13日間: キューバ危機回顧録 (中公文庫 B 1-19 BIBLIO20世紀)

  • 中央公論新社
3.50
  • (5)
  • (6)
  • (21)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 103
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122039360

作品紹介・あらすじ

一九六二年十月、キューバで攻撃用ミサイル基地建設の動きが発覚した。軍部の主張通り叩き潰すか、良心に従ってソ連と話し合うか。ケネディ大統領の側近であった弟が、アメリカの決断を生々しく描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  キューバ危機ほど米ソ関係が緊張した時期はないだろう。本書はそんな危機に直面したアメリカ政府の苦悩をまとめた回顧録である。著者ロバート・ケネディの兄は当時アメリカ大統領であったジョン・F・ケネディであるが、本書を読むと大統領がアメリカ国内のみならず、世界中の情勢に配慮した外交を展開したことがわかる。とにかく核戦争は回避したいので、決してソ連に強硬策を取らなかった。また政府内でも、さまざまな方面で話を聞いて議論したりと、柔軟な対応をしたことがわかる。なかでも軍部とのやり取りには苦労しており、一歩間違えれば戦争に突入したかもしれない。

  • キューバ危機において司法長官として兄のケネディ大統領を支えたロバートケネディの回顧録。回顧録の何がいいってやはり歴史的イベントに立ち合い決断を下した人たちの立場を想像し自分だったらどうするだろうと自問し考えることができるから。
    いかに戦争にエスカレーションさせず、ソ連の面目も保ちながら、米国としての意思を示し、交渉していくか。大統領としての責任の大きさと求められる視野の広さについて実感。軍部はどうしても視野が狭くなってしまう印象。

  •  米ソ冷戦の最中に起こったキューバを舞台とした国際政治上の重大危機の当事者による回顧録である。
     超大国アメリカの若き指導者たちの苦闘が生々しく迫ってくる。この頃のような二極的(Bi-Polar)な国際対立であるがゆえに出来たともいえる駆け引きは、双方のぎりぎりの決断で事なきを得た。
     後に、この出来事は映画にもなった。
     現代のような多極的(Multi-Polar)な国際関係下において、このような交渉が実現するのか?と言われれば、それは難しいとしか言えないだろう。しかし、その関頭に居た人々の言葉や、彼らの直面した事態が、現代からみて「簡単である」という事には決してならない。むしろ、そういう事態を回避する事が出来たプロセスについて、学ぶべき事は多々あるはずだ。
     どうしてもアメリカ側の英知を称える論調が多いのだが、この時のフルシチョフの決断が無ければ、現代はもっと不正確な球体になっていたという事は言えるだろう。そういう意味では、米ソそれぞれに「13日間」があり、それぞれが苦しい決断を断続的に続けて勝ち得た平和であった、というのが感想である。
     こういう重要な、しかも教訓に満ち溢れている事案を知らないという報道官がアメリカの大統領府に居るというのは、単なる偶然かもしれないが、不勉強の謗りを本人のみならず、大統領自体が受ける事も致し方ないだろう。
     この本は、意思決定に参加する人には是非読んでもらいたいと思う。この本だけでなく、これに関連する論文等を読む事で、マネジメントについて多くの視野を得る事が出来るだろう。

  • キューバ危機に関するロバート・ケネディの回顧録。
    全面核戦争勃発の危機に直面する状況のなかで、「より良い」判断を真摯に求めて、議論し、行動する大統領とそのスタッフ達の姿がリアルに、そしてある意味、淡々と描かれる。

    こうした危機のなかにおいても、ケネディ大統領は、スタッフに十分な議論の時間を与える。二つの議論の対立が収まらないなら、2チームにわけて、それぞれの声明文の草稿を作らせる、など、タイトな時間のなかにおいても、しっかりとした議論のプロセスを踏んでいく。

    議論に参加するスタッフはそれぞれの役職の固定観念や組織論理にとらわれている。また、第2次世界大戦前のドイツへの宥和政策の失敗から教訓を引き出そうとする。これに対し、ケネディ兄弟は、「国益」や「人類」という観点から判断し、また、第1次世界大戦の発端となったオーストリア皇太子暗殺事件から教訓を引き出そうとする。

    こうした議論から、導きだされた決定が、本当にベストのものだったのか、本当に合理的なものであったのか、は誰にも分からない。(グラハム・アリソンは「決定の本質」で、キューバ危機への対応が、合理主義だけでは説明できず、組織論や認知心理などが混ざったプロセスであることを印象的に示している。)しかし、危機のなかにおいても常に広い視点から議論し、ベストな答えを見出していこうという姿勢は、そべての組織にとって必要な事だと思う。

    「われわれが語り合い。議論し、意見が一致せず、さらにもう少し議論することができたからこそ、結局はあのような道を選べたのである。こうした時間はいつもあるというものではない。もっともこれはおそらく驚くべきことかもしれぬが、大きな危機においても、たいていの場合には時間があるものである。しかし、時間があるとき、時間は活用されねばならない。」

    巻末に、キューバ危機に関する声明文や外交文書、書簡などがついており、歴史の重みを実感できる。

  • 新書文庫

  • 「大統領を一番悩ませ,戦争の見通しを,他の場合予想されるより一層恐ろしいものにしたのは,米国と全世界の子供たちが死んでゆく幻影であった。」世界を核戦争寸前まで追い詰めた,1962年10月のキューバ危機についての回顧録。「抑止」のための兵器が,誰もが望まない戦争を引き起こす危険性を考える際の必読書。

    *推薦者(国教)N.S
    *所蔵情報
    https://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00265855&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 本当に冷や汗ものです。
    とりあえず戦争にならなくて本当に良かった。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(立花隆選)124
    現代史

  • 批判的な意見を受け止め、あらゆる選択肢を真摯に検討する。相手に立場に立ち、時間と精神的な余裕を持たせ、交渉を行う。キューバ危機でのケネディ大統領の判断がひとつでも違えば、今の世界は大きく違っていたかもしれない。

全10件中 1 - 10件を表示

ロバート・ケネディの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×