雍正帝―中国の独裁君主 (中公文庫)

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著者 : 宮崎市定
  • 中央公論社 (1996年5月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122026025

雍正帝―中国の独裁君主 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1996年刊(底本「雍正帝」中公新書版1950年。論文「雍正硃批諭旨解題 その史料的価値」は1957年初出)。著者は京都大学名誉教授。
     
     著者は言う、清朝崩壊を百年遅らせたのが雍正帝だと。それは独裁君主ながら、利権と私利を貪る輩(官僚)を憎み、超人的な執務量を高い意欲と至誠でこなした模範的専制君主の政策、その結果として得られた国庫の富裕と余裕、旧態依然の明朝期の政治システムを解体したことに依拠したものと見るのだ。
     確かに、康熙・雍正・乾隆は清朝の最盛期だが、雍正帝はその中でも短命政権との評価に止まっていた。
     なるほど、雍正帝は治世13年に過ぎず、長期政権に挟まれた短命政権に過ぎなかったのは事実だ。が、そこで彼の成し遂げた改革の実が、清朝を発展させた事実を明快な文体で追い、先の世評を覆していくのが本書である。

     さて本書の内容と直接の関係はないが、最近アニメーション版「DEATH NOTE」を全話見る機会があって、そこで語られる神の如き存在の激務が、まさに雍正帝がこなした激務にだぶるなぁと思いながら読み進んだ本書。
     ここで生まれる読後感は、
     ①合格者が少なすぎて難しすぎる科挙が、かえって利権を貪ろうとする存在に堕してしまう点。
     ②金持ち=資本家の子弟でなければ科挙合格が覚束ない官僚は、資本家の味方でしかないという事実。
     ③広すぎる中国の国土における統一を維持しようとして独裁制を生んでしまう反面、その広さが独裁制の非現実性を招来してしまうという皮肉。
     その中の徒花というべき雍正帝は、独裁制としては短命政権であったがために徒花足り得たという皮肉。
     ④賢明な独裁君主が時に誕生したことが、大衆の独裁君主への無言の信頼のバトンを繋ぐという悪癖を生み、治者と被治者の自同制という民主主義の根幹概念を隠してしまった。
     すなわち、雍正帝の独裁制こそが、彼の善意が生み出した悪政、史的意味での悪政の最たるもの。
     等というなかなか含蓄ある指摘に溢れている。

     そして後半は「雍正硃批諭旨解題」という地方官から雍正帝に直接送付された伺書・報告書に、雍正帝が直接に添削・批判・回答を朱書した史料を解説する。
     戦前における中国史研究の意味が戦後に急変し、その戦後の中国史研究に従事する中で見出した「雍正硃批諭旨解題」の価値を語る。
     ここで見えてくるのは、時間的な余裕がないと文献講読は難しい事実である。輪読形式なら猶更だ。ここでは文科系の研究だが、理科系なら失敗を含む実験のための時間だろう。
     かような研究者の余力を如何に付与できるかが、日本の研究の質を維持向上させる力、ひいては日本の底力と言えるのではないのか。そんな感慨も生む名著である。

  • お仕事ジャンキー・エンペラーの話。
    p155あたりの、「あらかじめ予期せられたる病死」というフレーズと逸話がじわじわ怖い。

  • 今までのわたしだったら確実に手に取らない本の1つだと思います。
    清朝五代目皇帝の伝記のような本なのですが、なぜこれを読んでみようかと思ったかというと、大陸ドラマ「宮廷女官 若曦」にダダハマリしたから(笑)。

    「宮廷女官 若曦」内で出てくる第四皇子が政権争いに勝利し、即位したのが「雍正帝」。この皇帝、過労死で亡くなったという噂のある人なんですよね。 しかも、当時の地方官吏に国を治めている報告として、レポートを提出させ、それを自分で赤字添削して、嫌味を織り交ぜながら戻していたという、仕事熱心だけれどもちょいと変わった皇帝。

    固い文調の本で、読み終わるのに苦労はしましたが、面白かったです☆読み終えて、少し頭が良くなった感じがしました…(爆)。

  •  ちょうどBSフジで毎日午後5時から清朝第5代皇帝雍正帝の後宮を舞台にしたドラマ「宮廷の諍い女」が連載中である。これがなかなか面白い。清代の後宮の様子が赤裸々に語られており歴史の一部を垣間見るようだ。

     清朝では康煕乾隆と言われ雍正の父子の統治期間が長く、雍正のそれが13年と比較的短いためか忘れられるか或いは無視されがちだという。しかし著者の宮崎先生に言わせると雍正帝は非常に真面目にしかも精力的に政治を行い、中国での独裁体制を作った人物だそうだ。
     雍正帝自身が著した「雍正朱批諭旨」(『朱』は正しくは〔石〕偏に〔朱〕)が雍正帝の政治手法を最も良く表しているという。臣下の上奏文(正しくは『奏摺(そうしょう)』)に帝が朱を入れて訂正したり批判を加えているものを本にまとめて出版したものだ。

     雍正帝の時代に確定された清朝の政治方針に三つの大きなものがある。
    1.皇太子密建の法
    2.軍機処の創立
    3.養廉銀支給の原則

     君主体制の下では3代目に重大な転換期が訪れると言われるそうだが、清朝が中国に入ってからは雍正帝がちょうど3代目に当たる。独裁君主制にひた走った雍正帝であるが、次の4代目乾隆帝になるとことごとく以前の体制に戻ったそうである。雍正帝の強い意志があったからこそ保ち得た体制であった。

     ドラマでは大将軍年羔堯(ねんこうぎょう)を失脚させるための策略や、その妹で帝の寵妃であるがあまりに残虐であった年妃を自害に追い込むやり方など、なかなかに冷酷な人物であることも確かだ。この辺はドラマも史実もあまり違わないのではないだろうかと思わされる。

  • ●康熙帝の大量の皇子たちのなか、巡りあわせと策謀でこぼれおちてきた皇位をまんまとゲットした挙句、働きすぎで過労死したおっちゃん。
    それが第四阿哥→雍正帝こと愛新覚羅胤禛さんです!

