寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 中央公論新社 (2003年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041783

寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • うーん、好き。
    って、まず一言。

    小川洋子さんの小説は、現実と非現実を行き来しているような、不思議な気分にさせてくれるものが多いように思う。
    おかしな世界なのに、すぐそこにあるような。
    文章の透明度の高さも、好きであるかなり大きな一因。

    必ず何らかの“死”が絡み、様々なかたちの“弔い”が描かれた短編集。
    過去の死であったり、現在の死であったり。不慮の事故での死であったり、自然死であったり、殺人であったり。
    そしてこの短編集のおもしろいところは、時系列や順番は関係なく、どれかの物語がどれかの物語と不可思議に繋がっているところ。順番通りのものもあれば、忘れた頃にだいぶ前の物語と繋がったりもして、その繋がり方に感嘆。

    美しきシンガーに心臓を入れる鞄を依頼された鞄屋のお話「心臓の仮縫い」と、ライターが取材先のホテルに滞在中、犬を連れた不思議な中年女性に翻弄される「トマトと満月」がとくに印象に残った。
    でも、全部好き。
    そして、冒頭の感想に戻る。笑

    こういう文章を書いてみたい。とも思う。
    静謐で美しく、浮世離れした感じ。

  • みんな静かに狂って、私も少しずつ狂っていった。

    乗り物酔いなのか、文字酔いなのか、奇妙さからの目眩なのか、頭がぐるぐるぐるぐるして、もうなんだかわからなかったけど、頁を捲るたびに私の中で何かが擦り減っていって、同時に何かが膨れていった。すごいな、と思う。言葉でこんなに冷たい気持ちにさせられるなんて。ぐちゃぐちゃにしてぽいっと突き放された感じ。でも、全然嫌じゃない。

  • 題名がいいな~と思って手に取りました。
    しりとりみたいな短編集です。

    「ベンガル虎の臨終」までのお話はどれも気に入りましたが、特に「洋菓子屋の午後」、「老婆J」、「白衣」、「心臓の仮縫い」の4話が好きです。
    これは最初にこういう感じにしようと思って考えられたのでしょうか。
    お話の並びも重要だと思いますが、ちょうどいい具合に並んでいておお、そう繋がるのか、というちょっとした驚きというか発見が楽しめます。

    いくつか線を引いたり、栞を挟んだりしてぱっとめくった時に目に留めたい表現がありました。
    今まで何冊か小川さんの本を読みましたが、その中でもこの本はお気に入りになりました。
    死を描くのが上手い…というか私にあっている?作家さんだと思います。

  • 終わりがあるからこそ、いと惜しく、美しいと感じるのだろうなあ。
    と、何だか新年早々アンニュイモードに突入してしまいましたが!

    やっぱり、小川先生、大好きだー!うおおおお\(^o^)/

    と本を静かに閉じた後、ソファの上で意味もなく身悶えました、2014年の初読本でございます。
    もう何度目になるか分からない一方的なラブレターを、またしてもブクログに綴るのであります( ^ω^ )←

    密やかに形を亡くしたものと、それに対する密やかな弔いが、丁寧に、残酷に紡がれる連作短編集です。
    それぞれの話は独立しながらも少しずつ関わりあっていているのですが、そのリンクする感じがすごく控え目なのが素敵です。

    「実はこの話とあの話のキャラクタはこういう風に関わりあっているんでした〜!」な種明かしで読者を驚かせることを主眼にした作品も少なくないですし、私もそういう作品は大好物な質なのですが、小川先生の手にかかればそうはならないのですね。
    失われる物達が、視点を越え、次元を越えて多層的にクロスして行く様が深々と紡がれていく情景が、ただただ美しく、愛しくなります。


    何で毎回好き好き言ってしまうんだろう、と思ったんですが、何となく自分なりに答えらしきものを今作を読んで得たような気がします。
    小川作品には、何と無く【死】や【喪失】の香りが漂っていて、それがミステリに傾倒する私のどストライクな部分を抉るんじゃないかなあ。
    今回は死そのものをテーマにしていたから、それが際立っていたようにも感じました。
    そうなると、今度は私がどうしてこんなにミステリに傾倒しているのかという話になるんですが…うーん、そこまで考えたことはなかったなあ(笑)。

