光る源氏の物語〈上〉 (中公文庫)

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  • 中央公論社 (1994年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122021235

光る源氏の物語〈上〉 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • お友達の紹介で読んだ本です。
    丸谷才一さんの「輝く日の宮」が面白かった、という話をしたら、「これも絶対面白い!」というお話で。
    源氏物語の解説書のようなお話だったので、
    「ずいぶん以前に谷崎潤一郎訳で読んだんだけど、ほぼ忘却しているので、源氏自体を読まないと、判らないのでは?」
    と、尋ねたら、
    「いや、これを読んだら、源氏を読んだ気になれます!」
    というお勧めの言葉で。ならば、と購入。

    いや、推薦の通り。
    物凄く面白く読めて、しかも源氏物語の立派なダイジェストになっています。
    この本は、素晴らしい。まだ上巻読んだだけですが、脱帽です。

    1989年の本だそうです。中央公論社さん、素晴らしい。
    小説家で英文学者、日本語国文学にも詳しく、大人な洒脱なエッセイストでもある、丸谷才一さん(1925-2012)。
    アカデミックな日本語学者さん、大学教授、研究家、そしてコラムやエッセイも手掛けた、大野晋(すすむ)さん(1919-2008)。
    このお二人による、対談形式の本です。
    内容は、「源氏物語」。西暦1008年頃には書かれていたとされる、紫式部さんの長編小説。
    この時代に、これだけのキチンとした超・長編小説が描かれて、それも(恐らくは)特定の個人がそれを書いて、
    それが20世紀、21世紀になっても、ダイジェスト、マンガ、映画、現代語訳、外国語訳という幅広い形で一般に親しまれている。
    そういう意味では、ほんと、大げさではなく、ピラミッドと同じくらい謎めいた、奇跡のような小説です。
    シェークスピアだって16世紀なんです。源氏は、書かれ始めたのは下手すれば10世紀ですからね!
    研究家はともかく、一般の本好き、物語好きの守備範囲で言うと、気が遠くなるようなブンガクです。

    「源氏物語」というと、まあ、研究家の人以外は、原文に取っ組んで、「オモシロイな~」と思うことはあり得ません。
    だって、わかんないもん。言葉が違いすぎて…。滝沢馬琴や近松、膝栗毛や西鶴だってキビシイんだから。
    その上、後述するような作品としての特性もあって、「徒然草」とか「方丈記」の方が(一部であれば)読み易い。源氏はちょっと無理でしょう。
    与謝野晶子さん、谷崎潤一郎さん、田辺聖子さん、橋本治さん、マンガ「あさきゆめみし」など…数えきれない翻訳翻案脚色作品がいっぱいあります。
    僕も、もう霞彼方の昔話になりますが、谷崎潤一郎さんで、読んだことがあります。

    先入観的に、ざっくり言うと、
    ●平安時代の王朝貴族の社会を舞台にした、架空の物語。
    ●主人公は光源氏。天皇さんの子どもで、皇位継承者にならずに、臣籍に降下した人。
    ●この人が、超・イケメンで、文化芸術政治色事、踊りに和歌に人情機微、スーパーマンな男性。
    ●この人が、とにかく大勢の女性と恋愛しまくる。
    ●ロリコン的に美少女を子供時代から自分好みに育てて、自分の愛人にする、「紫の上」。
    ●いい女かな、と思ってHしたら、鼻の赤い醜女だったという「末摘花」。
    ●などなど、キャラクターの際立った女性たちが華やかに周囲を彩る。
    ●当時の貴族社会の風俗として、やたらと和歌をやりとりする。和歌のいっぱいある、小説。
    ●最終的には次世代の話まで伸びていく大河小説。
    ●なんとなく日本的仏教思想なのか、はかなかったり、「もののあはれ」だったりするような、そんな後味。
    と、言うような感じなんです。恐らく「源氏物語」って。

