檀流クッキング (中公文庫 た 34-5 BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122040946

作品紹介・あらすじ

「この地上で、私は買い出しほど、好きな仕事はない」という著者は、文壇随一の名コック。日本はおろか、世界中の市場を買いあさり、材料を生かした豪快な料理九十二種を紹介する"美味求真"の快著。

感想・レビュー・書評

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  • 太宰治、坂口安吾と並び称せられた、無頼派三羽烏の人檀一雄ですが、文壇きっての料理人、檀流クッキングは新聞コラムで大人気だったようです。
     檀流の系譜は檀太郎、檀晴子と受け継がれいまでも人気のようですが、30代、いや40代の人で御存知なのは、檀晴子さんだけかもしれませんね。
     読んで、作る、料理の本です。ブログでは檀流の系譜にあれこれ知ったかぶりで言いました。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202212060000/

  •  20代の後輩と本屋に行ってこの本を手に取りながら、「檀さん大和田さん檀さんのお父さんの書いた本だよ」と説明したところ、「檀さん大和田さん檀さんって何すか?知りませんよ」と返されビックリマン世代とポケモン世代の深い溝を改めて感じたところであります。檀といえばれいじゃなくてふみだろうが。
     
     さてこの本の内容ですが、最近読んだ本の中ではとびきり面白かった!!です。図書館で借りたけどやっぱり買おうと決意。有名な本ですけど普通のレシピ集、実用書ですがエッセイで写真はなく文章のみ。それだと料理本の実用性としては劣るよなと、最初は思っていたんです。
     ところが春編、四季4部構成の最初の章のラスト、山場の60頁の檀さんの例の名ゼリフで盛り上がりが最高潮に達します。ここで大爆笑。
     
     こういう本の面白さというのはふたつ。1に最初に書いた実用性ですが、もうひとつ重要なのは話の枕など、レシピ以外の部分が面白いかどうか。著者の魅力や人間性がそこに滲み出てくるのです。これがとっても可愛らしい。カバーの折り返しのところに檀さんの写真があるのですが、実にかわいらしいじゃないの。オネエっぽいけど。

     この本はやはり、料理をあまりしたことがない人よりもちょっとかじってる感じ、ちょっと知っているぐらいの人の方が面白いと思います。今だと女性蔑視だなんて色々とうるせえんですが、1970年なので家庭の奥さん、お母さん向けに書かれてる。この'70年ごろというのは、檀さんもそうだけどまだ戦争の記憶が残ってる人も多かったのと、かつ現在2010年代からしてもそこまで大昔ではない(冷蔵庫等普及している)ので一番面白い時期に書かれた本でもあります。
     例えば、戦争中の中国大陸で檀さんが味わった1本のオクラへの思いと、終戦直後のモツごった煮、あるいはやはり放浪時代の大陸でのモツ、そして逆に現代的なレジャーとも言えるキャンプでの料理等が混在しているところが面白いわけです。

     さらに個人的な面白さで言うと、やはりキャンプでのあるあるネタ。ソミュール液についての記述、カラシ蓮根のカラシの詰め方(これ読んでやっと解決した!)。
     そして最近はスペイン・ポルトガル料理・・・イタリア料理~南仏にかけてとイベリア半島の料理がマイブームだったこともあって、檀さんがイベリア半島旅行中に執筆してる点がすごく好きです。
     あのあたりの国は同じ地中海のラテン系ということもあって色々共通点が多いけども、鉄砲伝来・イエズス会のカトリック伝来のころに日本に伝わった料理もあったり、また瀬戸内海と共通した気候のせいか我々ともよく馴染むんです。
     この本を読みながら、BSの「グランドグルメ ヨーロッパ食材紀行」という神番組をたまたま観てたんですが、南仏のブイヤベースって日本で言うとホゴ汁や無塩汁、また南蛮漬の由来はエスカベシュだったり。。
     そう、料理をしてて何が面白いか?料理が上手い人と下手な人の違いはどこか?というと、「法則性を見出せるかどうか」なんじゃないかなと。その点では料理も科学でありますが、化学の世界ではCookbook chemistryはしちゃいけないとよく言われます。つまり実験書のレシピをただ実行して再現するだけで、肝心の理論について何も理解してないのはアカンということですが、料理を好きな人は「料理の法則性」に気付いてると思うんです。例えば、中華料理ならネギ・ショウガ・ニンニクが基本だ、とか。
     創作料理もこの法則性に気付いてなければできないし、またこれを理解して何回か経験してみれば、分量は「大さじ○○」と厳密じゃなくても良いわけです。

     もうひとつ、料理教室というのは先生が生徒に教えますが、教育のむずかしさというのはどうやったら易しく教えられるか、というところに尽きます。
     先に書いた、この本での生徒は各家庭の奥さん達。檀さんが料理のハードル、敷居を下げよう下げようと努めているのがひしひしと伝わってきます。分量を細かく書かないのもそうだし、繰り返し言われる言葉は「愉快」「面白い」「楽しい」などなど。そういうところは本当に大事、この本は教育書としても大事なポイントを外していません。

