マレー蘭印紀行 (中公文庫)

  • 241人登録
  • 3.72評価
    • (22)
    • (16)
    • (29)
    • (7)
    • (0)
  • 28レビュー
著者 : 金子光晴
  • 中央公論新社 (2004年11月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044487

マレー蘭印紀行 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 作者45歳の時の作品。

    その8年前、欧州から帰国の際に立ち寄ったマレー半島の風物。
    次第に戦争の色合いが濃くなる中、海外植民地で働き暮らす日本人、中国人、土地の人々の模様。

    70歳代半ばで書かれた東南アジア・欧州3部作に較べると、暗く重たい。

  • 在インドネシア中に読了。風景が美しい詩のように描写され、なかなかページが進まない。何度も読み返す。いくつかの旅に持っていったが、やっと読み終えた。

  • なんだろう。この引き込まれる感じ。読んでいるうちにタイムトリップして、自分まで現地にいるような錯覚を覚えた。

  • まず、本の表紙が素晴らしい。そして、期待に違わず金子氏の散文は詩でもあるような印象を持った。熱帯地方の生ぬるい、じめじめした大気が體にまとわりついてきそうだ。泥河から沸き立つ、人間の糞尿やナッパ椰子の腐った饐えたような臭いにも搦めとられそうだ。森千代との旅なのだが、そのとき彼女には別の男がいたのだ。金子氏はどのような気持ちで旅を続けたのであろうか。とても辛い旅であったのかも知れない。

  • 本当に詩人だったんだ、この人・・・。
    「三部作」と比較すると、動きのない話なだけに
    本領発揮!です。これはもう散文詩です。

    梅雨明けのヤケクソのよーなピーカン天気の下、
    日よけシェードのなくなった京浜東北線で
    ダラダラ読むにはこの上ない選択でしたね、全く。

    噎せ返る熱気。澱んだ空気。倦んだ街。爛れた世界。
    虫は出る。食べ物は腐る。街はぬかるむ。
    ただ生きているだけで、未来も希望もない自由・・・・
    ちょこっとだけ羨ましい。

  • どこを切り取っても詩のよう。いきものの命のあかるさと暗さ。
    自分の感情とか当時の状況(妻と浮気相手を引き離そうとしてお金全然ないのに旅に出るなどの。)より景色やそこに暮らす人たちの描写が多いなか、屋台で食べたお粥の中に烏賊の子を見つけて日本に置いてきた子供を思い出すシーンがあって、そこにしか出てこない事で強く印象に残った。
    マレーシア旅行の予習にと読んだもの。
    スコールやそれで木々が光る様子とか、80年以上経ってるけど変わらないと思う。はやく行きたいなぁ。

  • マレーシア・シンガポール・インドネシア。現代の区分けだとこうだが、まだそうではなかったころ。

    南洋の風土が、数百年の華僑の侵食を経て、帝国主義に蹂躙、腑分けされる。

    島原の女性たちの足跡もあり。

    物悲しくも色とりどりで美しい描写。褪せないはずだが、今からは想像するしかない。

  • マレーシアは11月のクアラルンプールのホテルで読了。
    言葉の力に驚いた。
    マレーシアの雨季のじめついた気候、スコール、植物、時間の流れ方・・・描写があまりに正確。その描写のいちいちに感動。
    実際に来てみて初めて確認できたが、実際に旅をしなくても、本を読むことで旅を経験できるのだと思った。

  • 現在、アジアを中心に旅行記を執筆する様々な作家に影響を与えた作品。昭和3〜7年、シンガポール、マレー半島、ジャワ、スマトラでの体験が詩人ならではの描写で綴られている。数多の旅行記にはない魅力溢れる書である。

  • 「狩られ、蹂躙され、抽出され、亡ぼされてゆく命たちの挽歌なのだ。耳をそばだてよ。きこえるものは船側に流れてゆく海水のひびきだけだというのか。」
    シンガポールからジャワへ向かう旅の刹那、著者は船べりに立ち「南の海の夜の悲しい性格」を思う。
    南方の自然は「明るくても、軽くても、ときには洗料のように色鮮やかでも」それは「嘘」で、繁茂する木々、驟雨、河の臭気、海、その一つ一つがひたすらな哀しみでもって著者に迫る。

    しかしそのことは、必ずしも本書がペシミズム一辺倒に傾いでいることを意味しない。
    落魄した日本人居留民や「土民」、果ては射ち落された蝙蝠まで、虐げられた者たちへの著者の視線は、限りなく温かい。
    「私は、藤の腕椅子に黙りこくって沈み込んでいた。この社会がいかなる形をとって変化しても、人と人とのあいだの冷淡を狩りつくすことはできない。信じられるものがなにもないということが、私に、ほどけ口のない悲しみの種となっていた」

    この眼差しあればこそ、本書はハイカラな南方旅行の道中記でも、
    著者の寂寥感や苦悶を風景に託して書きつける一種の私小説でもなく、
    近代日本の生んだ最も優れた旅行記の一つとして読み継がれるのである。

全28件中 1 - 10件を表示

金子光晴の作品

マレー蘭印紀行 (中公文庫)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

マレー蘭印紀行 (中公文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

マレー蘭印紀行 (中公文庫)の作品紹介

昭和初年、夫人森三千代とともに流浪する詩人の旅は、いつ果てるともなくつづく。東南アジアの圧倒する自然の色彩と、そこに生きるものの営為を、ゆるぎない愛と澄明な詩心で描く。

マレー蘭印紀行 (中公文庫)の文庫

マレー蘭印紀行 (中公文庫)のKindle版

ツイートする