    で、この「源氏物語」について、丸谷才一さんと大野晋さんが、1章ごとに語り合います。
    本の作りとして戦略的なのは、
    「源氏物語、ちゃんと通して読んでないんだよなあ」
    「読んだけど、もう大昔のことで忘れちゃったなあ」
    という読者でも大丈夫、という感じに作ら... 続きを読む

  • ・紫式部ってすごい人だったんだなあ。知識もあるし、それから、構成力?の高さ。「11世紀なのにこんなの書いててすごい」というロジックには素直に頷けないところもあるが、でもきっとすごいことなんだろうなあ。
    ・メインのa系(母の面影を求めて藤壺、紫の上他)、失敗談個別エピソード的なb系(空蝉、末摘花他)、両者統合後のc系(女三の宮のあたり)、次世代のd系(宇治十帖)に分けて考えるという説に納得。
    ・それから、槿の君や六条御息所の初登場、そして藤壺との初実事が含まれる「かかやく日の宮」という章が存在していたはずだが削除された、という説も知らなかった。しかも削除された理由が、「帝の妃を寝とったことがタブーだから」ではなく(それは削除されてない章にもばっちり書かれているしね)、「物忌みの日に出掛けていって情事に耽ったことがタブーだから」なのではないか、という説も、興味深かった。
    ・色々と「へえ」ポイントがあったけれども忘れてしまった。覚えているうちのひとつ→「情けをかける」という日本語には「表面を取り繕う」というニュアンスがある。だから正妻には「情けをかけ」ない。取り繕う必要がないから。正妻であり姫君の育ての母である紫の上と、姫君の生みの母である明石との間で「情けを交わし」ているのは、そもそもがギクシャクして当然の関係であることをも表している。

  • 上巻かなり読みやすく、ところどころで「あさきゆめみし」を開きながら(谷崎訳を開かないところがまた悲しい)面白く読めました。須磨の源氏が朱雀帝に生霊となってたたったが為、源氏は都に呼び戻された。言われるとすんなりなるほどと思えたのに、六条御息所は生霊と言って源氏をそう呼ぶのははばかる無意識が驚きでした。全面的に私はこの本を鵜呑みにしてしまった。

  • 源氏論はこの対談集に尽きると言っても過言じゃない

  • 1994(底本89)年刊。国語学者と作家、碩学2名の源氏物語鼎談。源氏論でも指折りの面白い書。何より丸谷氏が、小説のプロット作り、構造分析から源氏物語を解読する様は圧巻(①一見退屈な「雨世の品定め」をドラマティック・アイロニーで読み解く、つまり源氏が藤壺との密会を経ている中で聞かされる男女論は源氏の無言の凄みを感じさせる、②藤壺密会のタブーは父帝妻の寝取りのタブーでなく、物忌のタブー)。一方、大野氏の文法・古語の確かな知識による読解も素晴しい(情、艶、「よしとゆゑ」の差、秋好中宮はアンチ清少納言の象徴)。

  • 国語学者の大野晋と作家の丸谷才一の対談で進む「源氏物語」の解題。精妙な言葉の使い分けに反応して、ここまでわかっている2人が交わすやりとりは、羨ましくも呆然とするばかりでした。紫式部は極めて微かにしか男女の夜の事を記さないので、実事ありや?と互いに確認しあっているのが面白い。林望訳では、そこを書いていませんが、物語を知る上では、実は重要事項ですよね。下巻に続く。

  • 大好きな丸谷先生と、以前流行った「日本語練習帳」で有名な国語学者の大野晋さんが対談形式で源氏物語を語り尽くした本です。

    古い本ですが、ずっと気になっていたの。
    予想以上の良書でした!!!さすが丸谷&大野ペアです。

    たまに源氏物語の講演を聞きに行くことがあるのですが、学者さんて、決まった時間内に終わるよう起承転結を考えて話さない人が多いんです。
    持論を話し続けて、時間になったらどんなに中途半端でもそこで終わらせるので(涙)消化不良、ということもしばしば。
    それと比べ、この本はめっこり語りつくしてくれてるから楽しくて♪
    以前に読んだ「輝く日の宮」に並ぶベスト本で、源氏解説本としては私の中ではナンバーワンです。
    大御所のお二人だけあって博識で、話が広がる広がる。そのくせ全然堅苦しくなく、楽しくお勉強できました。

