美味放浪記 改版 (中公文庫 た 34-6 BIBLIO)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043565

作品紹介・あらすじ

およそ咀嚼できるものならば何でも食ってしまうというのが人類の大きな特質であるが、わけても著者はその最たるもの。先入観も偏見も持たず、国内国外を問わず、著者は美味を求めて放浪し、その土地土地に根付く人々の知恵と努力を食べる。現代に生きる私たちの食生活がいかにひ弱でマンネリ化しているかを痛感させずにはおかぬ、豪毅なエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 日本はおろか世界中、様々な場所への放浪を繰り返した老ヒッピーが、先々で体験した飲食(おんじき)を旅行記風に語る。先入観に囚われず、差し出された物を素直に嚥下し、土地の酒に酔いしれる、という氏一流の「その土地への同化力」は際立っている。それにしてもここに書かれたスペインのバルには是非迷い込んでみたい。

  • 文章が良いですねえ。一段落が短くて、クリスピーで、食べ物と土地に対する愛情があふれていて。こういう骨太で乾いたエッセイが僕は大好きです。

  • 雑誌『旅』に連載された著者のエッセイをまとめた本です。

    大阪をおとずれた著者が、「ズバリ大阪らしい喰べ物は何でしょう」と地元のひとにたずねたところ、現在では大阪らしい特色ある食べ物はうしなわれつつあるという返答を得たことが、本書のなかに記されています。この文章が書かれたのは1960年ですが、それから半世紀以上を経た現在では、世界の風土と食の画一化はいっそう進んでいます。

    著者は「あとがき」で、「もとより私は、云うところの美食家でも、趣味家でもない」といい、「まったく平穏な一戸の放浪者であって、そこに人だかりがしていれば、その人だかりを覗き込み、そこに喰べたり飲んだりしている人の群れがあれば、その人の群れの中にまぎれ込み、さながら、その喧騒に埋もれるようにしながら、飲んだり、喰ったり、しているだけのことだ」と述べていますが、日本および世界のさまざまな土地に根づいた、ヴァラエティ豊かな料理の魅力が語られていて、たのしんで読むことができたように思います。

  • 檀一雄の食エッセイは大好きなのですが、たまに太宰との思い出話とかが出てきて、なんとなく感慨深いです。

    地元の気取らないものを地元の方と気取らずに食する、という姿勢が素晴らしいと思います。

  • 「檀一雄」のエッセイ集『美味放浪記』を読みました。
    「檀一雄」の作品は、4年前に読んだ『火宅の人』以来なので久しぶりですね。

    -----story-------------
    著者は美味を求めて放浪し、その土地の人々の知恵と努力を食べる。
    私達の食生活がいかにひ弱でマンネリ化しているかを痛感せずにはおかぬ剛毅な書。

    およそ咀嚼できるものならば何でも食ってしまうというのが人類の大きな特質であるが、わけても著者はその最たるもの。
    先入観も偏見も持たず、国内国外を問わず、著者は美味を求めて放浪し、その土地土地に根付く人々の知恵と努力を食べる。
    現代に生きる私たちの食生活がいかにひ弱でマンネリ化しているかを痛感させずにはおかぬ、豪毅なエッセイ集。
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    「檀一雄」が、日本全国(国内篇)、そして世界各国(海外篇)を旅して、食してきた足跡を日本交通公社が発行する雑誌『旅』に連載されたエッセイ、、、

    『国内篇』は、1965年(昭和40年)1月号から12月号、『海外篇』は、1972年(昭和47年)1月号から12月号に掲載され、両篇をあわせて1973年(昭和48年)に『美味放浪記』として刊行された作品です。

     ■国内篇
      ・黒潮の香を豪快に味わう皿鉢料理(高知)
      ・厳冬に冴える雪国の魚料理(新潟・秋田)
      ・郷愁で綴る我がふる里の味覚(北九州)
      ・中国の味を伝えるサツマ汁(南九州)
      ・日本料理・西洋料理味くらべ(大阪・神戸) ほか
     ■海外篇
      ・サフランの色と香りとパエリアと(スペイン)
      ・初鰹をサカナに飲む銘酒・ダン(ポルトガル)
      ・迷路で出合った旅の味(モロッコ)
      ・チロルで味わった山家焼(ドイツ・オーストリア)
      ・味の交響楽・スメルガスボード(北欧) ほか

    昭和40年代… この時代を実体験として知っているだけに、日本国内だけでなく、世界各国を渡り歩かれていることに、ただただ驚きましたねー 

    現代であれば、同じ料理や食材が日本にいてもほとんど入手できるんでしょうが、同じ料理であっても、現地でないと味わえないモノがあると思うんですよね… その場所の空気であったり、使われている水だったり、調理する人(手)や調理具の違い、その場所ならでは匂い等々、色んなモノが味には作用すると思います。

    そして、「檀一雄」の魅力が、本作品の隠し味になっている面もありますね… 有り余る程のエネルギーには驚かされるし、不思議な魅力を感じる人物ですよね。

  • この年代の男性にしては極めて珍しく、食べることへの執着心もさることながら、自らが料理を作ることをこよなく愛した檀一雄が、取材という名目で日本・海外の各地を巡り、現地での飲み食いや、市場に溢れる豊かな食材などを描いた紀行エッセイ集。

    出版から数十年が経っているが、日本各地の名産は当然大きく変わるものではなく、その現地が最も美味いとされる魚や肉、野菜、肉などをとにかく食らいつくしていく様は痛快であると同時に、日本の風土の豊饒さを実感できる。にしても、旅先でも自らの料理熱は変わらず、ときには飲食店の軒先を借りて自らが市場で買った魚や肉を煮炊きするなど、料理への熱情にはやはりすさまじいものがある。

  • 文章の端々から、時代を感じる。
    個人的には、国内編より、海外編の方が読んでいて楽しかった。

  • ★3.5。
    今まで読んだ食べ物関連のエッセイと違って、庶民なんです、題材が。
    当方が生まれたずっと前の話ばかりなんですが、食感というんでしょうか、イメージが付くものが多く。海外モノも然りですが、やはり国内編がとみにそうで。
    しかしまぁ、ヒトは今も昔も食なんですなぁ。

  • 美味放浪記 (中公文庫BIBLIO)

  • 今から四十年以上前に雑誌連載されたグルメエッセイ。国内編は、旅情を感じさせる記述が少なく、訪れた店の名や各地の産物などの羅列で、古いですので旅の参考になるわけでもなく、ちょっと退屈。海外編は、著者自身の過去の放浪を振り返って書かれているので、少し幅が出ています。

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著者プロフィール

1912年、山梨県生まれ。東京帝国大学経済学部在学中に処女作『此家の性格』を発表。50年『真説石川五右衛門』で直木賞受賞。最後の無頼派といわれた。文壇きっての料理通としても有名。主な著作に、律子夫人の没後に執筆した『リツコ その愛』『リツコ その死』のほか、『火宅の人』『檀流クッキング』など。1976年死去。

「2016年 『太宰と安吾』 で使われていた紹介文から引用しています。」

檀一雄の作品

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