嗤う伊右衛門 (中公文庫)

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著者 : 京極夏彦
  • 中央公論新社 (2004年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043763

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嗤う伊右衛門 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

  • おどろおどろしい四谷怪談が京極先生の手によって読後暫く放心してしまう程、美しい純愛小説に。
    四谷怪談といえば、伊右衛門は極悪非道。お岩は控えめで、夫からの理不尽な仕打ちで亡くなり怨霊となって出てくる恐い女、というのが長年のイメージでした。
    ところが、嗤う伊右衛門での二人は全くの別人となっています。
    伊右衛門とお岩は本当は愛し合っているのだけど、不器用で、気付くのが遅かった。もしくは知らないままの方が良かったのか。

    ラストの二人は美しいです。

  • 「愛されたい」

    そんなことを、ふと思ってしまう、そこのあなた!

    「恋愛ってどんなものだったけ・・・」

    恋愛が彼方のことのように感じてしまう、そこのあなた!

    「夫(妻)とは、心から通じ合っていないように感じる」

    いつも強がっちゃってる、そこのあなた!


    そんな男女に、とっておきの、おすすめ純愛小説を見つけましたよ。

    ※甘いお花畑的ポワワ~ンのお話ではありません。ハードです。

    こちらは『四谷怪談』をベースとした、美しくも悲しいお話です。
    幽霊・魑魅魍魎の類は出てきませんので、怖がりさんでもご安心をば。

    「でも、浮気した旦那への戒めの話が、なんで純愛なのよ?」

    京極夏彦の描くお岩は、昔そうとうな美人だったのに、疱瘡にかかり顔面の左半分が崩れてしまっておったという設定です。
    そんなお岩を、夫となった伊右衛門は大切に想い愛します。浮気なんてしません。
    しかし、お岩は自分の顔に引け目を感じ、気位の高いこともあって夫の愛を素直に受け入れることが難しく、話しもしないことからすれ違いを起こしてしまいます。
    不器用な二人にハラハラするー!
    そして、残酷な悲劇が待ち受けています。

    「うらめしや伊右衛門殿」

    有名なこのセリフも、お岩の伊右衛門に対する愛情から出た言葉として描かれており、切なくも狂おしい背景に胸が締め付けられます。

    娯楽作品でありながら、愛のあり方・人間の悲しさを散りばめられたストーリーで、広く深い味わいがあります。

    そこのあなた、日々の雑事にかまけて『愛』を忘れちゃっていませんか?

    「あなただって、本当は愛されたいでしょ?真実に気づいて幸せにおなり❤」

    ラスト、お岩も伊右衛門も、そう言っていることでしょう。


    第25回(1997年)泉鏡花文学賞受賞作。
    この本は『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚(中島 克治)』のお勧めブックリストに掲載されていました。

  • 四谷怪談の話は、片顔崩れたお岩さんが怨霊となり、
    恨んだ相手を呪い殺す、くらいのことしか知らなかったけど、
    お岩さんの夫、伊右衛門を中心にした新解釈のお話し。

    岩の気高さ、頑固さ、聡明さが描かれていて、怪談話ではなく
    歴史小説として読んだ。
    ぶ厚いけど、文体のテンポがいいのでどんどん読める。

    喜兵衛の悪徳っぷりが徹底している。
    又市のキャラが好き。
    一番怖いのは、梅。
    最後はぞっとするけど、純愛にも感じる。

  • 読んでいて苦しかった。
    わかったことは妖怪や幽霊などよりもよっぽど人間の方が恐いということ。
    うまくいかずに自分のいいように捉え隠し明るく生きてみても、綻んだ瞬間の雪崩のような出来事にただただ、恐怖を感じる。
    小さなすれ違いから大きな誤解を生み、でもそれを埋めるにはそもそもの環境が違うわけで、解決方法さえわからずにいる…
    人間ってやはり複雑だなぁ、と。

    この小説、私は嫌いでした。
    ジワジワくる嫌悪感を持ちつつ、ただひたすら終わるのを待つだけ。
    でもやっぱり圧倒的なパワーがあって、読んでいて辛いのに途中で放り出すことはできないもどかしさ。
    また10年後読んでみたら違う感想が出てくるのだろうか。
    こんなにも嫌なのに間違いなく印象に残る一冊です。

  • 11月の9冊目。今年の195冊目。

    『しゃばけ』に続き、時代物を読みました。面白かったですね。ただ、残念なことに私の知識不足のせいで、いまいち建物や道具などがうまく頭の中でイメージできないですね。もともと『四谷怪談』という話が元ネタにあるらしいですが、それとは全然違うっていう話ですね。まぁ元ネタはこれを読むまで知らなかったし、内容もかじった程度なので、全然わかりませんがね。ただ、それでもこの本はそれ自体面白い。何が面白いって訊かれると難しい。色々後から来る感じですね。じわーっと。

