天文台日記 (中公文庫 い 107-1 BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 363
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043183

作品紹介・あらすじ

わたしたちがなにげなく仰ぎ見る星空に、天文学者たちは「自分の星」をもっている。ある時はそれと静かな対話を楽しみ、またある時はそれと戦う。観測の合間にかわされる会話や、天文台を訪ねる人々とのふれあい-興味深いエピソードをちりばめて、岡山天体物理観測所で副所長を勤め、星と対話を続けた著者が記す。天文台職員たちの生活をうかがい知ることができる好著。

感想・レビュー・書評

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  • 天文学者のそれぞれが「私の星」をもっていて、その星のイメージをいつも胸のなかに温めている。
    観測──この「私の星」との対話の時、つねに天文学者は孤独なのだという。己を空しくして、「私の星」の問いかけを最大限に聞く。このために彼らは工夫と努力を重ね続けるのだ。

    昭和47年6月に刊行された『天文台日記』。
    岡山天体物理観測所で副所長を務めた著者が記す数々のエピソードは、興味深い天文台職員たちの生活をうかがい知ることができる。

    時代は流れ、その頃とは観測所の役割や研究方法、人間関係など様々な事柄は変化しているに違いないけれど、夜空を廻る星たちは何ら変わることもなく、わたしたちの頭上で今夜も輝いている。古の時代からどれほどたくさんの人々が、この星空を見上げることで、孤独を癒し、己と対話し、明日への希望を夢見てきたのだろう。

    職員たちのエピソードではないけれど、〈11月11日晴〉の日記がわたしには印象に残った。
    16世紀のデンマークにチホ・ブラエ(ティコ・ブラーエ)という天文学者がいた。
    1572年11月11日の夜、彼はカシオペア座に出現した金星よりも明るく異様に輝く天体を認める。
    その「チホの星」、そしてコペンハーゲンとエルシノアの中間、細長い海峡の上に浮かぶ「ヴィーン島」に彼がつくった「ウラニボルク天文台」。それらのロマンチックな挿絵に、わたしはうっとりした。
    この時代にタイムトラベルできるのなら、絶対にその天文台で今は無き「チホの星」を眺めたい。著者の望みのひとつも、時代を遡ることができたら「ウラニボルクの主人」になることだったらしい。それほど〈天の城〉とよばれた「ウラニボルク」は魅力的なのだ。
    まあ実のところ、チホ自身はちょっと問題アリの性格だったらしいのだけどね。

    • nejidonさん
      地球っこさん♪
      ようやく昨夜アップできました。遅くなってごめんなさいね。
      もうひとつ、こんなロマンチックなレビューに変なコメントしてるこ...
      地球っこさん♪
      ようやく昨夜アップできました。遅くなってごめんなさいね。
      もうひとつ、こんなロマンチックなレビューに変なコメントしてることも、謝ります。
      2021/03/29
    • 地球っこさん
      nejidonさん、おはようございます♪

      いえいえどんなコメントでも嬉しいですよ。お知らせくださりありがとうございまーす!
      nejidonさん、おはようございます♪

      いえいえどんなコメントでも嬉しいですよ。お知らせくださりありがとうございまーす!
      2021/03/29
  • とても気さくな印象を受ける日記。天文小話も所どころ登場するので、小物語集としても楽しめる。底本からは多少時間が経過しているだけに、今よりももっと星が見えたのだろう。羨ましい。

  • いつか鴨方の天文台に行ってみたい。静かに熱苦しく美しい星々と格闘する研究者の仕事場を見てみたい。

  • 星と来訪者のやり取りが優しくて、なんだか気持ちいい

  • 現在の天文台は、電子制御の塊となり、精密測定が容易く行われているが、人の手により何事もなされた時代の記録。様々な注意事項が書かれたイロハガルタが秀逸。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA6552167X

  • 2018年5月12日紹介されました!

  • 天文台に詰める研究者兼管理人のエッセイ。

    話自体はけっこう前の、乾板を使って写真を撮っている頃のお話。天文学ファンならにやにやしてしまうようなエピソードの連続で、今も昔も変わらないものを感じて嬉しくなる。

  • ずうっと持っている数すくない本。
    開くと、静かでしんとした空気を感じます。
    どこに書いてあったかいつも忘れますが、深夜、ゆびをゆっくりとおって数をかぞえ、鼻がかゆくなったらその指で鼻をかき、眠くならないように歌をうたう。というところが好きです。

  • 新聞で渡辺潤一さんの紹介記事をよんで、表紙に惹かれて取り寄せた本。表紙のために買ったくらいの気持ちだったけれど。

    天文台での生活や観測の知識が興味深くおもしろいということはもちろんですが、所々でひと息ついて、しみじみとこの生活に思いを馳せる、そのときの文学的情緒のこもった文章がなにより心に残る。すばらしいです。
    星をみて、ひとと関わり、また自分を見つめる生活に、憧れずにはいられない。

  • 初めて読んだのは、小学校の低学年の頃でした。その時は何だか難しくてよく分からなかったけど、数十年たって何故かもう一度読みたくなり、図書館をまわって探し出して再読しました。星を相手にする暮らしが羨ましくて。石田先生の淡々とした語り口も素敵です。文庫で再版されたのを見つけ、嬉しくなりました。昔の版から、図版が何点か削られたのが残念。

