園芸家12カ月 改版 (中公文庫 チ 1-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122025639

感想・レビュー・書評

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  • ベランダいっぱいに様々な山野草とクレマチスを育てていた私に、友人が勧めてくれた1冊。
    1月の園芸家~12月の園芸家まで、その月々に園芸家は何を思い、何をしているのか。
    軽いユーモアも交えつつ楽しく語られた本書は、少しでも植物と生活を共にした者なら「分かるぅぅぅ!」と共感せずにいられない。
    この月は植え替え、この月は剪定と誘引…等と月毎にお世話に追われ、追われるのも楽しみの1つだった私には楽しい1冊だった。
    毎日水をやり、土をいじり、植物たちの世話をしていると、昨日との僅かな違いも直ぐ気付くようになるものだ。
    裏書きにもある通り、そんな園芸マニアをますます重症にする。

  • 癒し系の趣味のように思えて一年365日つねに心休まらないアマチュア園芸家の庭造りの日々をユーモアたっぷりに描いたエッセイ。挿画はカレルの兄、ヨゼフ。


    チャペックにイラストレーターの兄がいることを知らなかったので、「チャペックって自分で絵を描いてるんじゃないの?!」と驚いてしまった。ヨゼフが挿画を担当したのはこの本だけで、旅行記などに載っているのはやっぱりカレルが描いたスケッチらしい。じっくり絵を見たのは初めてなんだけど、最小限の線で立体感と動きを完璧に捉えていてすごすぎる。もしかして高野文子ってチャペック兄弟の影響を受けてるのかな。
    こういう本が好きな割に私は植物の名前をまったく知らないので、いちいち画像検索しながら読んだ。煩雑ではあるけど、文字だけではモノクロに見えた花が検索するたび色づくようで、脳内に花盛りの庭を作るような楽しさもあった。
    チャペックが想定している「園芸家」は男性に限られるらしく、漏れでてくる女性観は玉に瑕だが、園芸家を楽しげにこき下ろす言葉も容赦がないので大目に見よう。珍しい植物を自慢すると「夜になると盗みに来る」という言い切りについ笑ってしまった。あと、イギリス芝のジョーク! これ、『キッド・ピストルズの妄想』の「永劫の庭」(大好き!)にでてくるやつじゃん! と慌てて確認したら、まさしく文中にチャペックと本書の名前をだしていた。そうだったのか。「待てばシラカンバの花咲く季節もある」の引用元も本書だったとは。
    一番最後に置かれた「ありがたいことに、わたしたちはまた一年齢をとる」という一行が表すように、本書には人が年を重ねていくことを肯定するメッセージが繰り返される。園芸家がまた一つ年齢を重ねる、その祝福として庭は色づき、苗木は幹を太くしていくのだ。同じくアマチュア園芸家らしい訳者の訳注も、日本と西洋の植生の違いや自ら栽培した体験記、アジアと西洋の幻想植物学など多岐に渡って読みごたえあり。

  • どくとるマンボウ昆虫記のようなノリで面白かった.
    園芸に詳しかったら,もっと楽しめたかも.
    (これが1920年代の作品であることに驚かされる)

  • この世には二種類の人間しかいない。園芸家か,そうでないかだ。

    『ロボット』とかが有名だけれども,人を喰ったような文章(あくまで翻訳ですが)が楽しいチャペックの作品。これを読めば園芸家になりたくなる,多分。

    天候に文句を言いながらせっせと庭の世話をする,隣の芝生は青いけど隣人がモチベーション,まだ自分の庭にない植物への欲望は果てしなく,一年中なんやかんやで忙しい園芸家。愛と皮肉とユーモアがたっぷりつまっています。

  • 20180513 前から読んで見たかった本。本人は園芸家ではないのだろうが園芸家のツボを押さえていてつい笑ってしまうが違和感無くうなづけたりする。一つの植物の完成には50年や100年の単位がかかる事もあっさりと書いていて希望の実現には長い時間がかかるが楽しんでやればいつかは実現されるという主張のように思えた。

  • 斎藤美奈子さんの『名作うしろ読み 』で紹介されていた本。

    タイトル通り、ただただ園芸家(といってもプロではなく、ここでは「マニア」的な意味)が毎月どうやって過ごすのかがユーモアたっぷりに書かれている。
    お兄さんのイラストもドリトル先生シリーズのようで味わい深い。

    著者のWikipediaを見ていたら、死因が「12月に、嵐の中庭の手入れをしていて肺炎になった」だったので、園芸マニアぶりをこの本で読むと複雑な気持ちになった。

    中公文庫版では、明治生まれの翻訳者・小松太郎さんの古風で端正な日本語も楽しめる。
    (いつ日本で出版されたのかは不明だが、訳者あとがきは昭和34年)
    ※私が読んだのは黄色い表紙の1975年刊です

    この本、図書館の分類は「園芸」になっているが、決して実用書ではないのでご注意を。

  • 園芸家の一年とは何か。
    作家であり、園芸を愛した著者による軽妙な園芸エッセイ。

  • カレル・チャペックはチェコの生んだ最も著名な文学者であり、こよなく園芸を愛した。
    そんな彼のユーモア溢れる四季、草花、土壌つくりをめぐる愉快なお話。

    園芸家の悲しくも(それだけ夢中になれるなら、逆に幸せ?)ユーモラスな生態を、月ごとの庭仕事と共に描写するエッセイ…なのかな。

    親が花も野菜も育てているから、凄く納得出来ました
    ここに出てくる園芸家のような言動を良くしてるから!

    凄い昔に記されたものなのに、古臭い感じはしません。
    これは、古今東西の園芸家は変わらない、てことなんでしょうね

    面白い!ケド感想が書きにくい本です☆

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「園芸家の悲しくもユーモラスな生態を」
      内外の情勢に心痛めていた時に、少し嫌なコトを忘れようとしたのかも知れません。
      自分自身を冷静に見て笑...
      「園芸家の悲しくもユーモラスな生態を」
      内外の情勢に心痛めていた時に、少し嫌なコトを忘れようとしたのかも知れません。
      自分自身を冷静に見て笑えるのが凄いと思う一冊です!
      2012/10/29
  • 園芸家のエッセイ。広い庭のある人向け。でもね、ベランダ園芸家でもうなづける事がおおい。そうそう、土が大事なんだね。やっぱりチョット留守にすると枯れる?水遣り頼んだはずなんだが(怒)。うなづける。

  • 素直で、しかしユーモアに富んだ文体。こんな、軽くて面白い文章をかけたらいい。

    「庭」への熱狂的な思いが見えて面白かった。

著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カレル・チャペックの作品

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