赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫 し 18-9)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041004

作品紹介・あらすじ

女の子にもマケズ、ゲバルトにもマケズ、男の子いかに生くべきか。東大入試を中止に追込んだ既成秩序の崩壊と大衆社会化の中で、さまよう若者を爽やかに描き、その文体とともに青春文学の新しい原点となった四部作第一巻。芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和のハイソな若者の葛藤や迷いを清々しく書いた作品。今だとちょっと問題じゃないかと思う表現もあるが、そこも含めて時代を感じた。

  • 第61回芥川賞受賞作品。
    東大紛争の頃の高校生薫くんの物語。この頃の高校生って、たくさんのことを考えてるんだなぁ。
    わたしには難しい文学のことから進路や女の子のこと。とにかく頭んなかは常にフル回転って感じ。周囲の状況や自分への他人の評価みたいなものを冷静に見極めたり、実のところ自分は不気味な狂気を抱いていることを認めたり。まぁみんな認めたくないけどみんな抱いていると思うんだけど……そうなのよね。わたしも高校生のころ、いっぱいいっぱい考えてたと思う。トゲトゲしい気持ちもどす黒い感情ももちろんあって、なんとか自分で消化してきたんだ。高校生の頃ってたくさんのことを感じ考え答えを見いだしていく貴重な時間。そんなことを思い出した。

  • アメトーークの本好き芸人でオススメされてたので読んでみた。最近の本しか読まない自分×独特の文体という組み合わせで最初は読み進めるのに苦労したけど、ちょっとエロい話になった途端すらすらとページをめくることが出来た正直者。
    物語というよりは……なんていうんだこういうの。文学? 全く手をつけてこなかったタイプの作品なだけにジャンル分けすら出来ない悲しみ。舌噛んで死んじゃいたい。
    でも読み進めていくうちに共感を覚える文章がちらほらと出てきて。「足の親指を負傷したり受験が中止になったりしたついてないとある男子の一日」って認識が、「そんな男子と一緒になって、自分達はどう生きるべきなんだろうね」なんて事を考えさせられるようなものになってた。気付いたら薫くんと友達感覚になってたり、自然と親しみが湧いてたり。そんな作品。

  • これを忘れるなんて俺としたことが。この本芥川賞とったんだけど、その年の芥川賞選評本を図書館で見つけて読んだわけ。すげえ面白かった。みんな選考委員が「これいい!」って言ってるなかで川端康成が「私にはこの小説のよさがわからない..... 私一人だけ......歳を取ったということか」ってひたすら落ち込んでるの。まあ、それぐらい純文学としては異端なんだけど、どう異端かって言うと明るいポップソングな訳。純文学なんて暗いだけだろって思ってる人に読んで欲しいし、アマチュアの純文学ライターは、暗くすりゃいいという思い込みをなくして欲しい。

  • 高校生のころはこんなかんじだったのだろうか。ゴマすり型と居直り型と亡命型という分類や、世間の本質を高校生なりにいや的確に切り取っているあたり素敵だ。あの頃の、世界を純粋に変えなければと思う孤独な責任と、あるいは個人的な欲望や願望との葛藤。だがしかし薫ちゃんは、やるときはやるし女の子に優しい男の子なんだろうなぁ。

  • 文体に大きな特徴がある。高校生を描いた作品で、これほどリアルに忠実なのって今まで読んだことがない。もちろん高校生にしては異常に文学とかクラシック音楽に詳しいのが今っぽくはないなと思うけど、心の不安定さや幼いが故の苦悩は、まさに高校生そのもの。何だか懐かしいような、可愛いような、微笑ましいような。高校生が書いた作品ではないのが、とても不思議。

  • たった1日の間のできごとを通じ、世界はこんな風に見え方がくるくると変わり、豊かで、自分も変わっていくのだと気付かせてくれる。多感な青年の内面を鮮やかに描いたのが見事。学生運動という時代背景はありながら、この時期の青年の感受性の豊かさや心のもろさ、少女に出会ってダメになった心が氷塊していく過程が、半世紀近く前の作品とは思えないほど共感しやすい。時代や教育の影響、男女の違いについて多くの題材を提供してくれる。

  • 時代背景が「ノルウェイの森」と同じだが、主人公の性格が「ノルウェイの森」が「陰」に対してこちらは「陽」。
    文体が口語調で軽すぎで、最初、慣れないとややストレスを感じてしまう。主人公は東大受験を考えている日比谷高校生。作者も日比谷高校の卒業生。この頃は東大受験といえば日比谷高校だったらしい(1965年頃までは東大合格者数1位)。ちなみに、近年は私立高校に上位を奪われ2013年は18位にまで落ちている、というか、かなり落ちたが最近はまた挽回してきたといったほうが正確かもしれない。
    文中、ピアニストの中村 紘子が好きがということが書いてあるが、実際この小説出版後に彼女と結婚している。

  • 後輩からプレゼントされた本。

    とっても感受性が豊かすぎて、
    身体から心から溢れて暴走して壊れそうな気持ちとか、
    足の描写とか、少女との出会いからの希望のさし具合とか。こう、形容できない思春期の暴発的な激しさを感じて、苦しくも愛おしくなった。

    憎悪とか、憎しみとか、滅ぼしてやろうとか
    そういう感情って最後に感じたのはいつだろうってくらい、私には馴染みがなくて。
    そういう意味で、過激な表現と、でも一日?数時間の描写の中ですぐに許せたり、綺麗な世界を夢見たりするギャップとかが私には新鮮でたまらなかった。

  • 独特の文体はもはや古さを感じさせるが、後半のカオルが「ダメになりかける描写」はかなり秀逸。そうそう、こうやって世界にバーッと暗い靄がかかって、急に孤立したりするんだ。そこから、「どう救われるか」も、僕は子供好きだし大好き。
    最後、カオルの決意はカオルと同じ十代に高橋しんの「いいひと。」を読んで抱いた僕の決意と同じだ(ぼくは、駄目なとこもあるけど、ほぼ目標に向かっていっていると思う)。
    読んで良かった。

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