- Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122027237
感想・レビュー・書評
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今から140年前の1870年4月17日(明治3年3月17日)に八王子市に生まれた江戸文化・風俗研究家。
1952年に82歳で亡くなるまで、ほとんど在野にあって心血を注がれた彼の膨大な、後に江戸学の祖と呼ばれるに到る研究は、論文でもなく出典を明らかにしない場合も多く、本質的な意味で学問とはいえないかもしれませんが、官学の依拠する第一級史料以外の様々な史料にあたった実証的なもので、現代では時代考証の基本とまで言われる評価を得ているものです。
でも一般的には、今ではよほどの好事家かご隠居さん位にしか見向きもされなくなったかもしれませんが、私たちの高校時代の落研(オチケン・落語研究会の略称)の先輩に言わせると、三田村鳶魚は必修科目であり、落語の中に出てくる石ころ一つにも江戸時代の息吹が感じられなければ本物とは言えない、などとのご高説を、よせばいいのに、右から左に聞き流せばいいものを、根が正直で誠実で一途なものですから、まともに、はいそうですか、と素直に聞いて、ちょうどその頃に揃いはじめた中公文庫版の『鳶魚江戸文庫』全36巻・別巻2巻をつっかえながらも、せっせと読み進めていったのでありました。
その他、三味線に太鼓に小唄に端唄、日本舞踊に茶道に華道、それに寄席文字を書く練習、いったいぜんたい本物の落語家修業でもこんなに厳しくないだろうと思うほど、肝心の落語を覚え演じる以外にあまりにも多くのことが付録でついてきました。
もしそのまま本職になっていれば、今頃はさぞかし・・・・。
その先輩は、今や人間国宝の桂米朝師匠をこよなく愛する、とりわけその学究肌に惚れ込んでいるという人でしたから無理もありませんが、プロ級の修業を強いられる私たちはたまったものではありませんでしたが、何故か嫌でやめる人はひとりもいませんでした。
私もそうです。大変だけれど、苦労が絶えないけれど、これがすべて面白くてしかたがなく、実際に落語をやるときに生きてくる、その成果を目の当たりにして興奮したものです。
たかだか高校生の落語が、実際の二つ目・真打と同じくらい、いやそれ以上に味があって面白くできるということを証明したことは歴史的事件でした。
本書は、そういう意味では内容の古臭さやむずかしさとか、現代ではとっつきにくさが前に立ちはだかりますが、私にとってはほろ苦い青春の書といっていいものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸時代と言っても女性の社会的立ち位置ってのはあまり変わらないように読める.また,女性差別,抑圧史観の強いアンチテーゼとしても.