潤一郎ラビリンス (6) (中公文庫 た 30-34)

著者 :
制作 : 千葉 俊二 
  • 中央公論新社
3.37
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本棚登録 : 74
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122032705

作品紹介・あらすじ

痛切な芸術上の欲求を"西洋"そのものに求め、激しい西洋崇拝を表す「独探」、漢詩文に詠まれて以来、遊子の心になじみ深い山紫水明の地西湖を舞台にした「西湖の月」ほか、「玄弉三蔵」「ハッサン・カンの妖術」「秦淮の夜」「天鵞絨の夢」を収める異国綺談集。

感想・レビュー・書評

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  •  「玄弉三蔵」、「ハッサン・カンの妖術」のみ取り急ぎ。
     「ハッサン・カンの妖術」に出てくるミスラ氏は芥川龍之介の「魔術」にも出てくる人物。こちらのミスラ氏は妖術をあまり使いたくない、もっと科学的に生きたいと思っている印象が強かった。
     「玄弉三蔵」は空気感が伝わってくる感じで、リアリティがあった。信仰の皮肉も少し。

  • 独探…
    うさんくさい外国人の感じが面白い。電車や劇場でナンパする外国人、怪しいロシア人キャバクラ、などほんとしょうもない出来事の中に人間の真髄がチラ見えする谷崎節。

    玄奘三蔵…
    インドに行ったこともない作家がなぜこんなに豊かに情景が立ち上がる物語が描けるのか。異邦人の三蔵がインドで出会う、自分の宗教とは相入れない信仰をもつ者たち。

    ハッサンカンの妖術…
    まさかこんな終わり方とは。母を失った悲しみはすぐには感情の表面には出て来ず、妖術をもって初めて実感されるに至ったということか。

    西湖の月…
    湖に浮かぶ屍体。屍体なのに幻想的で美しい、この情景を谷崎は描きたかったのでは。

    天鵞絨の夢…
    幻想的で美しい物語。温さん夫婦の異常な変態的生活。

  • 『独探』は「東洋の貴族なんかより、西洋の乞食の方が全然マシだもん」みたいなくだりが有名ですが、作風は、キレッキレの『細雪』とかと違ってオフビートです。居酒屋で「オジさん、変わった外人の友達おるんねん」話を話半分で適当に合槌うちながら聞いているノリ。ロシア人のやっているいかがわしいバーでいかがわしいサービスを受けて1人ノリノリになってるとことか、ほんとしょうもなくて笑えます。
    この本はそもそも『ハッサンカン』を読みたくて買いましたが、入れ子の中身の『玄奘三蔵』もいっしょに入ってて良いです。ハッサンカンのミスラ氏は芥川の『魔術師』のミスラ君と同一人物ですが、こちらのミスラ氏は得体の知れない不気味な存在です。
    他中国ものが2作品、ラストは一応中国ものの『天鵞絨の夢』。ヨーロッパ、インド、中国と順に巡って鏡の迷宮に辿り着くという風に本全体がまとまってます。

  • 授業「近代特論」のテキストとしてもつかわれる本です!
    (「た」さんのおすすめ本。授業で役立つ本。)

    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00601774

  • 潤一郎氏も中国やヨーロッパなど異国に憧れていた時期もあったんだな。

  • 『ハッサン・カンの妖術』の、須弥山の描写。『天鵞絨の夢』の水面下の部屋、塔から見おろした池の描写。鏡の部屋の描写。とにかく圧倒された。
    本作を読んで、谷崎潤一郎の小説がしばしば映画化される理由が実感された。ものすごく映画化の欲望をそそる。
    読みながら、私などは『天鵞絨の夢』を映画化したくてたまらなくなった。

  • 野崎歓氏の著作から関心を持った「独探」「ハッサン・カンの妖術」「玄奘三蔵」を読む。
    スパイのオーストリア人、須弥山に行ける魔術使いのインド人、それぞれの親近感が暖かい。

  • 大正時代の、つまり初期の、バリバリのモダニスト風だった谷崎潤一郎の短編小説を集めた、この中公文庫の「ラビリンス」シリーズ、久々に読んだ。このシリーズにはあまり面白くないものもあったが、中にはすごく印象のふかい、当時の日本文学をはるかに超えたような傑作もあって、探索が楽しめる。
    6巻は谷崎の若い異国趣味をテーマにしたもの。
    冒頭の「独探」に出てくる外国人が、妙に飄々としてあざとく、インチキくさい感じなのだが、こういう人いるよなあ、というリアリティを感じた。
    ところで谷崎の「西洋崇拝」は、あの独特のマゾヒズムにもたぶん関連しているのだろう。谷崎的心理は理解できなくもないし、不思議とエロティックな文体と相まって心を震撼させる魅力を持つ。
    今回の作品集では、まだ文体の妙はじゅうぶん開花していない気がするが、インドの宗教の神秘性を「あらぬ方向からの視線で」描いているような「玄奘三蔵」「ハサン・カンの妖術」が面白かった。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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