お洋服クロニクル (中公文庫)

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著者 : 中野翠
  • 中央公論新社 (2002年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122039773

お洋服クロニクル (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 何というか「箸休め」的なお気楽読書をしようと思って手に取ったのだけれど、たちまちひきこまれて夢中で読んでしまった。中野翠さんの個人的なお洋服年代記。

    中野翠さんは私よりたっぷり一回り以上年上で、団塊の先頭あたり。なのに、子どもの頃のお洋服話が思い当たることばっかりで懐かしいのなんの!思うに、中野さんはオシャレ心いっぱいの東京っ子、こちらは地方(しかも田舎)のボサーッとした子どもだったわけで、ま、十年は軽く遅れていただろうから「あ〜そうだった!」となるんだろう。

    ウチの母もよく自分や子どもたちの普段着を縫っていた。余り毛糸でセーターやベストを編んだりもしてた。去年のをほどいて、別の毛糸を足して編み直したので片方の袖の途中から違う色になってるセーターがあったりして。たまのおでかけに着る「よそゆき」は、来年も着られるよう思い切り大きかった。それでもレースやフリルがついたワンピースはすごく嬉しくて、いまでもはっきりデザインを覚えている。中野さんが「貧しさと豊かさがゴチャゴチャになっていた」と書いてられて、本当にそうだったなあとしみじみ思った。

    これまた中野さんの言葉通り、昔の主婦はえらかった。衣食住すべてにかかる手間が今とはけた違い。「『アイデンティティ』がどうの『自分探し』がどうの言」う暇なんかなかったのだ。また、中野さんは、自分は母親から「好き」だの「いい子」だの言われたことがないが、それでも愛情を疑ったことがないのは「食べるものや着るものという具体性の中で、日々、愛情を確認していたからで、互いに言葉に出す必要もなかった」と実に鋭い指摘をされている。これまたすごくよくわかった。

    子ども時代を過ぎるとさすがに世代の差がはっきりしてくるが、それはそれで面白く、そのころの自分を思いだしながら楽しんで読めた。社会人になるあたりからは、個性の強い女のコが社会の中で自分の居場所を探そうとしてきた半生記とも読める。初めてシャネル風スーツを着た時のことを書いて、「今にして思えば、あの瞬間から私はこのか弱い細腕で『おやじの海』へと泳ぎだしていったのですね」。「社会人」になるとは「おやじの海」へ飛び込んでいくこと、これはまさに実感だ。

    ただ、そこは著者のこと、しめっぽく苦労を語ったりすることは全くなく、そのさっぱりした書きぶりがとても気持ちよかった。それにしても、中野さんの記憶力の良さに驚く。「お洋服」への執念のなせるワザか。おかげで自分も、かつて好きだったり嫌いだったりした身の回りのモノの記憶が蘇って、結構覚えているものだなあと感心した。

  • つくづく、中野さんってお洋服が好きなんだな〜って思う。50〜90年、中野さんがどんな風に過ごし、どんな風におしゃれを楽しんできたかがよくわかり、読んでいてとても楽しかった。
    読み終わったとき、思わず自分も簡単なお洋服クロニクルを作ってみちゃった。私も洋服が大好きで、思い出と洋服は密接につながっているから、なかなか洋服が処分できないのだ。そんな悩みを抱えつつも、「着ること」は「生きること」だよな、と思う。
    いろんなファッションエッセイを読んできたけど、その中でもこの本は一番のお気に入りである。中野さんは私の母とほぼ同世代、母にちょっとこの本を読ませたらけっこうそそられていたようだ。「そうそう、こんなだったのよ〜」とか言いながら。
    中野さん本人によるイラストもすごくいい。今の中野さんはどんなファッションを楽しんでいるのかしら?

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