  • 私のレシピ本のNo. 1はこの本。
    カツオのタタキ、丸鍋(ドジョウ)、豚マメ豚肝のスペイン風、ソーメン(薬味色々)、各種の鍋、ポルトガル人に一番評判が良かったらしいダイコン酢、朝鮮料理、ブイヤベース、干ダラコロッケ、パエリア、ビーフシチュー。
    当たり前だけど、文章が良いのです。
    母も好きな本。

  • 写真もなければ、分量すら書かれていない。なのに、とても好きな料理本。試行錯誤の余地は、果てしなく広く残されている。それが食べたことのない異国の料理なら、なおのこと。

  • 料理エッセイを読むなら押さえておかなくてはいけない作品のようだ。
    昭和44年(1969)〜昭和46年(1971)、週一で産経新聞に連載されていたという事で、なんと今から50年以上前!
    しかし、目次に並ぶ料理に古さを感じない。
    時代的には、プロの料理人の世界に女性が入ることは許されず、家庭では「男子厨房に入るべからず」などと言って男は上げ膳据え膳で威張っていた頃?

    檀氏の料理歴は長く、9歳の時に母が家を出てしまったことから、教師を務める父親と三人の妹のために食事を作り始めたことがきっかけだったという。
    きっかけはあったかもしれないが、せっかく食べるなら美味しいものを食べたい、手に入らないのであれば自分でなんとかしたい、そういった食べること好きの結晶がこの作品なのかもしれない。
    文章は豪快である。
    「猛烈な火で炒めつけながら」「惜しげもなく赤ブドウ酒をブチかけて」「カッコよく盛り並べ」
    男の料理。
    諸外国に赴いては現地の人々に料理を教わったり。
    その一方で、日本の伝統料理をも紹介している。
    「きれいなところだけを使う」という、高級料亭風の料理には背を向け、その、捨てられる部分も無駄なく使う(食べる)ことにもこだわる。
    ホルモンとか、モツとか、そういった部位。
    もちろん、食に適した状態にするには丁寧な下処理が必要だ。
    こういう料理を、子供たちも喜んで食べたという。
    檀ふみさんも、この料理を食べていたのかな〜、などとふと思う。

  • 風雅かつ豪快な男の料理。
    文字だけで、ここまで想像力をかきたてられるなんて、そして楽しめるなんて、なかなかない。
    母親の出奔により、やむなく料理をすることになった経緯があるのに、手を抜かず楽しんでおり、読んでいてひきこまれる。
    興味の幅も広く、各国の料理を取り入れており、昭和44年に連載していた内容なのに、当時としてはハイカラな食材も登場する。
    食通ぶってなく、なのに
    “梅干しだの、ラッキョウだの、何だか、むずかしい、七めんどうくさい、神々しい、神がかりでなくっちゃとてもできそうにない、とうようなことを勿体ぶって申し述べる先生方のいうことを一切聞くな。壇のいうことを聞け。”
    なんて言ってしまうところも面白い。
    モツやどじょうなど、ハードルの高そうな料理も多いけれど、それでも試してみたいと思わせられるのはさすが。
    毎年食べているはずのおそうめんでさえ、色彩鮮やかでおいしそう。青しその千枚漬けと柿の葉すしは、ぜひつくってみたい。

  • 母の本棚にあって、実家に行くたびに
    ちょいちょい読ませてもらっていたのだが、
    あまりにも面白いので自分でも買った本。

    言葉遣いが独特で、いちいちニヤニヤしてしまう。

    とっても美味しそうで、
    でも自分で作るとなると躊躇してしまうものが多い。
    なにせおもてなし大好きの人だから
    量が多くできるし(しかも多く作った方が美味しいようだ)、
    また結構手間ひまを厭わない方だから。

    このお料理は、作るところを横で見ていて、
    そして食べたい。

    お皿は私が洗いますぞ。

  • 食べ物系のエッセイは好きなのに、これを読んでいなかった。ずっと積んどくだったのですが、、、実に良いですね。

  • ローストビーフ美味しかったです
    レシピの食材を揃えるのが昔基準なので少し難しいかもです

  • 一切細かいレシピは書かれておらず,気取った料理がないところがいい。料理で一日をつぶす豊かな生活がうらやましい。

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著者プロフィール

1912年、山梨県生まれ。東京帝国大学経済学部在学中に処女作『此家の性格』を発表。50年『真説石川五右衛門』で直木賞受賞。最後の無頼派といわれた。文壇きっての料理通としても有名。主な著作に、律子夫人の没後に執筆した『リツコ その愛』『リツコ その死』のほか、『火宅の人』『檀流クッキング』など。1976年死去。

「2016年 『太宰と安吾』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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