窯変 源氏物語〈9〉 若菜下 柏木 (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122026094

感想・レビュー・書評

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  • 9巻では若菜下と柏木の2帖が収録されていました。

    柏木と女三宮という愚かな二人が主役の本巻ですが、柏木の心情の表現がみごとです。
    出世欲と幼さと傲慢さとが絡み合って緊迫感として表現されているのですが、女三宮との出会い、彼の結婚の経緯などが詳細に、特にどれくらいの時間軸のなかでコトが為されていったのかが明確化され、単なる「軽率」では片づけられない底に潜む彼の弱点が浮かび上ががってきて、それがとっても読みごたえがありました。源氏物語は本書以外にもたくさん読んでいるし本書も何度目かの再読なのに、最初に垣間見してから6年経ってたとか分かってなかったです・・・
    柏木の恋は結局は物欲なんですよね。権力欲から発展した恋だから恋が分からず、覚悟なく足を踏み入れたものだから恐怖におののくだけで対処法も分からず、結局自滅。
    哀れ。

    それとは別に私が注目していたのは、柏木の事件のことで源氏が思う因果応報について。
    もっと、桐壺帝と藤壺と自分の関係について深い考察があると思っていたのに意外にあっさりしてました。
    不義の子を得ることはこれまでに犯した自分の罪の報いであり、これを以て後世の罪が軽くなるかも、などど悟ったことを言うさすが源氏様。
    こちらは柏木と違って覚悟と開き直りがあるなと、ある意味感心しました。

    あとは、今上帝との対立について。
    今上帝は父である朱雀院が好きで、でも朱雀院は源氏が好きで、だから源氏が嫌い。
    それで帝は娘を奪ってやろうと明石の姫君にご執心。
    朱雀院は死ぬ死ぬ詐欺を繰り返し、源氏の関心を強要し、女三宮を押し付ける。
    唯我独尊、我が道を行く源氏が、いまや他人から振り回されっぱなしに成り下がる・・・
    そんな構図が面白く感じました。

  • 光源氏の物語も大詰め?
    光源氏も紫の上もやや若さを失い老境に差し掛かってきます。
    そして、そこに絡んでくるのは次世代?の若者たち。
    自分の兄に当たる朱雀院の娘、三の宮を自分の妻として降嫁させるものの、出家を望みながら源氏から許しを得られず失意の紫の上は重い病にかかる。看病のために六条の院を空けていると、かつてのライバル頭の中将(今は致仕太政大臣)の息子・右衛門の督(柏木)に三の宮を寝取られて、三の宮は柏木の子を産んでしまう、、、。
    こう書くと色恋沙汰の強い話ですが、恋愛というよりは、プライドと階級闘争の面も強い気がします。
    また、この展開は言わずもがなですが、若き日の自分の過ちを柏木が踏襲し、源氏自身が源氏の父・桐壺院の立場になってしまうという図式ですね。

  • 40の長寿祝いを迎える源氏が、出家した朱雀院から押しつけられた娘・女三の宮13歳。娘と二つしか違わないじゃないか、夕霧の相手だろう…とドン引きなのに、外堀を埋められ結婚。
    紫の上を差し置いての結婚なので、この「外堀を埋め」ということが延々語られる「雨夜の品定め」@朱雀院。

    院は源氏のことを好きなのに、源氏はつれない
    帝位にあっては優柔不断、退いては病を言い立て気を引こうとする、出家したくせに7年も8年も俗世に口出し…っていうか、女々しいくせに…そもそも男なんだもん、興味ないと。
    源氏、ハッキリしているから好き

  • 若菜 下
    柏木

    著者:橋本治(1948-、杉並区、作家)

  • 橋本治 窯変 源氏物語 若菜下〜柏木

    政治ドラマは薄れてきたが、人間ドラマ満載(愛あり、恐怖あり、裏切りあり)の若菜下は 傑作だと思う。

    源氏と藤原氏との関係性、父と娘の関係性など 著者の源氏物語観も かなり盛り込まれている

    源氏を 藤原氏と対立軸にしながら、源氏も 藤原氏と同様に 娘を高位の男に嫁がせて 出世している

    源氏の女性論と 女三宮の関係性
    *女性=母としての女性+娘としての女性→母=源氏を庇護する存在、娘=源氏に庇護される存在
    *源氏が選ぶ女性=父なるものを欠く

    源氏の母への愛
    *桐壺→藤壺の宮→紫の上に共通するのは 母への愛
    *母は源氏の一部→母の存在によって安らぐ
    *母への愛があって始めて 娘への愛が生まれる

    父なるものを欠く女性
    *空蝉の女、夕顔の女、六条御息所...すべて
    *女の父=男の敵→女三宮の父は朱雀院

    源氏と今上帝の対立
    *女三宮(今上帝の妹)→源氏(六条院)へ嫁ぐ
    *六条院=源氏に 傅く場所→源氏が 傅く場所ではない
    *今上帝、女三宮は 源氏が傅くことを 要求

  • 「若菜 下」「柏木」を収録。長かった若菜がようやく終わりました〜〜。超ボリュームでお腹いっぱい胸いっぱいな巻です。迫力あります。


    源氏、何様?!って感じですね。個人的には粘着乙な朱雀帝(院)が大好きだったりするので、いいぞいいぞ〜もっと源氏を追い詰めたれや!と応援してしまいました。女三の宮は明らかに朱雀院似なんでしょうねえ。柏木は哀れです。女三の宮もたしかに頭が弱いかもしれませんが、源氏が言うほどにダメな子とも思えません。朱雀院の五十のお祝いがどんどん日延べされてくのでハラハラしました。早く祝ってあげて!朱雀院は必殺技が死ぬ死ぬ詐欺ですよね…。源氏も相当ネチネチしてます。瀕死の柏木が「父(頭中将=致仕の大臣)に妻のことを頼むと平気で寝取りかねないし…」みたいに悩んでいたのに驚きました。頭中将…。苦悩する紫の上の出家も聞き入れてくれないし、源氏には「あんたはいいけどみんな地獄だよ!」と言ってやりたい気分でした。しかしとにかくおもしろいです。

  • 若菜下、柏木が収録されていました。
    読みごたえがすごくありました!個人的に源氏物語の一番の山場だと思います。

  • 若菜(下)・柏木

    こちらの若菜は恐いです。
    うむ、これを読んだ経験がなにかに活きてくるでしょう。
    (活きないほうがいいのか)
    ほんと源氏物語はすごい小説です。

    とはいえ、橋本治以外のも読んでみようと思って、
    寂聴の訳を少しだけ立ち読みしてみました。
    んで何がおもしろいのか。わからない。
    あと解説の部分が、うちには受け付けられないなぁ。なんか合わないのです。
    いろいろあるのでしょうけど、やっぱり源氏一人称という考えはすごいと思うのです。

  • 資料番号:011220183
    請求記号:F/ ハシモ/ 9
    資料区分:文庫・新書

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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