戦争童話集 改版 (中公文庫 の 3-13)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 272
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041653

作品紹介・あらすじ

焼跡にはじまる青春の喪失と解放の記憶。戦後を放浪しつづける著者が、戦争の悲惨な極限に生まれえた非現実の愛とその終りを"8月15日"に集約して描く万人のための、鎮魂の童話集。

感想・レビュー・書評

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  • 一つ一つは短編。どの話も救いのない結末を迎えてしまう。こんな時代でも相手を思いやりけれどもそれは叶わない。必死に頑張ったのに報われる事のないまま終わってしまう。けれど戦争をするという事はそういう事なんだな、と。火垂るの墓の作者。

  • P179
    戦時中の一般市民の苦悩を動物を交えた童話。

  • 同じ書名でも、此方は自分に合う。昭和18年頃、動物園の動物を全て処分せよという命令が下る。ライオン、シロクマ、ヒグマ、ワニなどの猛獣に睡眠薬入りの餌をやり、それが最後の晩餐。寝ている間に首に縄を巻き付けておいて、彼らが起きたら、勝手に暴れて窒息死。長くてその間7分だったという。最後まで残ったのが象で、仕方ないので餌をやらずに餓死させることにした。死んでいくまでの描写がなんとも・・・。動物全殺命令は空襲になったら動物が暴れて危ないからという理由だったが、真の目的は別の処にあった。是非お読みいただきたい。

  • 野坂さんは「蛍の墓」のイメージが強くて、痛くて読めない気がしてた。この童話は、黒田征太郎さんとの絵本と映像でみた事があったけど、改めて文庫で読んでみると印象が変わった。

    優しいんだけど、重い。童話調でなんかかわいいとこもあるんだけど、やっぱりずんって重いお話。でもすごく大切なお話。

    声なき声をすくいあげて書かれたわたしたちが忘れちゃいけないお話。

    小学校の教科書に載せてほしい。

  • 野坂さんの事、以前にマスコミに登場された印象で判断してました。全く不見識でした、反省。

  • 語り口調はとても柔らかでおとぎ話のようですが内容は胸の詰まるものばかりです。
    どれもよかったのですが、オウムの話が特に印象的でした。
    身構えなくてもすんなり読めるので多くの人に手にとってもらいたい作品です。

    著者のあとがきも作品に込められた思いが伝わってきてよかったです。

  • 次の世代にどのように戦争を伝えていくのか。童話という手段は有効なのか。読む前はそのような疑問があったが、読後は童話だから戦争の真実を伝えられないのではないとはっきり理解した。むしろこの「戦争童話集」は子どもたちに戦争の悲惨さやそのとき必死に生きようとした人達のことを強く印象づけるような童話である。

  • 最初の二篇がとてもすき 絶対にこの雄クジラはしあわせだった 切ない目に遭うに決まっているこのタイトルで、作者はこの雄クジラを幸せにして下さる。死は救いだ、生まれ変わった雄クジラが幸せな一生を送れますよう。

  • なぜ童話にしたか。
    戦争を知らない世代の子どもたちでも読めるように、だ
    私も小学生のときにはじめて読んだ。
    あまりの衝撃に今でも内容をはっきり覚えている。
    ただただ悲惨、ほんとうに。
    凧になったおかあさんや、戦艦に恋した鯨の話はとくにつらかった
    途中で読みたくなくなった、それでもやっぱり私たちは目をそらしてはならないのだと思う。
    震えた。
    一生忘れられないだろう童話だった

  • どのお話もあまりにも優しく、美しいがゆえに残酷です。
    こんなに優しくも悲しい物語を綴ることができる人の心が抱く癒えぬ傷跡とはどのようなものだろうと想像するだけで胸が一杯になります。
    残酷な描写が哀れを誘うのではありません。
    美しく歌い上げられた綺麗な言葉が描く一つ一つに込められた悲しみと、優しい語り口で語られる残酷な物語が胸を打ってやまないのです。
    これを読んで何度泣いたか分かりません。
    読むたびに涙誘われます。

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著者プロフィール

野坂昭如

一九三〇年(昭和五)神奈川県生まれ。親戚の養子となり神戸に育つ。四五年の空襲で養父を失い、のち、実家に引き取られる。旧制新潟高校から早稲田大学第一文学部仏文科に進むが、五七年中退。CMソング作詞家、放送作家などさまざまな職を経て、六三年「エロ事師たち」で作家デビュー。六八年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞を、九七年『同心円』で吉川英治文学賞を、二〇〇二年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞。そのほか『骨餓身峠死人葛』『戦争童話集』『一九四五・夏・神戸』など多くの著書がある。二〇一〇年(平成二十七)死去。

「2020年 『「終戦日記」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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