中空構造日本の深層 (中公文庫)

  • 400人登録
  • 3.84評価
    • (23)
    • (34)
    • (36)
    • (1)
    • (0)
  • 32レビュー
著者 : 河合隼雄
  • 中央公論社 (1999年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033320

中空構造日本の深層 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 主旨としては前半1/3ほどに凝縮されている。

    中空構造とは、文字通り「中心」が空っぽということである。
    つまり、絶対的中心の存在があり、その周辺に一般大衆が存在するという西洋的構図ではなく、AとBがあり、それらのカウンターバランスによって社会がバランスしているということだ。
    これを神話や昔話を例に挙げ、実に明快に説いている。

    日本人と西洋人が根っこの深いところでは決して共感できない部分があるのは、このためなのだろう。
    もっと突き詰めて言えば、島国と大陸との溝は、ここにあると思う。
    父性原理に基づく西洋思想(大陸思想)と母性原理に基づく日本思想(島国思想)。

    それらをわかった上で生きるのと、分からずに生きるのとでは、雲泥の差。

  • 中空均衡構造という、ある時点のみを記述することが不可能な、量子力学的二重性をもつシステム。著者の河合隼雄氏は、人類の生み出した最も根源的な秩序の一つである神話という古層の内部観測によって、時代を先取りしていた。それは、建築家レム・コールハースの「ヴォイドの戦略」や、ブロックチェーン技術から発展した自律分散型組織(Decentralised Autonomous Organisation)を連想させる。このシステムは、中空の不可侵性によって、脱構築による持続的な発展および秩序形成を同時に追究するものである。これは、哲学者カール・ポパーの批判的合理主義的見識を補完するものでもあるだろう。

    中空均衡構造は、弁証法における「正・反・合」の一点を絶対化する運営法ではなく、中空不可侵の前提のもとに、各選択肢の展延可能性を残存させておき、構成素の相互浸透によって、観測される全体が常にメタモルフォーゼしているオートポイエティックな形態である。近年においては、この形態は、暗号通貨技術における「ソフトフォーク」と呼ばれる仕様変更方法に似ているように思われる。著者は、ツクヨミをはじめとする日本神話における無為の神々や、実権を持たない権威としての天皇制を類似例として挙げている。

    一見、様々な利点をもつように思われる中空均衡構造だが、著者はその脆弱性も指摘している。それは、中空の侵入者によって、周辺部が迅速に支配されて結果的に壊滅してしまう現象である。その侵入者は、たとえば、ヒトラーのような人物を表皮として、その内部は低劣な父性という観念であるなどとする。これを予防するためには、周辺部が個人としての意識化を努力しなければならないと著者は指摘する。

    これについて、私は、かつてミシェル・フーコーの提示した「パレーシア」を想起した。自由な言論を中心の空は侵害せず保全する。これはハンナ・アレントの著書「人間の条件」にみられる思想にも通ずる。実践的には、中心の空は、臨機応変にモード変更可能な、やや主観性を帯びた促進者として躍動しうるだろう。このモード変更の意義や方法論について、西洋諸会は吟味しているところであるが、日本国はまずそれ以前の問題として、個人としての意識化を努力しなければならないのだろう。それはたとえば職務の効率的分業やアンバンドリングにおける権限委譲やセグリゲーションなどをはじめとして、改善余地は各所にみられる。

  • ユングの概要を読んで、日本人のメンタルについて知ってみたいなと思いこれを読んでみました。

    すごい。私が生まれる前に書かれたものなのに、未だ色鮮やかにリーダブルな内容でした。

    ビギナー用のユングの本を読んでからのこの本なんですが、
    わたし、村上春樹さんが好きで、でも彼の言う「地下二階」が、よくわからんのです。すごく危険なところで、そこに深く潜っていくと、「人」の奥深くで繋がる何かに出会える。(ようなもの)だという勝手な認識なんですが、深いところで人とつながることのできる何かって、すごく素敵だなぁと思う。でも、私には、そこの奥深くに潜っていく手立てというか、手段というか、そのようなものがよくわからんのです。

