中空構造日本の深層 (中公文庫)

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著者 : 河合隼雄
  • 中央公論社 (1999年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033320

中空構造日本の深層 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 主旨としては前半1/3ほどに凝縮されている。

    中空構造とは、文字通り「中心」が空っぽということである。
    つまり、絶対的中心の存在があり、その周辺に一般大衆が存在するという西洋的構図ではなく、AとBがあり、それらのカウンターバランスによって社会がバランスしているということだ。
    これを神話や昔話を例に挙げ、実に明快に説いている。

    日本人と西洋人が根っこの深いところでは決して共感できない部分があるのは、このためなのだろう。
    もっと突き詰めて言えば、島国と大陸との溝は、ここにあると思う。
    父性原理に基づく西洋思想(大陸思想)と母性原理に基づく日本思想(島国思想)。

    それらをわかった上で生きるのと、分からずに生きるのとでは、雲泥の差。

  • 中空均衡構造という、ある時点のみを記述することが不可能な、量子力学的二重性をもつシステム。著者の河合隼雄氏は、人類の生み出した最も根源的な秩序の一つである神話という古層の内部観測によって、時代を先取りしていた。それは、建築家レム・コールハースの「ヴォイドの戦略」や、ブロックチェーン技術から発展した自律分散型組織(Decentralised Autonomous Organisation)を連想させる。このシステムは、中空の不可侵性によって、脱構築による持続的な発展および秩序形成を同時に追究するものである。これは、哲学者カール・ポパーの批判的合理主義的見識を補完するものでもあるだろう。

    中空均衡構造は、弁証法における「正・反・合」の一点を絶対化する運営法ではなく、中空不可侵の前提のもとに、各選択肢の展延可能性を残存させておき、構成素の相互浸透によって、観測される全体が常にメタモルフォーゼしているオートポイエティックな形態である。近年においては、この形態は、暗号通貨技術における「ソフトフォーク」と呼ばれる仕様変更方法に似ているように思われる。著者は、ツクヨミをはじめとする日本神話における無為の神々や、実権を持たない権威としての天皇制を類似例として挙げている。

    一見、様々な利点をもつように思われる中空均衡構造だが、著者はその脆弱性も指摘している。それは、中空の侵入者によって、周辺部が迅速に支配されて結果的に壊滅してしまう現象である。その侵入者は、たとえば、ヒトラーのような人物を表皮として、その内部は低劣な父性という観念であるなどとする。これを予防するためには、周辺部が個人としての意識化を努力しなければならないと著者は指摘する。

    これについて、私は、かつてミシェル・フーコーの提示した「パレーシア」を想起した。自由な言論を中心の空は侵害せず保全する。これはハンナ・アレントの著書「人間の条件」にみられる思想にも通ずる。実践的には、中心の空は、臨機応変にモード変更可能な、やや主観性を帯びた促進者として躍動しうるだろう。このモード変更の意義や方法論について、西洋諸会は吟味しているところであるが、日本国はまずそれ以前の問題として、個人としての意識化を努力しなければならないのだろう。それはたとえば職務の効率的分業やアンバンドリングにおける権限委譲やセグリゲーションなどをはじめとして、改善余地は各所にみられる。

  • ユングの概要を読んで、日本人のメンタルについて知ってみたいなと思いこれを読んでみました。

    すごい。私が生まれる前に書かれたものなのに、未だ色鮮やかにリーダブルな内容でした。

    ビギナー用のユングの本を読んでからのこの本なんですが、
    わたし、村上春樹さんが好きで、でも彼の言う「地下二階」が、よくわからんのです。すごく危険なところで、そこに深く潜っていくと、「人」の奥深くで繋がる何かに出会える。(ようなもの)だという勝手な認識なんですが、深いところで人とつながることのできる何かって、すごく素敵だなぁと思う。でも、私には、そこの奥深くに潜っていく手立てというか、手段というか、そのようなものがよくわからんのです。

    その一つの解決の糸口になりそうなのが、個人的にユングなんじゃないかと。そしてそこから、日本人のメンタリティと神話についてを深めていったら、私にも垣間見ることができるんじゃないかと思い、この本を手に取った次第。

    一気に読んでしまったので、すごく自分の欲していた内容が書いてあったんだけど、まだ言語化できるほど読み込めていないので、もう一度読み解いていきたいと思う。

  • ・人生とは全体性の回復である
     -日本人は意識と無意識の境界があいまい。意識の中心である自我がうすい。それが神話にもでている?