  • 短編集と言いつつ、連作小説です。
    見知った人や情景が少しずつ重なったり連なったりしながら、この時計塔のある静かな街の人々の生活や思いを描いている。

    私は連作小説が好きです。すべての話の人や景色が、どうにもほかの短編の中で見覚えがある。読み進めるうちに、その人の知らなかった過去や考えや危うさが少しずつ見えてくるドキドキ感が好き。

    すべての話に死があり、弔いがありました。その人の一部を手に入れたいと思ったり、嫉妬したり独善的だったり、過去を引きずったり自分を騙したり。そういう人の暗い部分や悲しい部分や切ない部分を、綺麗で上品で丁寧な言葉で描けてしまうのが不思議。
    お気に入りの小説になりました。

    老婆Jが好きです。最後の部分に冷やりと寒気が走りました。

  • 連日の東北地震の報道を通じて、死が圧倒的な質量でもって理解を迫ってくる中で、弔いというものについて考えていました。
    そんな時にこのタイトルを見て、不謹慎なのかもしれないなと思いつつも、恐々手にとってみました。
    一つの街に溢れる、もうこの世を去ってしまった者への弔いの連鎖。
    グロテスクなのに、美しい。小さい頃に、アザミの花のボタニカルアートを見たときの感覚がふと思い出された。
    「死」という日常の出来事であるはずのことを非日常的に描くことで、より死を感覚的に理解(したような気に)させてくる。surrealismなのかなこれは。

    弔いの方法は様々だけれど、どれも哀しいほどに生きていることを象徴する行為で・・なんとなく、自慰に似ている。
    自分の中に残る、その人についての記憶を手繰って、自分を慰める。
    そういう意味で私は「弔い」の「みだら」さを捉えます。でも「みだら」ってそもそもなんだろうね。
    なんにせよ弔いは、忘却への導入ではないんだろうな。

    それにしてもこの、読み終えたあとの落ち着かなさは何だろう。ここにいてはいけない、抜け出せなくなる、という密やかな切迫感が擦り寄ってくる。
    死の胸ぐらを掴まえて、真摯にその目を覗き込んだような作者の度胸が、怖いけれど魅力的。自分にとって「死」が遠いからなおさら。

  • 近代文学演習の課題図書。「ベンガル虎の臨終」のレポーターを担当。
    連作小説って初めて読んだと思うけど、想像以上に面白かった。ただ、伊坂幸太郎の小説も違う作品に同じ登場人物が出るらしいけど、そういうものは全然読む気が起きない。少なくとも僕の知ってるような現代小説は、読後に何も自分の中に残らないからあまり好きじゃない。

  • ファンタジーと小説のはざまにあるような雰囲気。
    が、心あたたまる、とか、すっきりする、というような読後感とは言い難い。
    読書にハートウォーミング、とか、感動とかトキメキとかを求める人には薦められない。
    (トキメキはないけど、ぎょっとする表現にドキドキ、はある。)

    隣り合った物語の中の一部がそれぞれつながっている、という構成の短編集。
    息子を亡くした母親だとか、
    親切な大家さんが殺人犯だったとか、
    亡くなった風変わりな伯父の回想とか、
    お葬式に向かう途中の電車の中での出来事とか、
    殺人事件が起こったマンションで暮らす女とか、
    必ずそこには「死」が含まれている。
    淡々とした日常の中で、ふいに顔を出したり、影にずっとひそんでいたりしながら。

    ホラーではなく、サスペンスでもミステリでもない。
    「死」というものがもつ雰囲気と、人に及ぼす影響を、小説という形で表現しようとしていると感じました。

    この人の小説は、「美しく繊細な」というような形容がつけられるけど、
    個人的には、「美しく繊細な」文章の裏に、対象をつきはなして見る図太さや凄み、覚悟みたいなものを感じますね。
    そこが好き。

  • 「死」をテーマにした11のお話が綴られている連作短編集。
    全ての物語がどこかで繋がっていて、作者に巧妙な罠を仕掛けられた感じ。

    作品全体に流れる冷たく静かな空虚感と喪失感。
    日常を描いているのに怖いぐらいに非日常的。
    不気味でグロテスクな情景描写も官能的で美しい。

    「死」という日常の中の非日常的な出来事をそのまま再現したかのような作品。
    大人のためのメルヘン。

  • 時計塔のある街を舞台とした、弔いの連作短篇集。
    背筋が寒くなるような怖さだった。

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