沖縄文化論: 忘れられた日本 (中公文庫 お 54-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122026209

感想・レビュー・書評

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  • NHK大河ドラマ「西郷どん」で、西郷が奄美で出会った女性・「とぅま」が手の甲に入れ墨をしていて、奄美・琉球のハジチという文化だと知った。
    なにか惹かれるものがあり、また沖縄出身の歌手・Coccoのファンだったこともあって、沖縄の本を読みたいなあと思っていたところ、面見せされていたので購入。
    一年以上積ん読していたところ、2022年は沖縄本土復帰50周年、読み時になりようやく読んだ。

    【目次】
    沖縄の肌ざわり、「何もないこと」の眩暈、八重山の悲歌、踊る島、神と木と石、ちゅらかさの伝統、結語、あとがき
    神々の島 久高島、本土復帰にあたって
    「一つの恋」の証言者として(岡本敏子)

    とても興味深かったです。
    私が読みたかった本でした。

    p70「この世界では物として残ることが永遠ではない。その日その日、その時その時を、平気で、そのまま生きている。風にたえ、飢にたえ、滅びるときは滅びるままに。生きつぎ生きながらえる、その生命の流れのようなものが永劫なのだ。」
    p173「沖縄の御嶽でつき動かされた感動はまったく異質だ。何度も言うように、なに一つ、もの、形としてこちらを圧してくるものはないのだ。清潔で、無条件である。」
    p199「人々は久しく、厳しい搾取と貧困にたえながら、明朗さをもちつづけた。こだわらない。だが投げやりではない。呆れるほど勤勉に、せっせと働く。根こそぎとられたら、また作りはじめる。とばされた屋根は、また適当に拾ってきてのっけておく、といった具合。また次の台風までもてばいいというような、こだわらない建て方である。そのようにして民衆は永遠を生きぬき、生きついできた。」

    上記は、滅びることを前提とするような、潔さの話だ。
    震災があった後、私は、なぜそのような土地にまた家を建てるのか疑問だった。
    でもあるとき、江ノ電からふと海をみて、「この土地がよいのだ、この海の、この景色がよいのだ。だからそこで生き続けたいのだ」と、理屈でなく感覚で、すとんとわかった。
    それに最近、テレビ番組「日曜日の初耳学」で、成田悠輔さんが、人間は「滅びゆく動物」だと言っていた。
    全然文脈は違うのだけれど、そういう考え方もあるのだなあと思ったところだった。
    とてもフラットな意見として心に刻まれた。

    p180「お風呂はただよごれを落し、身体をきれいに保つという実用的な意味だけでなく、多分に精神的で、マジナイ的要素がある。自分で気づかないで、毎日ミソギをやっているのだ。『ああ、いい気分だ。生きかえった』なんて、まさに再生の告白だ。」
    小さな島では、禊は消毒のようなものだという。
    清めの塩の由来を考えたこともなかったので、とても新鮮だった。
    時代に取り残されたかのように、非科学的に見えても、実は意味がある。
    私も翌日休みの場合、疲れていたりくさくさしていると、入浴せず寝てしまうことがある。
    「まず一っ風呂あびて、さっぱりしてくる」ようにしようかな。
    そういえば、エヴァのミサトさんも、お風呂は心の洗濯だって言ってたし。

    太陽の塔とか「芸術は爆発だ」はぜんぜん知らないけれど、とにかくこの本はすてきです。

    久高(くだか)島では、もう風葬は行われていないようです。

  • 岡本太郎が沖縄(八重山地域に関する話が多い)を訪れたときの旅行記と、日本文化に関する論考。
    西洋的な現代美術及びその影響を深く受けた現代日本の美術や芸術は貴族文化がベースとなっているけれど、沖縄の文化(歌や踊り)は生活や労働に根付いたものであり、それが実は日本古来の文化なのではないか、という趣旨の論を展開している。
    この考え方を敷衍して、沖縄が本土復帰するのではなく、本土が沖縄に復帰するべきなのだ、と主張している。
    以前読んだ大江健三郎の『沖縄ノート』もこのような主張をしていた気がするので、この時期にこのような主張が流行っていたのかなとも思う。

    岡本太郎の文章表現が非常に芸術的で、意図を読み取るのが難しい箇所も多くあったが、まだリゾート化する前の石垣島の様子も知れて、面白い本だった。

  • 「沖縄にこそ日本文化の純粋で強烈な原点がある」と、岡本太郎が確信に至るまでの沖縄との出会いと発見。日本の文化について考えるとき、避けては通れない一冊だと思います。