    その一つの解決の糸口になりそうなのが、個人的にユングなんじゃないかと。そしてそこから、日本人のメンタリティと神話についてを深めていったら、私にも垣間見ることができるんじゃないかと思い、この本を手に取った次第。

    一気に読んでしまったので、すごく自分の欲していた内容が書いてあったんだけど、まだ言語化できるほど読み込めていないので、もう一度読み解いていきたいと思う。

  • ・人生とは全体性の回復である
     -日本人は意識と無意識の境界があいまい。意識の中心である自我がうすい。それが神話にもでている?

  • 中空構造日本の深層

    筆者は有名な精神分析家の河合隼雄氏であり、近代以前の人々が、世界を認識する際に神話的な解釈をしてきたことを伝えることで、科学的解釈に偏りを持つ近代社会に、一つの世界観を与える上で、神話的解釈の知を言うものを提示している。社会は近代化したとはいえ、人間の精神が変わったわけではない、そのため、今までの神話的知を科学的知のバランスを保つことが重要である。
    日本の神話を読み解いていくと、「中空」の存在が発見される。何かを中心においてと思いきや、すぐにその対抗物が置かれ、それらのバランスをとることで、中心の空性を守ってきた性質がある。精神分析にとどまらず、男性的なものは何かを切る、女性的なものは包み込むという性質がある。丸山の日本の思想にも書かれているが、日本という辺境地域においいては、常に外来文化を取り入れているように見えて、結局のところそれは中止まで行くことはなく、中心の外縁で日本化されたものになっていく。男性原理か女性原理かでいえば、日本は女性原理の強い国である。これは古来のもので、昨今の日本で父権復興を掲げ、若者を鍛えなおそうという運動があるが、筆者は日本にはそもそも復権する父権そのものもがないという。戦前の父の強さは、家長制の中での役割的な強さであり、戦後に家長制がなくなることで、父の権力の脆弱性があらわになったと解釈することが可能である。
    後半は、昔話の深層を良い説くもので、とても面白い。茂木健一郎の本にも書いてあったが、人間の脳は、確実なものと不確実なもののバランスをとるという。前近代の人間は、関あという不確実なものの割合が増えすぎないように、「物語」を確実なものとして採用していた。近代では、それが科学に変わったに過ぎない。そして、今でも、科学でもわからない不確実なことに対しては、やはり物語が採用されるのである。

  • 去年Eテレで放送してた『100分de日本人論』で紹介されてて、うわあすごい面白そう!と思って、ようやく読み終わったのが、今。
    すごい面白かったー!
    今まで読んだ日本人論の中で、いちばん腑に落ちたかもしらん。
    なんかこう、しっくりきてなかったとこがぴったり!すっきり!ッて感じ。

    三部構成になっていて、上記の日本人論的内容は第一部。二部三部はいかにも心理学的な話で、私はすごく興味深く読めた。読みやすかった。
    中学とか高校のときに心理学に興味を持ったのにフロイトで挫折して結局全然関係ない分野を専攻したけど、まず河合隼雄から入っとくべきだったね。
    何冊か氏の本を読んでみようと思います。

  •  アマテラス、スサノオに対するツクヨミ、三柱の神のおけるアメノミナカヌシ、さらにそこから生まれたタカミムスヒ、ツハヤムスヒ、カミムスヒなどにおいて中心の神が日本神話において出現してからほとんど記述されないことから日本人の心性においての中空構造を著者は指摘する。
     自分も古事記を読んで最初の三貴神が出現してからすぐに姿を隠すところがかなり謎でありつつそういう構造に結構感心していたのだが、言語化されるとなるほどそういう考えもあるのかと目から鱗だった。日本人の特性としての曼荼羅状の球構造を提示するとこなんてかなりおもしろいんだけど、しかし教育問題や、漫画について言及するとこはちょっとあまりにも図式化されていて正しいことを言っていてその実何も言ってないような感をうけたので残念。

