を手作りの夕食会に招いた。それは微笑みと満足に彩られた平和な食事だった。
    航平との優しい時間を過ごしたことで、かおるの心は哀しみを受け入れることが出来、それはブラックホール化した食欲の終焉を意味していた。

    終わりが始まり。
    そんな言葉を思い出した余韻の残る物語だった。

  • 食事、弟、低身長、のワードが織りなす偏愛青春小説。生暖かいけど何か噛みしめる程に丁度良い加減になってくるホッカイロな印象の小説だった。

  • ある日突然果てしない食欲に駆られ始めた大学生のかおる。過食症ではないし、どれだけ食べ続けても太るわけでもないという不可思議な症状に見舞われた彼女は、奇妙な日記をつけ始める。
    親友の真由子、恋人の吉田さん、そして身長が伸びない難病に冒されている弟の航平。
    かおるの残りわずかな大学生活を綴る不思議な青春小説。

    小川洋子さんの小説の主人公(女性が多い気がする)は、どんな大変な事態に見舞われていても、大抵淡々としている。
    自分に起きていることなのに、どこか俯瞰で見ているような。
    この小説の主人公のかおるも、突如異常な食欲に襲われて悩んでいるはずなのに、どこか冷めていて、その事態をとりあえず楽しんでみているようにさえ感じられる。

    孤独、という言葉が読んでいる間ずっと頭の片隅にあった。
    親しい人たちに囲まれ、ふれ合うことで日々生きているのだけど、基本的に人はひとりだという、そういう感じ。
    とくにかおると吉田さんの関係は儚く、淋しい感じがした。
    そして難病を抱えつつ毅然と生きる航平の清廉さにも、孤独という言葉がつねにつきまとっているように思った。

    透明で、現代の物語なのにどこか浮世離れしていて、童話を読んでいるような気にさえなる小川洋子ワールドがやっぱり好きだ。すべてにその雰囲気が共通しているなんて本当に見事だと思う。
    熱くない青春小説。そういうのもたまには、いい。

  • 心の隙間を埋めるものは色々あるけれど、大切な人とのあたたかい食事はなにものにもまさるのではないでしょうか。

    主人公の膨大に膨れていく際限のない食欲は、主人公が気づいていない心の隙間を埋める代替手段に感じる。

    一人で食べる食事の風景は普通にみたらグロテスクなのに、この小説の中ではむしろ静かでとても美しい。喉を滑り落ちて胃の腑に落ち着く食べ物たち。異常な状態なのに、病的でないところが物哀しさを感じさせる。

    弟との小さな食事会を開く主人公。自分のためだけにしていた食事と明らかに違う食事の風景。そこには特別なものはなく、ありふれた食器を使い、ワインも高級なものではない。

    しかしそこに至るまで共に食事をする弟のことを思いながら献立を考え、テーブルを飾り付け準備をし、あたたかな食事会を作り上げる。そこで二人で静かな、満たされた食事をすることにより、一人で膨らんでいた暴力的な食欲から主人公が解放された。それは一人でも食べ物でも埋められないものを、見つめ直す時間でもあったように感じる。

    心の隙間は自分でみつめなければならないものである。埋めてみたり、そのままで放って置いたり人によって向き合い方は違う。けれど、辛いときは人に支えてもらってもいいじゃない。解決の糸口は他者との交流から生まれることも多々あるのだ。

  • モヤっとした読了感...

    主人公が吉田さんを神聖化しすぎてて共感ができなかった。
    航平が物語の中で唯一現実的だったような気がする。

  • 奇妙な日記が野球場できらきらと紙吹雪になって舞う終わり方が好き。良いことにも、悪いことにも、いろいろなことに終わりが来たんだなって。

  • 読み始め…06.11.22
    読み終わり…06.11.24

    小川洋子さんの小説は私にとってビタミン剤の薬のようななもの。たった一行読んだだけで身体の中にすーっと溶け込むように流れ込んで一ページ目が読み終わる頃には身体中に浸透してしまう・・。まるで魔薬です。

    この際ストーリーなんてどうでもいい・・。といってしまっては大変失礼なことかもしれないのですがほんとにそうなのです。

    小川さんのフレーズに酔い
    溺れることが快感。

  • あとがきの
    「この小説はもしかしたら、満足に熟さないで落ちてしまった、固すぎる木の実のようなものかもしれない。」
    というのが、小川洋子らしい気がしていい。

  • 村上春樹色強い
    弟の瞬きの美しさが伝わってきて
    それだけで弟を好きになってしまう
    青春小説と言われれば、小川さんの他の作品より
    確かにそうだ

    物語の感想
    ネタバレ↓

    どうにもこうにも吉田がひどい
    勝手すぎる
    主人公をおいて帰ったり
    最後の別れを手紙だけにしたり
    他の女の存在を、彼にとってどんな存在かまで書いて
    挙句の果てに「傷つかないでほしい」とか
    どんなけ勝手やねんっていう
    二度と読まない

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