    博識ぶりはホントすごいです!
    本居宣長に代表される源氏の論説本は随分昔のものから近代まで読破されているようで、持論との違いとか丁寧に教えてくれます。
    また例えば、「やんごとない」という言葉は、「やむ・こと・なし」が語源。やむ、は雨がやむ、などの自然現象がおさまること。だから「やむことなし」というのは女官としてお仕えしていて「気が静まることがない」ということ。女官たちのお仕えする相手は身分の高い人のことなので、それで、「やむことなし」が「尊い」「第一流」という意味になる、などと、とにかく原文の一字一句を丁寧に解説しながら、全体の構成分析をされている。ほんとうに素晴らしいです!
    テクニックに関しては海外古典との比較が多く、プルーストの「失われた時を求めて」は源氏に似ているとか、他にもドフトエフスキーとか出てきて、ストーリーを知らない私は、そこはついていけなかった・・・

    勉強になったことがたくさんありすぎて、頭に入った矢先にこぼれ落ちそうです(涙)が、印象に残ったところだけ以下まとめておきます。


    ☆構成について
    紫式部は、33帖の藤裏葉までのa系を先に書き、次にb系を書いて差し込んだそう。(もともとは昭和25年に武田宗俊さんがそれを指摘した)
    具体的には

    a系
    1桐壺
    5若紫
    7紅葉賀~14澪標
    17絵合~21少女
    32梅枝
    33藤裏葉

    b系
    2帚木~4夕顔
    6末摘花
    15蓬生
    16関屋
    22玉鬘~31真木柱

    a系だけで読むと物語が時系列に並んでいてシンプルで読み易く、しかもきちんと意味が通じる。
    また、a系の中に幻の一帖「輝く日の宮」があったはずです。

    と、ここまでは、以前読んだ「輝く日の宮」でも主張されていましたが、本書はさらにつっこんでて。
    a系は要するに、光源氏は帝にはならないけれども、臣下にもならない、という予言が実現されるまでのめでたしめでたしのお話。
    だけどそれだけだと光源氏が立派過ぎて面白くないので、実はこんな秘密もあるんですよ、と後から追加したのがb系。それによって物語に深みや奥行きが出た。
    だから本筋であるa系には、b系の女人は全く登場しない。
    b系の主人公は空蝉、夕顔、末摘花、玉鬘であり、これらはすべて光源氏の失敗談。(これは道長の実際の失敗談では?とのこと)
    若菜からはじまるそのあとはc系とくくられ、これはaとbの要素のすべてをあわせてものになっている。(登場人物はab両方の女人が登場)
    このような、時間軸に従った表向きの出来事「紀」(a系)と、個人のエピソード的出来事を記載した「伝」(b系)が絡み合うことによって、歴史の展開の実際の状況を表現する構成は、中国の歴史書「史記」「漢書」などの手法と同じだそう。


    ☆紛失した「輝く日の宮」の帖について
    ここには藤壷との最初の一夜のこと、朝顔や六条の出会いの... 続きを読む

  • 「桐壺」
    「帚木」「空蝉」「夕顔」
    「若紫」
    「末摘花」「紅葉賀」「花宴」
    「葵」
    「賢木」
    「花散里」「須磨」「明石」
    「澪標」「絵合」「松風」「薄雲」「朝顔」「少女」
    「蓬生」「関屋」「玉鬘」「初音」「胡蝶」「蛍」「常夏」「篝火」「野分」「行幸」「藤袴」「真木柱」
    「梅枝」「藤裏葉」

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