  • 151201『古事記』に見える中空構造
    必ずしも善・悪(キリスト教的な神VSサタン)の構造で規定しない一方で「悪」でも次の段では英雄として描かれる。カウンターバランスが図られるのが特徴である。西洋的な相反するものが止揚し「合」を成すのではなく、中空を保ち、ふわふわと巧妙なバランスを保つ。※神道には、普通の宗教にあるはずのものがない、すなわち「開祖も宗祖も教義も救済もない」by島田裕巳

  • 日本人というものについて、それは一体どういったものなのだろうかという疑問に対して、一つの答えをいただけたように思いました。日本人については、はっきりしないとか、しっかりしないとかいったような批判を聞くことがありますが、その深層と、実はそこに日本人の強さがあったりすること、それに気づかずに強さを勘違いして失敗してしまうこと。そういったことに答えが示されています。日本人内では、男女の考え方の違いについても書かれており、なるほどと思わされました。
    これが私が生まれる前に書かれたものとは思えないくらいに、現在にも通じる新鮮さがあり、だからこそ「深層」なのだと分かりました。

  • フロイトとユング、あるいは
    リゾームとツリーを構造的に繋ぐものとして
    直観的ながら、ここでは「中空」というものが提示されており
    それはたとえば、日本神話に登場するツクヨミであるとか
    ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」において
    主人公を異世界へといざなったウサギ穴などに見られる
    ひとつのいわゆる「元型」イメージなんだ
    グローバル世界における価値観・世界観の激変にさらされたとき
    「中空」を思い出すことで精神をニュートラルに保つことは可能だろう
    しかしまあ、ツクヨミやウサギ穴がそうであるように
    「中空」は見失われがちなものである
    この本も最後のほうはそんな感じで、リゾームに取り込まれてしまう

    かといって、あくまで「中空」に固着するものの末路は
    統合失調の世界にほかなるまい
    あまり深刻にとらえるべきものではないよ

  • 寄贈本を読んでみた。やはり彼の本はとても分かりやすく、スルスル読める。難しい事を分かりやすく伝えられる人は心から尊敬する。

  • 児童文学から深層を読み解く、読みやすくそれでいて深い。今の私たちって、ファンタジーを閉じ込め過ぎて病んで困ってるんだなぁと。なんとなく納得な一冊。

  • ツクヨミ神への思い

    母性の国、日本。

    中空構造であるがゆえの良さ、そして課題。

  • 日本人を説明した本として、今までで一番わかりやすい本でした

    新潮文庫の こころの〜シリーズや対談シリーズも面白いのですが、私の河合隼雄さん一番本は 今のところ この本です

  • 神話や民話、ファンタジー作品、親子関係、宗教、父性・母性の対比などから、日本人の心の深層を解明しようとするもの。タイトルにあるように、日本人が好む「中空構造」についての解説はとても納得感がある。この本では生き方についての解説が中心であるが、ビジネスでも適用できると思う。欧米の統合型に対し、日本・アジアは調整型。物語でも、欧米のものは結婚や魔物退治がゴールであるが、日本のものは曖昧なものが少なくなく、「再生」や「再配置」が多く、絶対的な勝利はない。このテーマはもう少し深めたいぞと。

  • 古事記などの日本の神話から、対立するニ柱と中心に位置する無為の中心を読み解く。この中空構造こそが日本の文化構造を規定しているものであると著者は言う。
    かなり古くに書かれた本だが、現在においてもこの主張は強い説得力を持つ。本編以外の昔話の評論や他国との比較文化論?も秀逸。

  • なんかバラバラな構成だなと思ったら通して書いたものじゃないのか…
    中空構造と近親相姦あたりはおもしろかったけど、昔話の深層は河合隼雄の本をいくつか読んでればお馴染みというかんじで新しい発見はありませんでした。

