- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122025226
感想・レビュー・書評
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徐々に中年の域に差し掛かる光源氏。
一方で冷泉帝には自分が父親であることが露見し、気まずい関係になるものの、従一位太政大臣にまで上り詰め、ほぼ政治の場に出て行く必要がなくなったので、自分の正妻や愛妾などを囲う六条院と呼ばれる巨大な邸宅を建てて栄華の頂を極める。
六条院は邸内が春夏秋冬の四つの区画に分かれ、春は正妻の紫の上が住まうが、後は全部妾。二条にも別宅があってそちらには鼻の赤い末摘花と出家した空蝉を住まわせているという豪華さ。
一方で他の女性にちょっかいを出しつつ、紫の上の嫉妬を避けるために、色々言い訳を言い募るシーンも多く、浮気男の言い訳を延々と聞かされる物語になりつつある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本巻では朝顔・乙女・玉鬘・初音が収録されていました。
夕霧に興味が持てないから、乙女の帖が飽きて飽きて、なかなか読み終えることが出来ませんでした。
性格の悪い源氏も、優雅で明るく分かりやすい頭中将もそれぞれ魅力的なのに、夕霧には魅力がない!久々の恋バナなのにときめきがない!
変わりと言ってはなんですが、乙女の帖は出だしの季節が移ろう描写がとても良くてウットリ。流石橋本先生、日本語が美しすぎます。
玉鬘の帖では、右近の、紫付きの女房としての微妙な立ち位置への不安を主軸としながら玉鬘との再会が描かれているのが興味深かったです。
橋本源氏がそんな捉え方をしてたってぜんぜん覚えていませんでした。
尊敬する上司に尽くしたい気持ち、いつまでも部外者の感覚が抜けない感じ、右近の、現代にも通じる些細な不安が人間味を感じてよかったなあ、と。
関係ないけど朝顔の帖で、朝顔との関係が終わり朝帰りをした源氏と紫が、雪化粧した庭を眺めるシーンを読んでいたら、あさきゆめみしでの見開きでの絵が頭に浮かんできちゃった。懐かしいなあ。
乙女の帖の出だし、素敵なので書き留めておきます。。
年の明けて、春にはまた桜が咲く。弥生三日の入日の空は、茜の雲に満ちていた。匂うような春の色が、金色の日輪から満点に向けて放たれたようで、艶めく空にもう鈍色の雲はなかった。
穏やかな春の風が撫でるように過ぎて、女院崩御の喪は明けた。一年をかけて、人の纏う服喪の色は淡れ、たけなわの春の中で過去を脱ぎ捨てるように、消えた。
散り行く花の吹雪が人の上にかかって、生命の色を甦らせたようだった。
春が終わり、緩やかに夏が来る。緑の草が慕わしげに、その濡れるような色を広げ、梢からは夏の若さが吹き出して来る。
目に沁みるような緑。春の風が乙女のように過ぎた後、初夏の風は青年のなよやかな袖袂を擽るようにすり抜けて行く。 -
橋本治 窯変 源氏物語 6/14 朝顔〜初音
源氏は 太政大臣という名誉職となり、貴族社会に 六条という愛と色香の女性の世界を作ることにより、政治の世界(男の世界)を分けた。
政治の世界(藤原氏の世界)から、女性の権力者(弘徽殿や藤壺など)を 排除したようにも読める
源氏の女性遍歴の特徴
*忍ぶ恋〜夕顔→玉鬘
*家と結婚〜葵の上→紫の上
*反目した恋〜六条御息所と藤壺
源氏の貴族社会の倫理観が 女性の倫理観とズレあり
*貴族社会の結婚観=男は家と結婚する。家=居場所、政治権力。家となる女=正妻、家とならない女=不倫
*仏教倫理で不倫は罪→因果応報→来世は地獄
太政大臣としての源氏の役割
*太政大臣=名誉職、職務なし→藤原氏の栄華の布石
*内大臣(右大将の大納言)=藤原氏→源氏は内大臣が権力を持たないように
六条
(葵の上との子)有霧
(頭の中将と夕顔の子、養女)玉鬘
(紫の上の養女) 明石の姫
明石の女、花散里、空蝉の尼、末摘花