  • 高田衛さんの解説により、又さんが四谷雑談集生まれと初めて知る…。
    こうなったらそちらも読んでみなきゃって読みやすいのあるかな。

  • 1回読み終わってすぐに読み直したのは久しぶりだ。

    1回読んだだけでは理解できなかったところがいくつかあったのと、「もっと奥深いはず」と思ったから、2回読んだ。 2回目のほうが面白かった。面白いというか涙が出そうになった。

    まずは使われている言葉が凄くいい。江戸時代に本当に使われていた言葉なんだろうか、それとも作者の作った言葉なんだろうか。適切に言葉や文言が選んであり、この物語の雰囲気を作り出し、内容をぐっとよくしている。

    また、私の苦手な登場人物が多いパターンで、梅と袖や、直助と又市なんて1回読んだだけでは理解ができなかったが、2回読むことでやっとそれらの関係がわかるようになった。

    2回読んでもまだ良くわからない箇所がいくつかあった。もしかしたらこれがつながってくると、もっと楽しめるのかなぁ。

    ・母親の存在
     針売りの母親の話と、確か最後に伊右門が「母が恋しいか?」と言うが関連ある?

    ・結局岩があのような顔になったのは誰のせい
     わざとぼかしてあるのかな。最後に又市が伝えようとしたことから想像するのでOK?

    ・蚊帳
     うーん。かなり重要なものだったと思うんだけどな。結界みたいなイメージで良いのかな。

    ・木が水を吸い上げる音  これも良くわかんなかったんだよね。その不気味さがいったいどこにかかってくるのだろう。
      京極氏の本は分厚いのに挑戦したいのだが、なかなか踏み切れなくて。でもこんなに面白いんなら近々別のも挑戦してみるかな。

  • 四谷怪談のお岩さんの話。でも全然幽霊の怖さはない。
    歪んだ人たちの中で、岩と伊右衛門が本当にかっこよく見える。
    京極夏彦で今のところ一番薦めたい本。

  • 疱瘡を病み、顔崩れても凛として正しさを失わない女・岩と、生まれてこのかた一度も笑ったことのない侍・伊右衛門。
    京極夏彦版「四谷怪談」!

    それぞれがそれぞれに生きにくさを抱えていて、それをどうにかしたいと思いつつも、どうにかするだけの上手い方法も、かといって全く見てみぬふりも出来ず。ただこの辛さをどうにかしたいのに、どうにもすることができずにいることの、この不器用さ。
    ここのところを、鈍感になれないがために苦悩し、しかし誇りがあるがゆえに誰にも甘えられないというのが、この京極版のお岩さんである。彼女の造詣が素晴らしい。私は本家の四谷怪談の話をほとんど知らないのであるが、これが画期的なお岩さん像であることは想像がつく。
    この誇り高い岩と伊右衛門が出会うことによって、物語は進んでいくのだけれど、しかし二人が出会ってもそう事は上手く進まない。むしろ、もどかしく、ままならない展開ばかりで、生きることに拙い二人に胸が痛くなるばかりである。
    正直であること、正しくありたいと願うことは、口で言うのは簡単だけれど、実際の生活レベルで実践しようとするならば、よっぽど恵まれた環境と恵まれた偶然がなければ自分が傷ついていくばかりなのかもしれないなぁ、と思うと少々切なすぎる。
    そういう意味では、この伊右衛門と岩にはもっと「あざとさ」が必要だったのだろうと思う。

    というわけで、書かれている内容はとても身に染みたのであるが、そのくせ私の評価は☆三つ。
    なぜかというと、どうも私は京極氏の文章が読みにくくてしょうがないのです・・・肌に合わないといいうか。『姑獲鳥の夏』も、読んでいる間は結構辛かったしなぁ。それと、京極さんの本は文章がページを跨がない、ということなので、ページごとにそのことを「ほんとかな?」と確認してしまうんだよね(笑)。それで読んでいる間も、気がそれてしまうというか。
    あ、この文庫でも本当に一ページも文章がページを跨いでいるところはありませんでした。凄いけど、そこにそれだけ労力を使う必要があるのかと、ちょっと疑問。

  • 怪談というより、人間の情念。岩が魅力的。

  • 第25回泉鏡花文学賞受賞作品。
    四谷怪談のお岩と伊右衛門だと思って読んでいたら、予想外の展開、予想外の登場人物設定に非常に引き込まれました。ところどころ涙する場面もあり、最後は涙が頬を流れて本を閉じるという形になりました。お岩と伊右衛門の間の愛情は非常に深かったです。

    お岩という女性を通して、当時の女性というものがどういう立場なのか、妻とはどういう立場のものなのかということがよくわかりました。

    生きている間に出会うたくさんの人の中に、自分を大切に思ってくれる人がいる。しかし、素直にその気持ちを伝えられなかったり、受け入れられなかったり…。出会いが生む切なさから「愛」という感情を知るのかもしれません。