  • 読み進め中。河合隼雄はもう基礎知識の域だな、と感じる。これまで読んできた本の焼き直しのような気がするが、実はこっちが原点なんだろな。

  • 絶対的存在を中心と据えない構造、それが日本人独自の深層心理。神話や昔話を例に解説。意識と無意識の境界が鮮明でないことが、西洋人から見ると日本人独特の主体性の無さと捉えられると指摘。「浦島太郎は竜宮城の竜といつになったら戦うのか」と意見する西洋人の子供に驚愕。

  • 真ん中には無為、これが日本。ということが書いてあるのだけれど、面白い。自分の関心事にも刺激になっていろいろとアイディアが生まれました。

  • 2015年2月1日読了。

  • 日本人の心の深層に迫る論考や、ユング心理学に基づいて神話や昔話、ファンタジー作品を分析した論考を収録しています。

    著者は前著『母性社会日本の病理』(中央公論社/講談社プラスアルファ文庫)の中で、日本が心理的には母性優位の国であり、父性優位の欧米と対照的だと主張していました。これに対して本書では、むしろ日本の心理は母性と父性のバランスの上に立っていることが重点的に論じられます。

  • 自分では気づいていなかった、自分の考え方や心のはたらきの基盤がどこから来ているのかが一部理解できた。良書。
    日本神話の中心は、空であり無である。何かの原理が中心を占めるということはなく、それは中空のまわりを巡回している。筆者はそれを「中空構造」と呼ぶ。日本神話の論理は統合の論理ではなく、均衡の論理である。絶対的な原理はなく、正邪や善悪の判断も含め、すべてが相対化される。
    中空構造が対立物の微妙なバランスの上に成立しているためもあって、日本人はすべてのことを言語的に明確にすることを嫌う傾向をもつ。すべてをどこかで曖昧にし、非言語的了解によって全体がまとまってゆく。
    日本人が持つその心理は、母性原理が優位であると言える。母性原理とは、端的に言えば、すべてのものを平等に包含することで、そこでは個性ということを犠牲にしても、全体の平衡状態の維持に努力が払われる。これに対して、父性原理は善悪や、能力の有無などの分割にきびしい規範をもち、それに基づいて個々人を区別し鍛えていく機能が強い。つまり、母性原理は「包含する」機能を持ち、父性原理は「切断する」機能を持つ。

  •  なんで購入したか不明。池田信夫さんの推薦だったかもしれない。

     心理学者の河合さんが、古事記、民話などを通じて、日本の精神構造の基層にあるものを分析。

    (1)中空の中心は、男性と女性のみならず、上と下、左と右、天と地、清と穢、などの多くの対立の中央に存在してバランスを保っているものなのである。(p59)

     本の精神構造の中心が男性的な絶対神ではなく、からっぽの中空というのは、丸山真男の超国家主義の分析ともつがなると思う。

    (2)キリスト教文化が母=息子近親相姦の否定の上に成り立っているとするならば、はたして日本はどうだろうか。日本は精神史的にみると、未だ、母=息子近親相姦の状態でまどろんでいると言えるのではないか。(p201)

     このあたりの話は、心理学で得意な分野だが、自分としては、議論そのものがしっくりこない。正直いうとピンとこない。自分が、母・息子近親相姦的といわれてもな?

    (3)吉田敦彦さんの解説「(中空構造)によって、相対立したり矛盾したいりするものであっても、どちらも排除も抹殺もされない。それぞれが価値をみつけられ、居場所を与えられて、共存し、共生できるような文化が営まれてきた。」(p270)

     この、日本人全体といての寛容性について、もっと誇ってもいいのではないか。

  • 日本人がどこから来て、どこへ向かおうとしているかが垣間みれる本。

    世界の国々と比較したとき、日本という国はどうしてそう見えるのか。日々感じている疑問の答えが、ここにある気がします。

    今後の生き方、社会人としての在り方、家族関係、コミュニケーションの取り方、いろんなことを考えさせられる本です。

全32件中 1 - 25件を表示

中空構造日本の深層 (中公文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

中空構造日本の深層 (中公文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

中空構造日本の深層 (中公文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

中空構造日本の深層 (中公文庫)の単行本

ツイートする