再読。
伏して時機を待つ回。国と国とがぶつかるような派手さはないものの、やがて来ると信じた時機をつかめるように、各勢力が様々な動きを見せる。この巻で初めて描かれた羅旋の姿は笑うところ。戦中ではないにしてもしれっと何をしているのか。
大牙をまつり上げて実権を取り上げようとする北方諸国、確固たる足場を得るために抗う大牙と淑夜、睨み合う衛と征、内乱に揺れる琅。各国の事情は様々ある中、事態の進展、それにあたる勢いや先々の見通しが悪くなってきたと感じるのはやはり征。国家の体制と人心をうかがえば伯要が正しいのだろうけど、国の未来を託すべき子を自らの手で、というのはやはり過酷。これが最後まで後を引くわけか。
しかし、争ったふたりの公子は普段何をしていたんだろう。何事も魚支吾が果断に牽引してきているだけに、子の存在はずいぶん影が薄い。政を補佐している様子もなければ、大牙のように戦働きをしている描写もないし、これも征が魚支吾のワンマン運営に拠っていたことの証拠なのか。
琅に腰を据える覚悟をした羅旋も見どころ。ここが羅旋ひとりの足掛かり。そこからさらに高みへ押し上げる時機はまだ来ない。