  • carta「音楽家の本棚」津田さんの蔵書より。

  • 先日、中学・高校の同窓会があり、同期の友人に誘われて出席しました。
    会場で、中学校の時のクラブ(天文研究会)で一緒だった一学年下のS君と、30余年ぶりに再会しました。驚いたのは、かれとは陸上部でも一緒でしたが、特に天文クラブでは、わたしから懇切丁寧な指導を受けたことを今でもよく覚えている、と話してくれたことです。しかし、わたし自身はかれのことは覚えていたのですが、クラブでの活動についてはほとんど記憶がなく、かれに「今でもその当時の『天文年鑑』をとってある」とまで言われ、ちょっと当惑してしまいました(もちろん、悪い気はしないですが、どんな指導をしていたのかと思うと…)。
    そんな当時、わたしが夢中になって読んでいた本のなかの一冊が、この『天文台日記』です。著者は国立岡山天文台副所長を勤めていらっしゃったかたで、当時国内最大の反射望遠鏡を使った天体観測にまつわるエピソードを、季節の移り変わりにあわせて日記風にまとめたものです。わたしが手にしたのは「ちくま少年図書館」シリーズの一冊でしたが、現在は中公文庫に入っています。
    当時と比べ、観測技術も天文学の内容も大きく変わったことは想像に難くないのですが、本のなかで著者や同僚たちが夜空に天体を追いながら、天候に左右されたり、観測にまつわる地上でのさまざまな雑事にも奔走する姿が実に人間らしく、いま読み返しても感動します。
    同窓会の帰り道、友人たちと別れてわたしは、ひとり会場からほど近いところにある母校の前を久しぶりに歩きながら、「ひょっとしたら、この本を読んだ感動をクラブの同僚や後輩に語っていたのかもしれないな」と思いつつ、自宅にもどりました。途中ふと見上げた街中の明るい夜空には、木星と思しき明るい惑星が光輝いていました。。。

  • 40年余り前の天文台の活動状況を綴った1冊。天体観察に携わる人の心意気、心構えは今でも通ずるものであり、色あせることはない。

  • 岡山天体物理観測所で副所長を務めた著者の、星との対話を綴った日記。

    アヴォカドさんよりお薦めしてもらった本です。

    この画像を見てもわかるように、表紙がとっても綺麗。
    しかしこの本、もともとは筑摩書房より昭和47年に発行されたのを、中央公論新社が2004年に文庫にしたもの。
    だから、この本で書かれている「当時」は昭和40年代。私が生まれる20年も前のことなのだ。

    当たり前だが、星の観測は夜に行われる。
    夜を徹して星の観測が行われることもあるというのだから、天体に関してはさっぱりの私は驚いてしまった。
    時には、2日3日連続して徹夜することもあるという。
    しかし、それを描く石田さんの筆はあくまで穏やかで、温かく、そして真摯だ。
    1月1日の日記の始まり方からして、その雰囲気は始まっている。淡々と仕事をこなす様子にも、力まず慌てず、仕事に対する誠意と、天文台を訪れる人々とのユーモアを交えたやりとりがにじみ出ていて、何気ない日々がとても豊かなものであるように感じられた。

    星の観測をずっと続けるというのは、それこそ星が見えている間はずっと目を離さずにいるということなのか、それともデータを取っていて、数秒とか数分置きに星の動きを見るということなのか、そこらへんが少し気になる。
    実はこの本でも、科学的なことは全くわからず私はずっと「?」状態だった。
    けれど、著者の石田さんが「ラプラスの伝記を研究したい」と言って天文学科に入った(!)人であるくらいだから、星の描写や人々との交流もフィジカルで丹精な文章で綴られているので、科学的なことがわからなくても、「星を観測する仕事」の日々が覘けて楽しめた本であった。

    やっぱり星と宇宙にはロマンがあっていいな。大きすぎて、人間がちっぽけに見えてしまえるところがいい。

  • 長らく天文台に勤めてきた天文学者である著者の、星や宇宙への愛がひしひしと伝わってきて、地味だけれど温められる。

  •  岡山天体物理観測所に勤められていた石田五郎さんが、天文台の春夏秋冬を綴った本。もともと1972年に「ちくま少年図書館シリーズ」として刊行されたものですが、石田さんの格調ある文章は、青少年はもとより大人が味わうにふさわしい内容です。
     長らく国内最大だった188cm反射望遠鏡を擁する岡山の天文台。観測中の大事件小事件や、天文台ならではの四季の出来事、夜型生活の天文学者の暮らしぶりなど、観測所の人々の様子が息づかいを感じるように描かれています。

  • 天文台での毎日が書かれていて、難しい話も混ざっているけれど、興味津々になって読みました。


  • 日々繰り返される 星空との対話。
    星空に興味のある方もそうでない方にもおすすめの一冊。
    元旦から大晦日まで、天文台の一日を淡々とつづった星空エッセイ。
    のんびりと豊かな気分になれます。

  • 実際に天文台で働いていた人の日記。
    専門用語に注釈は付いていないけれど、日々どのような生活を書かれていて興味深い。毎日星を眺めて暮らしているかと思ったが、他の天文台や学者の人たちが頻繁に来るので、望遠鏡を独り占めにしている訳ではないらしい。

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著者プロフィール

一九二四年、東京生まれ。東京帝国大学理学部天文学科卒。一九四九年東京大学助手、一九六四年助教授、一九八四年教授を歴任し、同年四月退官。この間、三鷹天文台に一年、麻布狸穴の天文学教室に九年、岡山天体物理観測所に二四年を過す。一九八六年東洋大学教授に就任。一九九二年没。著書に『星の歳時記』『天文屋渡世』など。

「2019年 『星の文人 野尻抱影伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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