銀座 名バーテンダー物語 (中公文庫)

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著者 : 伊藤精介
  • 中央公論新社 (1999年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033498

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銀座 名バーテンダー物語 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • 銀座のバー「クール」の古川緑郎さんの一代記.古川さんは大正五年に麻布に映画の弁士と芸者のあいだに生まれ,昭和4年に,谷崎潤一郎が名付け親の銀座の名店「サン・スーシ」に13歳で入店.昭和23年に「クール」を開店.平成15年に88歳で引退,平成24年に97歳でなくなっている.ちなみにこの本の単行本は昭和63年の発行.

    戦前の銀座の様子や,戦中,戦後の洋酒を疎開させたり,闇市で買ったりといった古川さんの話しがなかなか面白い.
    実はそれよりも,カフェ・ド・パリ,サン・スーシから始まる日本の街場のバーの歴史のほうがもっと面白い.これらのバーにかかわった人たち,特にサン・スーシのオーナーだった西川千代をめぐるエピソードたち.枝川公一 「日本マティーニ伝説」が戦後の進駐軍あいてのホテルバーから始まる日本のバーの話だったのとは,まさに対照的な本.

    私は残念ながら「クール」には行ったことがないが,最後に書いてあったクールの住所を見ると,ハイボールで有名な「ロックフィッシュ」と同じビル.そうかあそこにあったんだ.

  • 【レビュー】古本屋さんで手に入れた本です。今では、文庫で読むことができるようです。

    残念ながら、本に登場する「クール」は閉店し、著者の伊藤さんも、主人公であるバーテンダーの伊藤さんもお亡くなりになっています。

    昭和を駆け抜け、無骨な職人魂を持つ人が、ひとり、またひとり、亡くなっていく。職人魂に固執していてはいけないというのは、よくわかります。そのとおりだと思います。ただ、それはトレンドとしてはそうかもしれないが、確実に、そういったことを忘れていけない・大切にしなくてはならないクラスタが存在します。

    税理士、とくに私のように「個」で生きていく税理士は、古川さんのような一流バーテンダーの生き様の中に、自分を社会に活かすヒントがあると思います。

    あと、個人的には戦前戦後のお酒やバー文化に関する記述も非常に勉強になりました。「第2章」のカクテル十傑、バーでいまいちど呑み直してみよう。

    それにしても、これだけ自由に安心してお酒が呑めるようになったのは、自分が生まれた後のことだったのだなぁ・・・。その影には、古川さんたちのような先人のご尽力がある。バー文化を築き上げた先達に敬礼。

    ■ プロローグ 「いらっしゃいまし」

    →孤独でありながら孤独ではないそんな時間が、目はとても好きだ(P.16)

    ■ 第1章 昭和四年の“少年ボーイ”

    →古川家というのは男なら芸能の道へ、女なら芸者になるっていう家柄だったんです。(P.36)

    ■ 第2章 親方は“シェイクの音”

    →ちなみに、戦前・戦後を通じて変わることなく飲み継がれている“カクテル十傑”をあげるなら、マティニー、マンハッタン、サイドカー、バカルディの他に、アラスカ、スティンガー、ギムレット、オールド・ファッションド、ブロンクス、バンブーといったところ。近ごろ若い方たちの間で人気のマルガリータとかソルティ・ドックといった、いわゆるトロピカル系のカクテルは、戦後になって飲まれるようになったものなんです。(P.62)

    ■ 第3章 フェリス女学院と西川ピアノ

    →誇りをもって「サン・スーシー」をなさってらっしゃったんじゃないかしら。お店をやっていますと、ふつうじゃなかなかお会いできないような立派な方がお見えになりますでしょ。そういう方たちと対等にお話しできるということで。ですから、ご自分が向上しようと思えば本当に向上できたんじゃないですか。」(P.68)

    ■ 第4章 伝説の本格バー「カフェ・ド・パリ」

    →かくあらねばならないといったふうに排他的かつ意固地に凝り固まったバーテンダーは好きではない。頑固さやプライドや自信は好きだけど、意固地さや権威主義や他人の批判は好きではない。(P.98)

    ■ 第5章 ウイスキー疎開

    →このカウンターのなかにおりますと、どんなに偉い先生とでも対等にお話ができます。まぁ、対等といっても先生のほうが話をして下さるわけですけど、その話のなかからいろいろなことを教わって、それが少しずつ自分の栄養になっていく。(P.113)

    ■ 第6章 スピーク・イージー

    →一般の日本人がカストリ酒だとか、ひどい場合にはメチールなんかを飲んでた時代に、私どもは日本人オフ・リミットの進駐軍クラブのバーで高級な用集をジャンジャン使えたんですからねぇ。私の場合はほんのちょっとの期間しか働きませんでしたけど、こっちのほうは実に幸せな経験でした。(P.146)

    ■ 第7章 クール開店

    →正規の輸入ルートによってスコッチ・ウイスキーなど舶来の洋酒類が入ってくるようになったのは、通関実績によると昭和26年以降のことである。さらに舶来の洋酒類の輸入が自由化され、日本のバーテンダーたちが本当に想いどおりに洋酒を... 続きを読む

  • 日本における本格バーの歩みを、銀座のバー「クール」のオーナー・バーテンダー古川緑郎氏を主人公に展開する、ノンフィクションです。本格バーの始まりと歴史を知るには、好適の一冊でしょう。古川緑郎氏の次の言葉が、「クール」とこの本を語ります。

    1916(大正5)年生まれの古川緑郎さんは、午後5時きっかりにバー「クール」の看板に明かりをともし開店する。古川さんがはじめてバーで仕事をはじめたのは1929(昭和4)年のことである。銀座・交旬社ビルの前に<少年ボーイ募集――サンスーシー>という看板が出ていて、父とともにバー「サンスーシー」を訪れ、小柄で清楚なママ西川千代さんに採用された。古川さんは高等小学校の2年生、満13歳になったばかりだった。以来70年にわたり、20世紀も終りに近くなった
    近日まで、古川さんはバーで働きつづける。

    「店内では、客も主人も従業員も、行儀、作法、道徳を守らねばならない。あの店は良い店だ、と言われるには、店の造作がいいからとか、調度品、高級品が並べられているから等々ではない。いくら高級な調度品を並べたてようと、主人と従業員が一丸となって、店のため、ひとつの目的のために務めなければ良い店にはならない。また客も、その気になって店に協力しなければ良い店にはならない。客が良い店を作るのだ。客がその店の営業目的を知って、エチケット、マナー、モラルを守ってくれれば、店内は良い雰囲気につつまれて楽しい店となり、飲む物も自然とおいしくなる。そうなれば客は、口から口へと伝えてくれて、あの店は良い店だから行ってみなさいとなる。良い客がつけば店にも風格がつき、世間にも宣伝されて、客が集って来る。客は一軒の店だけではなく他の店にも行って、いろいろと比較をするものだ。良い店には必ず共通した何かがある。客はそのような店を行ったり来たりする。一流店と言われるには、それなりの努力をしなければならない」 P239より

  • バーが好きなら是非、一読を。

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