スカイ・クロラ (中公文庫)

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著者 : 森博嗣
  • 中央公論新社 (2004年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044289

スカイ・クロラ (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 5月に入って晴れの日が続いて、きれいな青空を見ているとなんだか無性に読みたくなった。以前断片的に見た映画の記憶が、晴れた空の映像が多いものとして頭に残っているからだと思う。
    私は小説を読むときはいつも頭の中にそのシーンが映像で浮かぶのだけれど、このスカイ・クロラはどこを読んでいても、浮かんでくるのは青空だった。先入観と映画の情報があって全く初めて読むとは言えないから、まっさらな状態で浮かんだものではないけれど。そんな青い空の下を飛ぶのは戦闘機で、キルドレと呼ばれる戦死でしか死ぬことのない年をとらない子供たちが戦争をしている。私は飛行機にも戦闘機にも全く明るくないんだけれど、何となくコックピットからの眺めが頭に浮かぶ。描写が詳しくて、寝る前に読むと夢うつつな中で空を飛んでいたりする。読んでいると、飛びたくなる。戦争とは、かなしいもの、なのかもしれないけれど、そんな一言で表すことができるわけないけれど、この物語の中には、戦争に生きる意味を、術を見出している人間がいる。そして戦っていない者でも、何も荷担していないとは言えない、そういう世界なのだ、戦争が起こる世の中とは。そんなことが描かれていた。晴れた空の下に広がる物語は、美しく、どこか寂しかった。

  • 死を内包した物語。

    飛行機は、そもそも死を内包した乗り物である。
    それが戦闘機とくれば、死はますますあからさまになる。
    その飛行機乗りとして子どもを乗せる。
    それがスカイ・クロラの物語の世界である。

    空のシーンとした静けさを感じさせるような文章。
    淡々とかすな息遣いで語られる物語。

    主人公の僕“カンナミ”は草薙水素という女性の上司のもとに赴任する。
    ともに大人になるのを拒否したキルドレ。
    出会いから、恋愛めいた空気がかすかにたちこめる。
    しかし、それは、実は。
    僕は優秀なパイロット。
    注意深く、手順を踏まえて、敵を撃つ。

    物語は飛行シーンと地上シーンとで
    異なる空気感を醸す。
    飛行シーンは精密なマシーンのようにマニアックで静謐な孤独。
    地上シーンは人との関わりの中での孤独。

    キルドレは孤独。
    コクピットも孤独。
    群衆も孤独。

    「理解しようとするほど、遠くなる。
    どうしてかっていうと、理解されることが、僕らは嫌なんだ」

    「死にたいと思ったことがある?」
    「だから、しょっちゅう」

    「電話のベルが鳴ったり、止んだりするみたいなものなんだ」

    「鳴りっぱなしじゃ煩いし、鳴らなかったら、
     電話がどこにあるのか、みんな忘れてしまう」

    そして、キルドレのもう一つの志向は死。

    物語はラストへ静かに加速する。
    フルスロットルで上昇する飛行機のように。

    森博嗣の小説は理科系ミステリーという
    新境地を拓いた。

    理科系の段階的思考を果てしなく積み重ねて。
    あるいは仮説の構築をいくつも繰り返して。
    それらは頭脳の中で。
    そして、熱の少ない、静かな文章を紡ぐ。
    ラストまで一気に。

    静けさ。科学の果てのリリカル。
    それは宇宙飛行士が地球上に戻って見る
    宗教的境地にも似ている。

    このスカイ・クロラは
    空を飛ぶ物語。
    その文章はリリカルで地表を離れて浮遊している。

    カンナミは空を飛んで
    敵を撃ち落とし
    仲間とかすかに触れ合い
    草薙という上司と対峙する。
    永遠は一瞬。
    永遠に大人にならないこと。
    永遠は死。
    大人にならない子どもは
    だから、空を飛ぶ。

  • 『スカイ・クロラ』再読3回目
    JKになってお小遣いアップした記念(?)で大人買いしたシリーズ。
    つぅ…とした感じで起伏があまりないストーリーが相変わらず心地よかった。
    確たる自己を持っていないのに周囲に合わせない主人公に魅力を感じてしまい読むにつれこんな人になりたいと毎度思う。2017.7.26

  • 映画があったなー、くらいしか知らなかったのですがふとしたきっかけで読もうと思いました。
    なんですかこの世界観は。詳細に説明されるわけではないけれど、徐々に明らかになっていく状況と、真実と、一緒にほぐされていく物語。死ぬってなんだろう、と考えさせられる一冊です。

  • クールを通り越して空虚な少年少女がすがすがしく格好良かった。途切れ途切れで改行で空白の多い文章も良い。こういうのが鼻につく人もいるのも分かるけど、この軽さは無理やり引き伸ばしたからではないと思う。

  • 退屈を凌ぐことが、生きること。
    大人にならない、年をとらないキルドレにとって、生きることと死ぬことは、いることといないこととも捉えることができる。
    死なないことを願う人もいるが、死ねない時には、死ぬことを願うのだろうか。
    昔読んだ本で、死にたくないという感情を持つ時は、何かやり残したことがある時って書いてあった。
    キルドレにとって、飛行機に乗ることも、相手を撃ち落とすことも、ハンバーガーを食べることも、お酒を飲むことも、いつか撃ち落とされるのを待つ間の退屈しのぎでしかないのであれば、死にたいって思う感情は抱き得るのではないか。

  • 映画を見てから前情報なしで読んだので結末が違うことにびっくり。考察サイト等を読むと作品に込めた思いが原作・映画で違うのではないかというものがあり納得。
    説明過多の時代にぼんやりとした設定を用意しつつ深い入りしない点が非常に新鮮であった。
    映画は基本的に原作に忠実であるが何点か相違点がありそういったところを追いながら読むのもまた楽しかった。
    森博嗣の文体やキャラクタは気取った感じがしてそれほど好きじゃないところもあるが、かっこいいなって思わされてしまう妙がある。

  • 何気にこのシリーズだけは読んでいませんでした。買ってから2年ぐらい寝かしてたかな。
    独特の世界観がなのに、スッと理解できるのが面白い。アニメ版の表紙の方を買ってしまったので、青い表紙の方をもう1冊買うか悩み中。

  • 結局物語のテーマを掴みきれずに読み終わった。テーマが全くないというわけではなく、読み手によってそれは違ってくるだろうということ。しかし、たとえ何かしらのテーマを見つけ出したとしても、それを解釈していくのは相当の労力を必要とするだろう。「難しい」とはまた違う感じ。なんだろう。矛盾しているかもしれないが、透明すぎて(眩しすぎて)かえって「見えない」。僕の表現力だとこう表すのが限界だ。

  • 【よく使う言葉だけどこれは終わりの始まり】

    理解しようとすれば、儘撃ち落される。この物語を楽しむコツは風を読んで上手くその風に乗ることだ。

    ひらひら開いては閉じて。
    上と下はなくなって、ただ白いだけの空と、ただ暗いだけの空の間で踊るのは、ワルツ。

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