日本の歴史 (8) 蒙古襲来 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (579ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044661

感想・レビュー・書評

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  • 鎌倉幕府滅亡まで。

  • 本巻の対象範囲は鎌倉幕府が北条氏の支配で安定化し、元寇が起こる時期から、鎌倉幕府の滅亡まで。最後は太平記で取り上げられる世界の一部を扱っている。
    元寇により、海外の脅威を目の当たりにするが、結果的にはその後に大きな脅威は来なかった。神風による神仏の加護ということで、当時から説明されていたが、本書ではモンゴルの先鋒となった、朝鮮半島の非協力的な態度や操船技術の未熟等から説明がなされている。
    その後、国内では悪党が横行し、内乱の様相を呈し始めるが、その背景は貨幣経済の発達により庶民が力をつけてきたことも要因。
    西日本での内乱と同時に、東日本では北条氏に反発する新田家により鎌倉幕府が滅亡させられる。

  • 中央公論の歴史本第8巻。鎌倉時代、源氏の血統が途絶え北条の得宗が実権を握る。そして北条時宗の時に元寇が起きる。元は二度襲来する。文永の役と弘安の役だ。2度とも台風の時期であったため蒙古の船は沈む。もちろん御家人の活躍もあった。しかし日本の勝利は神風が吹いた事によるものだという誤った思想が太平洋戦争の頃まで受け継がれる。有名な「蒙古襲来絵詞」という絵巻物がある。この本にでてくる竹崎季長という人物はこの絵巻物によってながく歴史に残ることになったのである。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou31701.html

  • 先に『南北朝時代』の巻を読んだため、順番が逆になってしまった。

    タイトルは『蒙古襲来』であるが、元寇に関する記述はそれほど多くなく、鎌倉時代後期から鎌倉幕府の滅亡までの、政治、文化、宗教、風俗については書かれている。

    中学・高校では必ず元寇が出てくるが、鎌倉幕府の滅亡についてはほとんど出てこない。その意味で、本巻で書かれている内容は興味深い。

    なお本巻の終盤には、後醍醐天皇、足利尊氏、新田義貞といった南北朝の中心人物が登場する。これらの人物が鎌倉幕府滅亡へ大きく関与しているためであるが、次の南北朝時代へ続く内容となっている。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    元寇といえば、日本の歴史教育では必ず学ぶこととなる重大な出来事であるが、元寇がどのような結果を生み出したのかという事はあまり知られていない。
    様々な部分で不満が溜まっていたのだろうが元寇をきっかけに多くの事で限界を迎えるようになったという印象だ。一方でこのような日本全国が混乱する時代において海外からの介入がなかったことは日本に取っては行幸だったと思う。
    本書を読んでいると戦国時代が近づいてきたことを感じる。

  • この巻も、文章が面白かった。学術的な考察を重ねながら、いきなり方向転換するような自説の展開など多々あり、しかも無理がない。古文書を読み解きながら話をすすめていたら、中世ヨーロッパと比較したり。著者の懐、知識の深さや柔軟さを感じた。それにしても荘園と守護地頭が組み合わさると本当に複雑。御家人も住民も、体制からどんどん離れていく。その過程が緻密に描れる。そして最後は元弘の変。

  • 遥かなるジパング島、禅か、法華経か、文永の役、弘安の役、「神国日本」、得宗専制政治、遍歴の僧団、漂泊の文芸、一味同心する農民たち、地頭と領家の対決、分裂する天皇家、御家人制の破局、悪党横行、「主上御謀叛」、楠木合戦、鎌倉の最期

    一番記述が多い人物の一人に日蓮大聖人。
    但し、悪意が目立つ。
    「竜の口の光の玉なんて信じられるか」的な。
    (実話なのだが。)

    一遍の踊り念仏ツアーでは、時折、自殺者が出る。
    「今日はとてもいい天気で雲が綺麗だなあ。よし死のう」みたいな。
    日本の自殺の多さと念仏は関連している。
    (「無間地獄の業因」と説かれる由縁。)

  • 太平記を主軸に、蒙古襲来前夜から鎌倉幕府の滅亡までを描く。当時のという限定付きではあるものの、最新の研究成果を生かしつつ、時として大胆に自説を展開するバランス感覚、学術的精確さを多少犠牲にしてでも一つの時代、人々を描き出そうという迫力、技巧に優れた描写、これらが相俟って読んで楽しく、それでいて十分に説得力に富む作品となっている。

  • 本書は、戦後の日本中世史研究を「権門体制論」の立場から牽引してきた黒田俊雄氏により一般向けに書き下ろされた通史の一巻である。論述されている時期は所謂”元寇”の時代としての12世紀後半から末期、鎌倉幕府の終焉にあたる時期であり、幕末の”黒船来航”と並び、日本の中世社会が構造的に大きく変動し始めた時期である。「権門体制」とは解りやすくいえば、中世日本の王権が”武家””公家””寺家”の三者、殊に武家と公家(この中には当然のことながら”天皇家”も含まれる)が相互に補完する”寄せ木細工”的な国家形態である、とする見解である。「律令」の規定からはみ出す形で誕生した武家(=幕府)は現実としての統治能力を持ち出し始めていたが自らの依って立つべき”法的根拠”を未だ持ち合わせてはいなかった。他方の公家(=朝廷)はその法的根拠に基づく地位を持ちながらも現実としての統治能力など全く持ち合わせていなかった。”現代的な国家像”でこうした複数権力が存在した時代の国家像を観ようとすることには意味はない。なぜならその前提そのものを適用することに無理がある。そこには幾重にも重なる支配の原理が存在するからである。

  • 鎌倉時代の中期〜末期

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著者プロフィール

1926年富山県に生まれる。1948年京都大学文学部史学科卒業。1960年神戸大学教育学部助教授を経たのち、大阪大学教授、大谷大学教授を歴任。1993年歿。著書に『蒙古襲来』(中央公論社、1965年)、『荘園制社会』(社会評論社、1967年)、『日本中世の国家と宗教』(岩波書店、1975年)、『寺社勢力―もうひとつの中世社会』(岩波新書、1980年)、『日本中世の社会と宗教』(岩波書店、1990年)、『黒田俊雄著作集』全8巻(法藏館、1994~95年)など多数。

「1995年 『黒田俊雄著作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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