- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122039261
感想・レビュー・書評
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著者の本好き・読書好きが伝わる一冊。
半ばエッセイのような書評は「この本のここがとてもいい!」「この本に出会えてよかった!」という感動・感嘆を隠すこと無く、本物の教養や知性に裏打ちされた文章で綴られている。その本の不満足な点も述べていることもよい。ネタバレにならず、読者の読書欲を煽り、文章自体が読み物としておもしろいーー書評のお手本と言えよう。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
rontotoさん素晴らしいコメントでした。素晴らしいコメントでした。2023/05/13
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須賀敦子のスクリーニングを経た書物であれば、ぜひとも読んでみたいという本があるわけで、さっそく2冊の本を注文した。著者が無類の本好きであったということがしみじみと伝わってくる。
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須賀敦子さんの書評集です。ウィリアム・モリスのテキスタイルを使った装丁が美しく、そのまま持って歩きたい1冊です。書店の書棚を見上げたら目にとまりました。守備範囲はイタリア文学からフランス文学、ラテンアメリカ文学…といわゆるロマンス諸語の世界の文学が中心です。かといってそこに固執するわけではなく、現代アメリカ文学まで幅広く読まれているご様子です。ラインナップは古典から学術書、文芸まで幅広く紹介されています。日本の作家の作品では池澤夏樹さんのものが数篇取り上げられていることからみれば、骨太ながらも詩情豊かな作品がお好みのよう。私には池澤文学のルーツもわかるおまけとなりました。もちろん、ただお好きな本を並べてほめそやすわけではなく、ピリッとした批評眼も効かせておられ、しかもそれが嫌みではないんですよね。洗練、というのでしょうか。ヨーロッパ伝統の慇懃無礼さを感じないわけではないですけど(笑)。見返しのプロフィールを見て、あの年代に特有の、良質の教育(何をもって「良質」とするかはきちんと説明できないので、あくまでもマイ感覚的に:苦笑)を受けられた女性文学者が持つ、香気を含んだ筆致に納得することしきりです。この筆致は田辺聖子さんの書評に通じるかな…とも思います。もっとも、田辺さんのほうは国文学がホームで、もう少しロマンチック転びの作品がお好みのようですが。男性であれば、この気品は間違いなく『背教者ユリアヌス』の辻邦生さんのものでしょう。取り上げられている本にひるみながらも手を伸ばしたくなるのはもちろんのこと、須賀さんの書評をもっと読んでいたい気分にさせられるのか、ゆっくりページを繰りたくなる本ですので、この☆の数です。