日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122026643

感想・レビュー・書評

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  • ドナルド・キーン氏の本を何冊か読み進める中で本書に出会いました。対談形式と言うこともあって、あっという間に読めます。日本文化をいくつかのテーマで扱っていて、司馬遼太郎氏がメインで議論をリードするときもあれば、キーン氏がメインで議論を進める場面もあります。常に同じ意見を持っているわけでもなく、例えば儒教が日本人に及ぼした影響については、司馬氏は小さいと結論づけている反面、キーン氏は極めて大きいと主張するなど、意見が対立してそれはそれで第三者の読者としては面白いです。

    日本史および日本文学の知識が乏しい私でも、議論の論点とその展開は読んでいて興味深かったので、同じような読者の方々も心配いらないでしょう。例えば、色々な日本文学を男性的(=ますらおぶり)、女性的(=たおやめぶり)に分類した上で、実は日本人(日本語)は本質的に「たおやめぶり」ではないか、という論理展開や、豊臣秀吉や足利義満の時代のように日本が世界に開かれていた時は日本は「金の世界」で、足利義政や徳川幕府時代のようにどちらかというと閉ざしている時は日本が「銀の世界」になる、というような話は大変興味深かったです。むしろ本書は日本文学や日本史、宗教などの専門家が読むとかなり大胆な論説が書かれていてびっくりするのかもしれませんが、私はお二人の歯に衣着せぬトーンがとても気に入りました(私は○○が嫌いだ、というようなこともたくさん書いてある)。

  • 日本が異国の技術を柔軟に取り入れることができた背景事情(134頁 西洋技術と東洋道徳)な儒教の影響度について、異なる考察が展開されていて興味深い。日本史を勉強し直してからもう一度読み直したい。

  • 日本人や文化について、大変多くの発見がある。

  • 司馬遼太郎とキーンさんの対談とあって、面白くないはずがないと読んだが、予想通り、否予想以上に面白い知識と思慮とウィットに富んだものだった。
    なにより嬉しいのは、最後に人名索引と年表があること。キーンさんの対談らしい。

  • 日本文化への造詣が深い、スーパースターのようなお二人の対談がこの値で読めるというのは、夢のようなことです。
    読んでみて、やはり知識量がすごいなと。和やかな雰囲気の会話の中で、ぽんぽんと気持ちいいくらいに出てくる新しい知識に圧倒されます。
    自分の無知に改めて気づかされるし、知識もある上に自分の意見も持てることって、いかに素敵なことなのか思い知らされます。

    キーンさんのあとがきにあったように、汽車の中で偶然出会ったおしゃべり好きの二人がする対談を、そばで立ち聞きするような感覚で読むと、ほどよい息抜きになって楽しいです。

  • めっちゃ面白かった♪

    ドナルド・キーンが日本に帰化した時、
    ドナルド・キーン月間を作って読みまくろう♪と思っていたのが
    叶っていなかったので、今回ミルキーウェイちゃんから借りた本の中に入ってて楽しんだ〜。
    私、この手の話題、やっぱ好きだなぁ

  • 金の世界・銀の世界の対比に関する章が非常に面白い。特に
    <blockquote>時代が復活したのは足利義満の時代と同じように、世界に窓を開けていた。気分が金だったのではないか。世界に対して窓を閉ざすと、日本的なものが生まれ、銀が復活する。(正式な引用ではない)</blockquote>部分が個人的には歴史を好きになったひとつに挙げられるのではないかと思う。

    これからの日本を生きていくために、自分のなかで何を大事にしていくのかということを見つめ直すきっかけになる一冊。

  • 奈良の平城京あと、京都の銀閣寺、大阪の適塾にて三度にわたって行われた司馬遼太郎とドナルドキーンによる対談を纏めた一書。
    冒頭から「ますらをぶり」と「たおやめぶり」、日本人の本質的な気質に関する内容から入り、足利義教による日本文化、幕末と明治など日本の歴史の細部が美しく鮮やかに浮き彫りになっている。非常に濃い内容だが、二人の相性も素晴らしく隙間のない対談なので基礎知識だけの読者でも十分に楽しめる。

    ◆日本の文学は歴史的に「たおやめぶり」。一番初めの傑作は紀貫之による土佐日記、万葉集は「ますらをぶり」、次の古今集は「たおやめぶり」、その後にわかに男性的が現れるのは芭蕉の俳句、芭蕉に並ぶ俳人である西行は「たおやめぶり」が僅かにまさっている。芭蕉のますらをぶりには杜甫の様子に重なる。日本で中国の俳人と云えば白楽天。明治以降も一時期は尾崎紅葉を初めとする女性的な文が流行るが、伊東博文による憲法発布による先制攻撃で自由民権運動は頓挫し、文学も伝統派に回帰していく。

    ◆オランダは比較的安価な日本の金が目当てであった。銀を持っていけば金を同量近く手に入れることができる。日本の銅の中には金が含まれていた為に銅も目的とした。当時の日本に銅から金を取り出す精錬方法は無かった。

    ◆シーボルトは実はオランダ人ではなく、ドイツ人。幕末に日本に訪れたアーネストサトーは中央集権国家の必要性を説き明治維新の根本思想に影響を与えていた。はじめて将軍を皇帝ではないと考えたのはサトー。横浜で発行されていた「ジャパンタイムズ」に日本の将来についての具体的なヴィジョンを寄稿。「英国策論」として広まり、西郷隆盛に影響を与え明治維新の原型となる。

    ◆フェノロサ、チェンバレン、サンソムなど外国人は日本が大好きで日本に尽くしたが、お役御免となると追い出され最後まで日本人にはなれなかった。源氏物語の訳者であるアーサーウェーリーは「現在の日本に興味はありません、現在の日本を見るよりも、まだ日本の古い本を見たほうがいいです」と語り一生日本を訪れることはなかった。
    反対にアメリカはアメリカに尽くした外国人は等しくアメリカ人になることができた。
    チェンバレンは東京大学の言語学の伝統(日本語の語源は北方にあり)を作り上げた。サンソムはチェンバレンを尊敬し北海道での領事館にて徒然草の翻訳を完成させるなど、日本文学の形成を行った。

  • かなりおもしろい! オススメ。

  • おしゃべりで解き明かす日本文化。
    教壇の上から押しつけられるものじゃなくて、
    盗み聞きしたい話。
    日本史を勉強しなくても、わかる面白い本。
    でも、知っていたら、もっと面白い本。

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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