  • 太郎さんは沖縄の文化に惹かれていた様なので、読んでみたい。

  • 沖縄の肌ざわり
    「何もないこと」の眩暈
    八重山の悲歌
    踊る島
    神と木と石
    ちゅらかさの伝統
    結語
    神々の島久高島
    本土復帰にあたって

    著者:岡本太郎(1911-1996、川崎市高津区、芸術家)
    解説:岡本敏子(1926-2005、千葉県)

  • 沖縄で見たものを、どのように解釈してよいかわからず、この本を手に取りました。
    岡本太郎は、奇抜な芸術家のイメージですが、
    ソルボンヌで文化人類学を学んだため、文化論に関する著書が数多くあります。
    この沖縄文化論は、1959年、1966年、沖縄を訪れたときのことについて、書かれています。
    彼の見た沖縄は、今の沖縄とは、まったく異なる景色だと思いますが、沖縄の、そして人生のひとつの見方、考え方を教えてくれる一冊でした。

  • ・沖縄の古典舞踊は、べた褒め。日本舞踊や歌舞伎をお座敷芸の影響を濃く受けてゆがんで発達したと批判的。
    ・入浴文化論。日本人が大の入浴好きなのは、身体をきれいに保つという実用的な意味だけではなく、多分に精神的でマジナイ的。毎日ミソギをやっているのだ。というのは面白い。
    ・久高島の風葬。
    沖縄には日本の原始宗教、古神道に近い信仰が未だに生きている。のろは、その神秘的な女性の司祭、つまりシャーマンである。古い時代、沖縄では神と交わるのは女だけの資格であり、直接神事に関する一切は男はタブーだった。
    すぶのシロウトにも子供にだってグンと訴えかけてくるようなものでなくちゃ仕様がない。(136頁)
    身を守る最低の手段として、美しさ、みえなど考えてもいないのに、結果は偶然に美しいのだ。(65頁)
    文化とは何だろう。土地の風土によって、、根をはったものが本当だと考える。その土地を耕すことによって生成するもの。その土壌とは、民衆の生活以外にはない。、、やがて貴族や特権層によって、形式の洗練をほどこされ、余剰の富と力の象徴、虚飾的な美となる。いわゆる高度な文化を誇ることになるわけである。(203頁)
    ・ひめゆりの塔〜異様な記念塔が構えている。デカデカと相当の金をかけたものばかりだ。ああ、ここに代表された無神経日本。聞けば地方選を控えて、昨年後半あたりにぞくぞくと建ちだしたのだという。(225)

  • 琉球王国には漠然としたよい印象を持っていたが、人頭税の支払いの厳しさは本当に恐ろしい。古代国家、近代国家のどちらがよいのか答えは出せない。

  • [ 内容 ]
    苛酷な歴史の波に翻弄されながらも、現代のわれわれが見失った古代日本の息吹きを今日まで脈々と伝える沖縄の民俗。
    その根源に秘められた悲しく美しい島民の魂を、画家の眼と詩人の直感で見事に把えた、毎日出版文化賞受賞の名著。

    [ 目次 ]
    沖縄の肌ざわり
    「何もないこと」の眩暈
    八重山の悲歌
    踊る島
    神と木と石
    ちゅらかさの伝統
    結語
    神々の島久高島
    本土復帰にあたって

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 石垣島訪問中に読破した本。
    岡本太郎が沖縄返還前の1961年に執筆したもの。その後、1972年に「本土復帰にあたって」という章を書き足している。
     沖縄を訪れ、感じたことを筆者の思うままに記載している。最も共感したのは、以下の部分。
    p40「私はまるまる一週間、島内をかけずり廻った。見るべきところはほとんど案内してもらったのだが、結果は予期に反した。いわゆる「文化」というべきもの、発見としてグンとこちらにぶつかってくるものがないのである。」
    漠然と感じても、なかなか言葉にできない意識、感覚。本質を捉え、それをずばっと、相手に悪い感情を与えることなく言い切ってしまうところが素晴らしいと思う。

    また、1960年代初めに、本島での時間の感覚、目まぐるしさと、沖縄のそれとを比較しているところも印象的。時代を超えて、共感できる部分が多い。

    岡本太郎が今の沖縄を訪れたらどのような感想を抱くのか、大変興味がある。

    沖縄訪問を重ねる度に、この本の良さがじわじわと分かってくる。何度でも読み返したい一冊。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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