使いみちのない風景 (中公文庫 む 4-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122032101

感想・レビュー・書評

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  • 春樹さんによる3本の短かなエッセイと、稲越功一さんの多くの写真からなる。
    上下左右にゆとりのある版面で、旅先にもっていって、旅程の合間に一文ごと味わいながら読むにはうってつけだった。

    私ももともと旅行は好きじゃない。行ってみたいところはたくさんある。
    でも家族みんながよろこぶスケジュールを組むのがめんどくさいし、当日も慌ただしいし、帰宅してからの山のような荷物の整理を思うと、それだけでどっと疲れる。
    でもこうして実際出かけてしまえば心に留まる風景はあるわけで、それは使いみちがなくとも、結局そこでしかみられない風景なのだ。
    楽しかったねーと後々おしゃべりにあがるタイプの思い出とは少しちがう。
    また億劫になりかけたら、何度だって旅行鞄にしのばせて連れていこう。そんなお守りみたいな一冊。
    〝旅好きの猫〟にとてつもなく惹かれる。

  • 3つのエッセイに写真家稲越さんの作品が添えられていて、気楽に読める内容でした。
    筆者は、今までに多くの地で生活をしてきましたが、それを「旅行」ではなく「住み移り」と表現しています。住み移りで目にした様々な風景の記憶は、筆者にとって財産であるし、筆者の中にクロノロジカルに収められているそうです。一方、旅行の過程で目にした束の間の通り過ぎていく風景の記憶は、非整合的であり、筋道や一貫性を欠いており、何かしらミステリアスな要素があるそうです。その、何も始まらない、どこにも結びついていない、何も語りかけない、ただの風景の断片を、筆者は「使い道のない風景」と名付けています。しかし、どれほど使い道がなかったとしても、それらの風景を私たちは必要としているし、それらの風景は私たちを根本的にひきつけることになる、そうしたそこでしか見ることのできない風景を求めて人は旅に出るのだと、筆者は述べています。

    今回、24年前に初めて読んだ本を再読しました。これを読んだ約半年後、私は会社を退職し、海外ボランティアに参加しています。その移り住みで得た記憶は確かに私の財産であり、しかし、使い道のない風景を求めて行動した日々も、私の宝物になっていると感じます。

  • 普段自分は本を読まない。
    たまたま読んでいる人がいてタイトルに惹かれて手にした。
    村上春樹の名前は知っていたけど、作品を読むのは今回が初めてだ。
    使い道のない風景を自分に当てはめてみると、ほとんど思いつかない。もっと潜在的にふと思い出すものなのかもしれない。
    記憶に残っている風景から何かを得るというのがとても新鮮な考え方だった。自分もこれからは生活していく上でみんなが見るものではなく、自分だけが見ているものに注目していきたい。そして、2度と戻ってこないその時を記憶に刻みたい。


    じんわりいい。

  • 最初から最後までしみいる文章。
    目に浮かぶ風景。
    素敵な写真。

    「僕は思うのだけれど、人生においてもっとも素晴らしいものは、過ぎ去って、もう二度と戻ってくることのないものなのだから。」

    私にとってのいくつかの「使いみちのない風景」を思い出してみる。
    気持ちが動いてすっきり。

  • うーん、めちゃくちゃに良い 次の旅には絶対持って行く

  • 旅関連の、エッセイと写真の割合が半々くらいのエッセイ集。村上さんの小説は勿論、エッセイも大好き。大したことのないことから話がめちゃ広げられるのも天才だし、発想も面白い。癒された。
    写真の雰囲気も好みで、文章とは殆ど関連性はないけど、読み心地を良くする役割はちゃんとあったと思う。

  • 旅行好きの猫かわいい

  • わかるわかるわかる。
    自分の中にあった、感じていたことをうまく引き出して言語化してくれたという快感で満たされた。
    制作をするにあたって、使い道のわからないひと場面の記憶、娯楽の一瞬、何気ない会話からひらめく思い、意味がないようで全く違う場面で意味を持つ。

    使い道のない風景をいかに増やして行くかがわたしの生活の中で大切にしていることなのかもしれない。

  • 使いみちのない風景
    (和書)2012年08月23日 15:46
    1998 中央公論社 村上 春樹, 稲越 功一


    旅行好きではなく引越好きであるということ。

    旅行好きな猫を飼うと言うこと。

    以上です。

  • 村上春樹 エッセイ集『使いみちのない風景』
    「旅行」というものと「住み移り」というものの違いについて考察し、旅行というものの本質的な点について、稲越功一氏の写真と共に語っている。
    気に入った文、最後の一文、「僕は思うのだけれど、人生においてもっとも素晴らしいものは、過ぎ去って、もう二度と戻ってくることのないものなのだから」。

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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