女帝の手記 4: 孝謙・称徳天皇物語 (中公文庫 コミック版 さ 1-15)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122030800

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  • 一般的に、孝謙天皇は愛に惑い歴史的スキャンダルを起こした女性として、道鏡は天皇に取り入って権力を欲しいままにした人物として語られている。

    しかしながらこの作品は、銅鏡を無垢で素直な人物として描き、孝謙天皇を藤原の血筋と天皇の血筋の狭間で生きた女性として描くことで、スキャンダルの背景にあったかもしれない一つの可能性を投げかけている。

    女として生まれたことや母親へのコンプレックス、仲麻呂に恋心を利用されたことの哀しみと怒り、銅鏡を引き立てたもののそれは愛するものを利用する行為であったのではないかと気づき、純粋な愛を希求する姿。
    孝謙天皇の心情の移り変わりは女性の心理を敏感にとらえていて、時折切なさも感じた。

  • ヒロインが男に惑わされてふらふら生きているような気がしてならないが。女を捨てて男のように生きるエリザベス女王みたいなのよりは、こっちのほうが好感もてるかも。

    後書きを読むに、女帝と道鏡の恋を積極的に解釈したかったとあり、まま納得。「藤原の女」と「天皇家の跡取り」との、二つの立場でもがき、あがき、それでも自立しようとした生き様はよく表現できていたと思う。

    けっきょく立場の呪縛から逃れるために、仲麻呂の望む願いを他の男で叶えてやろうとしてしまうあたり、業の深さを感じざるをえない。あまりに天皇家のスキャンダルが酷いので、右翼や皇室フリークが読むと怒り出すんだろうな。

  • 内容もさることながら、「なるほど、こういう視点で書いているのか」と、最後の作者のあとがきが面白い。

  • 阿倍ちゃんが再び天皇になって、道鏡さんといろいろあって亡くなるまでのお話だったけど…。
    最後まで彼女はおバカな女として描かれてたなぁ…。
    道鏡さんは藤原仲麻呂さんと別れるためのきっかけみたいな感じ。
    彼女が藤原の血を受け継ぎつつ、天皇家の女としての意識も持っていた二面性の悲劇は感じなくはないけど、ちょっとおバカな女過ぎる描き方でした。
    かなり残念なお話かも。

  • 「アトンの娘」に比べて、やっぱり「天上の虹」をすごい集中力で描かれていた流れの日本古代史モノはわりといい。

    結局、
    強く美しく賢い母→親に望まれない平凡な私→男の愛で自我に目覚める→自分なりの自立。
    この流れはまっっったく同じだけど、鼻がでかく、せりふが説明調になる前だから、それなりに楽しめた。
    特に、光明皇后がなくなるときの阿倍のせりふはちょっとぞくぞくした。
    最近こういう人物の内面世界を描かなくなったよね…

    この世代の人にとって、母も自分(娘)も良妻賢母であるべきプレッシャーも、そしてそれでも「女だてらに」働いてご飯を食べることを人生とすることの覚悟も、今とは比較にならないくらい強くあったんだと思う。
    それはよくわかるけど、やっぱり今となっては隔絶を感じるかな。

  • ”天上の虹”を読んでいる以上は後日談になる”長屋王残照記”とこの”女帝の日記”の2作品はいずれは読みたいと思っていた。
    先日のNHKドラマ”大仏開眼”をチェックした勢いで。

    確かに所謂”道鏡伝説”には当時・後世のかなりの脚色があるのだろう。
    とは言え、「素直・正直すぎる僧・道鏡と純真一途な?女帝」の設定もさすがに無理あるよなあ^^;
    まあ、物語としては面白く読めます。
    ”長屋王残照記”は、ちと辛いのでまたの機会にでも。

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著者プロフィール

マンガ家。第1回東アジアMANGAサミット事務局長。1948年大阪府生まれ。16歳のとき「ピアの肖像」で第1回講談社新人漫画賞受賞をし、プロのマンガ家生活に入る。その後数々のヒット作を生み出し現在に至る。主な作品に「アリエスの乙女たち」「あすなろ坂」「鶴亀ワルツ」他多数。「あした輝く」「姫が行く!」で1974年講談社出版文化賞受賞。「狩人の星座」で1982年講談社漫画賞を受賞。マンガジャパン事務局長。(社)日本漫画家協会常務理事。大阪芸術大学芸術学部文芸科教授。文化庁文化審議会著作権分科会委員などを歴任。

「2005年 『アジアMANGAサミット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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