  • 四谷怪談を基に作られている話。

    お岩の考えは割と現代人の発想に近い。
    ただ、時代は江戸なので受け入れられない。

    でも、最後まで読んで思ったのは、これは間違いなく恋愛小説。
    少なくとも怪談話ではない。
    もちろん良い意味で。

  • 1度読んだだけでは何が起こったのか把握しきれず、 http://bindumekocho.fc2web.com/Iemon/iemon.html を読んで初めて真相が分かった。分かって読み直すと怖いこと…切ないラストがまた良い。

  • 鶴屋南北の『東海道四谷怪談』を参考に…ではなくその元ネタの『四ツ谷雑談集』…すらもただの関連文献。それらと同列という位置付けで書かれた作品らしい。お化けは出てこず、武家社会に生きる人々の苦悩や儚さが印象に残った。

    お岩伝説ったら四谷怪談しか知らないので、伊右衛門が人格者として登場するのに最初戸惑う。お岩も芯から強い。御行又市は雑談集にしか出てこない人物のようで、特異な存在感があった。

    お化けが出ようが出まいが、お岩伝説はとにかく人の執着心が怖い。お岩の乱心も伊右衛門が最後に選んだ道も、純愛といえば聞こえは良いけど、結局みんな執着という業の輪の内なんだなぁと思った。

  • あれっ?四谷怪談ってこんな話だったっけ?ということで読み終えてあらすじを調べてみたら人物設定も違ってた(笑)
    救いのないストーリーではありながら、ラストが四谷怪談では望まぬ死であった伊右衛門が本作では望んだ死であったり、お岩が伊右衛門のために身を引いたりと伊右衛門とお岩が相思相愛という逆説的なストーリー。

  • 登場人物みな、それぞれに哀しい。
    自分が抱えた暗闇に飲み込まれてしまった人々ばかり。
    グロテスクで救いが無く、切なくて痛い。
    その姿が胸に刺さるのは、誰の中にも、自分の中にも彼らが持っていたような暗闇があるからなのでしょう。
    あまりにも痛くて、「大好き!」とは言い切れないから☆4つ。
    ですがインパクトと心に残る度合では☆5つです。
    http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-entry-141.html

  • エンジンがかかるのが遅くて、最初の方が読みづらかった。もう少し伊右衛門と岩にスポットを当てて欲しかったように思う。伊右衛門がそこまで岩を愛した理由がよく分からなかったけれど、あえてぼかしているのだろうか。

  • 四谷怪談が元となったお話ですね。
    正直最初は物語の流れが掴めなく、ただただぼんやりと眺めているだけでしたが中盤からは食い入るように文章を追っていました。やっぱり人間って妖怪や幽霊なんかよりもずっと恐ろしい存在だな。どんなに幽霊を恐れたって、居るのか居ないのかもわからないそんなあやふやな存在を作り出してしまった元は人間にあるんだから。
    最後の終わり方は嫌いじゃありません。むしろそれでよかったと思います。お岩の顔が醜いとしても、伊右衛門からしたら最愛の妻。世間がどんな噂をしようと、二人はあれで幸せだったのでしょう。

  • かなりぐったりとくるお話。各登場人物の思考がぶっとびすぎてついていくのが大変。

    クライマックスの迫力はさすが。

  • 狂おしい程純度の高い恋愛小説

  • ゾッとするほど美しい愛の物語。
    有名な四谷怪談の登場人物や時代背景をベースとしていながら、ストーリーは違います。

    江戸時代の話ですが、愛や欲や憎悪など、
    共感できる点は山ほど。
    正しく生きていても、時代の流れの中でどうしようもない不運に見舞われてしまうこともある。

    伊右衛門が格好いいのは勿論、
    醜女と称されるお岩の見た目も美しく思えてしまう…
    そして胡散臭い設定だけど現実をしっかり見据える又市がツボでした。


    自分の心情など自分にしかわからない。
    知らなければいいこともある。


    グロテスクでありながらも、伊右衛門とお岩の愛はとても美しかった。



    カバーと高田衛さんの解説もいいです!

  • 中学三年の時に読書感想文を書きました。本家四谷怪談とは細部がかなり異なり、ホラーというよりはグロテスクです。

  • 四谷怪談だと思ってスルーしていたのですが、twitterで良い話らしいと聞きつけポチッ。
    なんなんだろうな、この切なさやるせなさと来たら・・・
    哀しいけど、この結果しかない、というかこれで良かったのだと思う。
    又市が出てきてビックリ。又市がいながら、なんでこんな後手後手なんだ、なんて思ったり。巷説百物語の口八丁ぶりはどうした??
    というか、又市さんはこれが初出なのですかね?まさか原作付とは。

  • 今までお岩さんの怪談の話を読んだ人は多いかと思いますが、これほどまでに後味の悪い「お岩の祟り」があったでしょうか。
    まだ若かりし頃の又市の”仕事”にも注目です。

  • 四谷怪談のお岩も伊右衛門も相思相愛なのに相手を思いやるばかりにすれ違い、ボタンの掛け違いで悲しい境遇に巻き込まれていき、取り返しがつかなくなってしまう。純愛で悲しい話となっている。ちょっと二人の恋愛が歯がゆいが、一気に楽しく読める。

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