    ●正直、康熙帝と乾隆帝に挟まれると地味すぎて、世界史で覚える時もセットのおまけみたいな感じだったんですが、宮崎御大の筆にかかるとあら不思議♪ たいそう楽しいおっちゃんに見えてきます。
    彼の繰り出す悪口と来たら百花繚乱変幻自在、地方官にグサグサ刺さる華麗な叱責芸はまさに名人と言えましょう。
    よくそんなぽんぽんけなすネタが出てくるよなー。まじ尊敬に値する!←いやそれ単なるパワハラやん?て意見は無視無視! 皇帝陛下に逆らったらあきまへん。

    ●薄くて読みやすい中国史初心者向けの一冊。
    まー雍正帝の前に読むべき物は、他にいっぱいあるような気もしますが。

  • 康熙帝と乾隆帝に挟まれて今ひとつ影の薄い雍正帝について取り上げた数少ない本。彼にまつわる象徴的なエピソードを通じてその姿が描かれる。いかにも昔の歴史学者が書いた本という趣(正直、少し退屈)。
    実は本編よりも、後ろについている「雍正硃批諭旨解題」の方がおもしろい。雍正帝は、臣下の上奏文に対し、自ら朱筆で返信していた。「馬鹿につける薬はないとはお前のことだ」とか「大山師の大嘘つきの誤魔化しやの詐欺師め」とか「化け損なった古狸」とかもう言いたい放題。しかも、このやりとりを後で本にして出版する始末(これが『雍正硃批諭旨』)。そこまでやるか。

  • 本著を読んでまずもって思うことは一つ、自身の弱さを誰よりも自覚した人間が、克己と逡巡の果てに独裁君主として広大な国土と人民を統治しようとする意志、完璧な独裁者たろうとしたその意志の計り難さである。康熙帝ではなく、雍正帝に中国の独裁君主の頂点を見る著者の叙述は、かの大陸の歴史を貫く或る不気味な意志を鮮やかに顕現させた。雍正帝の無双の非情さと強烈な意志は、今日の中国の統治機構にも通じる「一への意志」というようなものにも繋がっているのだろうか。或いは、ベトナムへの対応に見るように、単なる機械的な帝国として蠢いているだけなのだろうか。

  • 宮崎市定『雍正帝ー中国の独裁君主』を読む。
    本文はもちろんのことながら 
    併載論文「雍正硃批諭旨(ようせいしゅひゆし)解題
    ーその史料的価値」が面白い。
    解説を書いている宮崎の高弟・礪波護の発案で併載が実現した。
    康煕帝、乾隆帝にはさまれ
    中国史において目立たぬ存在であった雍正帝に宮崎は光を当てる。

    雍正帝が発明した「奏摺(そうしょう)」という
    コミュニケーションの仕組みに着目したい。
    地方の文官武官223名に直属上司を通さず、
    直接天子に報告を上げさせる仕組みだ。
    彼らは本来であれば天子に直接上奏する立場にない。
    だからこそ雍正帝は地方の事実を自分の耳目でつかみたかった。

    鍵のついた小箱4つをひとりひとりに持たせ、
    合い鍵は雍正帝自らが持つ。
    のべ数百の小箱が常に地方と中央を行ったり来たりして
    公式文書とは異なる親展状として天子に届けられる。
    驚くべきはそのひとつひとつの報告に
    天子が朱字を入れ、部下それぞれに返信したことだ。
    「雍正硃批諭旨」はそのやりとりをまとめた書である。
    その読み解きに宮崎は注力したのだ。

    官僚をいかに使いこなすかは
    清王朝、雍正帝だけの問題ではない。
    現代における世界各国、日本のどの政権も同じ問題を抱えている。
    コミュニケーション改革を統治改革に結びつけた雍正帝の創造性。
    そこに着眼した宮崎の書は
    60年以上前の著作とは思えない鮮度を今も持つ。

    (文中敬称略)

  • 天子が万機を親裁する。
    中国全土に散らばった地方官との頻繁な赤ペン文通を通じて、皇帝が直接情報収集し、直接指示を出す。
    明らかに皇帝1人ワークホリックだが、そんな政治手法があったのか、と衝撃。

    皇室の複雑な人間関係を観察し、45歳になってやっと即位。
    生活に苦しむ民衆に善政を施そう、それこそが絶対君主の天命である、
    という強い意志と、行動力、そして権力をもつ(これをもって独裁君主とする)雍正帝だからこそできた。

    たしかに、強力な独裁者なくして成立しないこの仕組みは、構造的に決して長くは続かない。
    でも、その13年の統治の間は、官僚組織をスキップし、改革を実行、結果を出したわけだから、「政治主導」をうたうのであれば、これくらい強い覚悟をもってやらなければ。

  • 康熙帝・雍正帝・乾隆帝の中で世界史の教科書ではひときわ影が薄い皇帝、雍正帝の本。
    面白いです。

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