  • 中空構造日本の深層

    筆者は有名な精神分析家の河合隼雄氏であり、近代以前の人々が、世界を認識する際に神話的な解釈をしてきたことを伝えることで、科学的解釈に偏りを持つ近代社会に、一つの世界観を与える上で、神話的解釈の知を言うものを提示している。社会は近代化したとはいえ、人間の精神が変わったわけではない、そのため、今までの神話的知を科学的知のバランスを保つことが重要である。
    日本の神話を読み解いていくと、「中空」の存在が発見される。何かを中心においてと思いきや、すぐにその対抗物が置かれ、それらのバランスをとることで、中心の空性を守ってきた性質がある。精神分析にとどまらず、男性的なものは何かを切る、女性的なものは包み込むという性質がある。丸山の日本の思想にも書かれているが、日本という辺境地域においいては、常に外来文化を取り入れているように見えて、結局のところそれは中止まで行くことはなく、中心の外縁で日本化されたものになっていく。男性原理か女性原理かでいえば、日本は女性原理の強い国である。これは古来のもので、昨今の日本で父権復興を掲げ、若者を鍛えなおそうという運動があるが、筆者は日本にはそもそも復権する父権そのものもがないという。戦前の父の強さは、家長制の中での役割的な強さであり、戦後に家長制がなくなることで、父の権力の脆弱性があらわになったと解釈することが可能である。
    後半は、昔話の深層を良い説くもので、とても面白い。茂木健一郎の本にも書いてあったが、人間の脳は、確実なものと不確実なもののバランスをとるという。前近代の人間は、関あという不確実なものの割合が増えすぎないように、「物語」を確実なものとして採用していた。近代では、それが科学に変わったに過ぎない。そして、今でも、科学でもわからない不確実なことに対しては、やはり物語が採用されるのである。

  • 去年Eテレで放送してた『100分de日本人論』で紹介されてて、うわあすごい面白そう!と思って、ようやく読み終わったのが、今。
    すごい面白かったー!
    今まで読んだ日本人論の中で、いちばん腑に落ちたかもしらん。
    なんかこう、しっくりきてなかったとこがぴったり!すっきり!ッて感じ。

    三部構成になっていて、上記の日本人論的内容は第一部。二部三部はいかにも心理学的な話で、私はすごく興味深く読めた。読みやすかった。
    中学とか高校のときに心理学に興味を持ったのにフロイトで挫折して結局全然関係ない分野を専攻したけど、まず河合隼雄から入っとくべきだったね。
    何冊か氏の本を読んでみようと思います。

  •  アマテラス、スサノオに対するツクヨミ、三柱の神のおけるアメノミナカヌシ、さらにそこから生まれたタカミムスヒ、ツハヤムスヒ、カミムスヒなどにおいて中心の神が日本神話において出現してからほとんど記述されないことから日本人の心性においての中空構造を著者は指摘する。
     自分も古事記を読んで最初の三貴神が出現してからすぐに姿を隠すところがかなり謎でありつつそういう構造に結構感心していたのだが、言語化されるとなるほどそういう考えもあるのかと目から鱗だった。日本人の特性としての曼荼羅状の球構造を提示するとこなんてかなりおもしろいんだけど、しかし教育問題や、漫画について言及するとこはちょっとあまりにも図式化されていて正しいことを言っていてその実何も言ってないような感をうけたので残念。

  • 151201『古事記』に見える中空構造
    必ずしも善・悪(キリスト教的な神VSサタン)の構造で規定しない一方で「悪」でも次の段では英雄として描かれる。カウンターバランスが図られるのが特徴である。西洋的な相反するものが止揚し「合」を成すのではなく、中空を保ち、ふわふわと巧妙なバランスを保つ。※神道には、普通の宗教にあるはずのものがない、すなわち「開祖も宗祖も教義も救済もない」by島田裕巳

  • 日本人というものについて、それは一体どういったものなのだろうかという疑問に対して、一つの答えをいただけたように思いました。日本人については、はっきりしないとか、しっかりしないとかいったような批判を聞くことがありますが、その深層と、実はそこに日本人の強さがあったりすること、それに気づかずに強さを勘違いして失敗してしまうこと。そういったことに答えが示されています。日本人内では、男女の考え方の違いについても書かれており、なるほどと思わされました。
    これが私が生まれる前に書かれたものとは思えないくらいに、現在にも通じる新鮮さがあり、だからこそ「深層」なのだと分かりました。

  • フロイトとユング、あるいは
    リゾームとツリーを構造的に繋ぐものとして
    直観的ながら、ここでは「中空」というものが提示されており
    それはたとえば、日本神話に登場するツクヨミであるとか
    ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」において
    主人公を異世界へといざなったウサギ穴などに見られる
    ひとつのいわゆる「元型」イメージなんだ
    グローバル世界における価値観・世界観の激変にさらされたとき
    「中空」を思い出すことで精神をニュートラルに保つことは可能だろう
    しかしまあ、ツクヨミやウサギ穴がそうであるように
    「中空」は見失われがちなものである
    この本も最後のほうはそんな感じで、リゾームに取り込まれてしまう

    かといって、あくまで「中空」に固着するものの末路は
    統合失調の世界にほかなるまい
    あまり深刻にとらえるべきものではないよ

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