最終戦争論 (中公文庫 B 1-11 20世紀BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122038981

作品紹介・あらすじ

まもなく国家殱滅型の最終戦争が起こり、その後に絶対平和が到来する。太平洋戦争前夜、戦史研究と日蓮信仰から生まれたこの特異な予見は、満州事変を主導し日本の運命を変えた。陸軍の異端児は何を語ろうとしたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 『戦争』という分野ならば、たぶん天才なんだろう。

    でも、それ以外のことはぜんぜん見えてない気もする。

    軍人だから戦争ってもの以外からものごとを捉えることができなかったのかもしれないけど、やっぱり無計画かつ適当すぎ。

    でも、コチコチの組織内にあってはすげー面白い人だったんだとも思う。

    だいぶ宗教入ってるしな。

    ただ、やっぱこれはないよ。

    利害によらない世界平和のための最終戦争。

    ありえねーって。

  • 書店でたまたま見つけて興味を持ち、購入しました。興味深かったのは、古代、中世、近代、現代の時代ごとに、西洋の戦争の歴史を分析し、戦争の性質を決戦戦争と持久戦争に分類したり、兵制を国民皆兵と傭兵に分類したりして、最終的には、東洋文明の日本とアングロサクソンの西洋文明の代表であるアメリカとが、「世界文明統一」のための「最終戦争」を行う、と予言したところです。戦史の分析については、西洋に限定されており、上述のように一般化できるのか、判断がつかないところもありますが、1つの考え方としては理解できます。また、本篇は昭和15年に発表されたようですが、そうすると、その一年後の12月8日に真珠湾攻撃が起きているので、アメリカとの最終決戦という予言は当たったことになります。日本は、対日石油輸出の全面禁止で対抗されながら、アメリカと、ぎりぎりまで交渉を続けたわけですが、一方でアメリカと戦わなくてはいけない運命も受け入れていたことがわかります。一方で、受け入れ難いことは、宗教の最も大切なことは予言であると言っているところです。「日蓮上人は、日本を中心として世界に未曾有の大戦争が必ず起こる。その時に菩薩が再び世の中に出て来られ、日本の国体を中心とする世界統一が実現するのだ」と日蓮が言うことを引用し、宗教面においても、日米の最終決戦が起きることを根拠づけようとしています。この辺の記述に関しては、胡散臭さを感じながら、話し半分で読みました。他にも突っ込みたいところはいくつかありますが、その一方で、なんとなく引き込まれるような魅力も感じました。例えば、八紘一宇は、現代では日本の世界征服の野望を表現した標語と考えられているようですが、これは、石原莞爾の信仰の師が、日本書紀に出ている神武天皇建国の詔勅の中の、六合を兼ねて以て都を開き八紘を掩うて宇を為さん…から作った新しい言葉ということです。真意は全く日本の世界征服でなく、道義に基づく世界統一の理想を述べたものであるという意味のようです。いろいろ書いてみましたが、上っ面しか捉えていないと思います。時間をおいて、日本国近代史を学び直した上で、読み直してみたいです。

  • 星2は本に対してではなく内容を理解できない自分に対しての評価。

    兵器の進化(核)で均衡が保たれると予測したのはさすがだけど統一云々までの過程が???

    もっと歴史を勉強します…

  • 20210902

  • 収録内容は以下の通り。

    本編
    松本健一: 解説

    日蓮あるいは法華経の信者としての石原莞爾を知ることができた。将来起こり得る戦争に向けて不断の努力をするべしとの見解や西洋における戦争史には納得させられた。想定よりもあまりに早く日米開戦を迎えたことが悔やまれる。

    カバーデザインは吉田悟美一、山影麻奈。

  • 「戦争史大観」で出ていた最終戦争論の部分をより詳しく書いたもの、かな。
    第二部「最終戦争論に関する質疑応答」で細かい疑問点にも
    触れられているのでよくわかった。

