言葉の箱: 小説を書くということ (中公文庫 つ 3-19)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 79
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044081

作品紹介・あらすじ

小説を書く根拠、目的、方法について、様々な例を挙げながら、生き生きした口調でわかりやすく語りかける。自身が担い続けてきた使命や文学の未来について、熱く説く様は次世代への遺言ともいえる稀有な作品。『小説への序章』にはじまり、『情緒論の試み』を経て「小説とは何か」という問いに対する最終的解答ともなっている。

感想・レビュー・書評

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  • これはぼくだけしか見られない、ぼくだけが見ている、ぼくの世界で、ぼくが死んでしまうと、だれもそのなかに入って知ることはできない。だから、この世界をだれかほかの人に伝えるためには、その感じ方、色彩、雰囲気を正確に書かないと、ぼくが死んでしまったら、もうこの地上から消えてしまう。       作者の、切実な、印象的なフレーズ。
    ……ついでながら、私が、辻邦生氏の作品の中で、一番好きなのは、短編、 献身 です。アルチュール.ランボオの生涯と彼の妹の、ランボオへの献身 をえがいた、ランボオの独白がすごい迫力で読んでいると、ゾクゾクして、くらくら感動します。…シャルトル幻想 という本の中に入っていて、 この作品だけノートに書きうつして、生きるのにつらい時、読み返しています。生きろ!という気持ちになる。
                      

    • りまのさん
      ときどき、読見返しています。このノートが、心の支えの一つになっています。
      ときどき、読見返しています。このノートが、心の支えの一つになっています。
      2020/09/15
  • 著者が、小説を書くことを志す人びとに向けておこなった講義を収録しています。

    著者は小説とはなにかという問いに対して、「フィクションによってつくられた架空の事柄を言葉によって構築し、「言葉の箱」のなかにそういうものを詰め込むという作業」だとこたえています。そのうえで、著者は夏目漱石の「文学論」における「凡そ文学的内容の形式は(F+f)なることを要す」という考えを参照し、近代以降のロマン(小説)における内面性を重視する立場から、小説のありかたについて議論がなされています。

    本書の冒頭で、著者はアメリカの大学では創作科が存在するということに触れていますが、本書はシナリオ・ライターを養成するための教程で説明されるような内容ではなく、大文字の「文学」をめざすひとに向けた内容のように感じました。ただ、そのような「文学」の理念が現代において成立するのかと問いなおすことも、必要であるように思います。

  • とても読みやすい。かつて小説を書くことに対して、これほど熱意あるメッセージを伝えられる方がいた事を知れただけでも感謝。

  • 「小説の書き方教えます」といった本は
    スティーヴン・キングの「小説作法」しか読んだことがない。
    だが当時、マジメに小説を書く気などさらさらなかったので
    内容が記憶にない。

    だが最近、職業作家の方々がなぜこんなに次々と
    小説を書き続けることができるのか知りたくなったので
    数ある中から辻邦生氏のこの本を選んでみた。

    創作学校での講義をまとめたものだが
    小説のベーシックな部分が丁寧に語られていて
    実にわかりやすい。

    辻夫人によると、辻氏にとっての小説との関わりは
    自ら書くこと、そして小説とは何かを探索すること
    であったと言う。
    とにかく「いつでも書いていた」そうだ。

    それが、職業作家が小説を書き続けることができる理由だ。
    それは特別なgiftであって
    欲しがって得られるものではない、だろうな。やっぱり。

  • 「ぼくの見ているセーヌなんだ、ぼくの見ているノートル・ダムなんだ、ぼくの見ているルーヴルなんだ」というのはまさに! と膝を打って、視界が開けました。同じ理屈で、みんな一生に一度くらい小説を書いたら良いと思うし、読ませていただきたいと思う。書くことが、改めて喜びになり、書き続けることを励ましてもらえる本でした。

  • 「小説における記述は現実に所属していない。われわれの夢想、想像力、内面の世界のみ結びついて、それを外に表すものだということを、まず考えてください。」

  • 大学時代に、図書館に行ってなんとなく借りてみた本。

    借りた理由はただ文庫本で、字が他の本よりも大きくて、読みやすそうだな、という理由。
    それだけ。別に小説を書きたいから、とかそういうのじゃない。
    でもなんだか読んでると不思議と自分がボーッとしながら考えていたことが小説を書く上では大切なんだなって事に気付いた気がする。なんだか読んでいると気分がフワっと安心する感じ。
    あぁ小説家ってこんな風に考えてるんだ、こういう考え方っていいな、とかいろいろ。
    小説を作るために心のなかで色々と考えるのって、良いな、って素直に思った。
    そんな本でした。

  • この作品は電子ブックで読んだものである。著者の作法や小説に向かう態度がまざまざと語られており、楽しめたし、役に立った作品であった。

  • 07051
    03/01

  • 文章を書くとはどういくことななのか、そもそも小説とは何なのかを記した本。小説家を目指している人は一度は読むべき。自分が書いているものは何なのか、と考えさせられる。

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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