言壷 (中公文庫 か 59-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122035942

作品紹介・あらすじ

万能著述支援用マシン"ワーカム"に『言語空間が揺らぐような』文章の支援を拒否された小説家・解良翔。友人の古屋は解良の文章の危険性を指摘する。その文章は,通常の言語空間で理解しようとすると,世界が崩壊していく異次元を内包しているのだ。ニューロネットワークが全世界を繋ぐ今,崩壊は拡大されていく…第16回日本SF大賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 綺文のみ読んだ。あまりはまらず

  • 言葉を中心にしたSF短編集。
    言葉を校正したり、様々な機能があるワーカムをめぐる言葉のいろいろな物語。
    世界を変えたり、異世界に飛んだり、沈んだかつての小説たちを拾ったり。

    シュールさの中でコミカルさと幻想たちの美しい物語たち。強烈です。

  • 数年前から激変している言葉や文章を取り巻く現実をヒントに、ここまでの物語を紡ぎ出せるものなんだ!
    クリエイターの能力の凄まじさに圧倒されます。

  • とりあえず、「言葉」というものに興味がある人は、読んだ方が良いです。
    幾つもの世界を舞台にして、「言葉」というものの性質に迫った傑作です。

    Keywordは一つ。「ワーカム」。
    万能著述支援用マシン、と説明されているこの機械。
    この機械は、「言葉」という概念を物質化したものだとぼくは捉えました。
    人の表現欲を糧として、人を支援しているという擬態を取る。
    気が付いた時には、人はワーカムの支援無しには居られなくなる。
    これは、言葉という摩訶不思議な存在そのものだと思います。

    本書は、幾つかの短編による連作という形を取っています。
    その中でも、最高傑作は「栽培文」だと思います。
    もう読んでくれとしか言えませんが、本当に素晴らしい短編です。
    世界観、発想、展開、演出、すべてが完璧です。
    ちょっと世界観を描写してみると、この世界における「言葉」は植物の形をしています。
    「言葉ポット」という植木鉢に、人々は自らの言葉を栽培することで会話を行います。
    もう、この舞台設定だけで、たまらなくワクワクしてきます。
    「言葉」というものの立ち位置そのものを変えてみせることで、その性質を浮き彫りにしているのです。
    そして当然ながら、奇抜な舞台設定で終わり、なんて事は有り得ません。
    この舞台に於いて、なんとも素敵でしっかりとした「お話」を展開してくれるのです。
    登場人物は少なく、派手な場面なんてのも殆ど出てきません。
    しかし、読ませるのです。ぐいぐいと引き込まれるのです。
    そして読後に残るのは、爽やかで心地の良い後味。
    この圧倒的なまでの筆力が、神林長平氏の真骨頂だと思います。

    他の作品も、一つずつ切り口が異なります。
    切り口だけではなく、世界観そのものも大きく違います。
    しかし、themeだけはぶれずに一貫しています。
    それは、「言葉」です。
    時には奪われ、時には歪められ、時には操られ、時にはその形を変えながら。
    「言葉」というものはいったい何なのか?
    その一点に向けて、ただひたすらに物語は進んでいきます。
    論理展開としての考察ではなく、実際の活動描写によって言葉という存在を捉えようとする試みです。
    そう、言葉という「生物」を、その「外側」の描写によって浮き上がらせる。
    それは、言葉を越えたところにある「感覚」として、読者へと伝わります。

    哲学という側面からのapproachによって、言葉を捉える試み。
    その対極にあるのが、本書ではないかと思います。
    冒頭に書いたことを、もう一度繰り返します。
    本書は、「言葉」というものの本質を見事に捉えきった、大傑作です。
    その手応えが、「碑文」に刻まれた言葉なのだと思います。

  • 古びないかっこよさ。
    SF的ガシェットのかっこよさもあるが(ワーカムが欲しい!)、作家としての神林長平の言葉=仮想に対する思想もとてもかっこよい。
    社会や世界認識が言葉によって構成された仮想存在でしかないのなら、言葉によってヒトの”世界”は変容し壊滅し支配することが出来るということ?
    そしてさいごには言葉がすべてを支配する。
    最高の一冊であった。

  • 「言葉」「枝葉」「育てる」などの語が比喩のような実体のあるような表現で不思議な世界観が表されている。一つ一つを読むと意味が通じない感じなのに全体像が浮かび上がってくる感じで、まさにこの本の世界のようだった。
    「言葉」が音声と視覚を超えた時はこんな感じになるのだろうなと思った。「理性」の存在はどこにあり、何によって確立しているのか。

  • 面白い。言葉とは何かを考えたくなる。
    最後の一文をみて、こりゃ負けたと痛快な気分になった。

  • 神林さんの代表作とも言える本で、「言葉」についての6篇の物語を集めたものだ。すべての作品では共通してワーカムというワープロに高性能な入力支援機構のついたような道具がでてくる。ワーカムがあれば、小説を書くのも、こういった書評とかを書くのもとても楽になるという。
    だが、僕もひとつ欲しいなって思ってもなかなか変えるものではないらしいのだ。それはワーカムが個々人にカスタマイズされていくため、なかなか現代のパソコンのように処理だけを切り売りするレンタルという形式を取れないため、相対的に高くなってしまうのだ。
    さて本作の主題としては、言葉が先か人間(意思)が先かというものだ。言語の世界は、ワーカムが主に担うところとなる。まだ私は未読だがスティーブン ピンカーの『言語を生みだす本能』にも関連していそうで、いずれは読んでみたいなと思っている。

    残念な点は、Amazonの書評にもあるが尻つぼみとなっていくところだ。最初の作品が一番面白く、徐々にそうでもなくなっていく。だけど、本書全体で見たらなかなかの出来で、やはり神林さんの代表作と言われるだけはあるのかなと思う次第だ。

  • 脳がぐるぐる引っかき回される感じ

  • 「言葉」をテーマにした短編集。
    読んでから随分経つんで細かい内容は忘れちゃったけど、神林哲学が凝縮されてて衝撃を受けた記憶だけはくっきりと残ってる。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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