    宗教の部分を置いとくとしても、まあ考え方はかなり鋭いよなあ。
    この通りにいかなかったのは、日本人の全体的なモラルが
    石原が考えるほどなかった、ってことなのかもな。
    まあ短いし、読んで損はない。

  • 日本の現代史において、「なぜ太平洋戦争のような明らかに負けが決まっている勝負に突入してしまったのか?」という意思決定の誤謬を問うことは、恐らく最も重要な論点の一つである。その論点を考える上で、関東軍参謀として満州国という理想を掲げて日中戦争を引き起こしながら、東南アジア・太平洋への戦線拡大には批判的であり軍部を左遷された天才的軍人、石原莞爾の思想を知ることも、また極めて重要であろう。

    石原莞爾は日本の陸軍にとっては明らかに異端児であり、その思想の論理性や明確な絶対平和へのビジョンについては、驚愕せざるを得ない。そして、日本の左派はこれに対抗できる論理を、ロシアからの借り物であるマルクス・レーニン主義以外にどれだけ構築できたのかというとその点は恐らく全く構築できておらず、思想の強度が明らかに異なる点に、戦前から連なる左派のふがいなさすら感じてしまう、というのは言い過ぎだろうか。

  • 大日本帝国陸軍軍人である石原莞爾が1940年に発表した著作。1940年5月に京都での「人類の前史終わらんとす」の講演内容をまとめたもの。なかなか興味深い内容です。これから日本が突入するであろう最終戦争を欧米戦史や仏教などの観点から考察しています。ちょっと仏教のお話は微妙ですが、本職の軍人だけあって戦況の考察はさすがです。今では第二次世界大戦及び太平洋戦争の顛末を知っているので、ここに書かれた内容の当たっていた部分も間違っていた部分も分かりますが、当時の人たちがどう感じたか気になります。

  • 石原莞爾 「 最終戦争論 」危険な本だと思う。

    論理性は欠いているのに 「最終戦争が終われば 平和になる 」という 戦争プロパガンダ的メッセージが 宗教のように 頭に入ってくる。兵器の破壊力を低く見積もっていることも危険

    アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、東アジアの4つの世界が破壊兵器による最終戦争を経て、1つの世界のみが勝利したときに平和が訪れるというもの

  • 1993年刊行。昭和15年の講演録とその質疑応答を文書化したもの。科学技術関連の著者ないし当時の知的限界は否定しないが、仏革命とナポレオンを考究したというわりには、ナポレオンのモスクワ敗戦に学ぶところが少ない。国土を利用した縦深陣の典型から学ぶべきことは、中国戦線のそれを考究するのに不可欠であったろう。また、第二次産業革命と述べるがその内実は全く不明。核分裂によるエネルギー革命を言うのであれば、やはり軍人の思考のそれを超えるものではない。また、経済力戦争の過小評価はどうしようもないレベルである。
    特に、生物学(生物兵器関連)、電子工学(レーダー)、金を裏づけとしないで生産活動の持続的向上方策と限界(通貨学)、大量生産方式(生産工学、フォード式)は当時でも分析対象になりえたはず。もっとも、当時より30年(50~70年と一定の幅はあるが)後、つまり、1970~2010年くらいに世界最終戦争があり、その準備期間と見た点は、米ソ対立、ソ連崩壊、米中二極構造への亢進という現代の状況の予見にはなっているかのよう。他方で、日蓮宗など宗教を持ち出すという、まぁ、合理と不合理がない交ぜとなった一書である。
    結局のところ、彼の考えと対立する、あるいは補完する論考が自由に発刊できなかった点が最大の悪徳であったように感じる。正直、この程度の見通しを立てられる経済人、学者は居たであろう。例えば、陸軍主導の総力戦研究所が出した日米戦争必敗論がその典型である。そのような自由な思考・論争の流通が、陸軍主導の政権運営・統制化の下でなし得なかった点が最大の悪徳であった印象が強い。かかる石原自身も指導部中枢からは排除されたのだから。

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