明け方の猫 (中公文庫 ほ 12-8)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 168
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044852

作品紹介・あらすじ

明け方見た夢の中で彼は猫になっていた。猫といってもまだ新米の猫なので、四本の足を動かして歩くこともなかなか自由にはいかない…。猫文学の新しい地平を切り開いた著者が、猫の視点から、世界の意味を改めて問い直す意欲作。実験的小説「揺籃」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 『揺籃』あちこち揺られて酔いました。元気なときに読むことをお勧めします。

  • 38411

  • もう一回読みたいと思ってたけど、図書館では書架にありめんどうだなと先延ばしにしてたら自分の本棚にあった。今よりだいぶ読みやすかった。今早口で口をはさめない印象だけど、これはもっとゆっくりで読みやすかった。

  • 『明け方の猫』のはじまり。
    「明け方見た夢の中で彼は猫になっていた。」という一文から物語がはじまる。
    読み手としては、「そうか、猫になっていたのか」という前提で読み始めるのだけど、読んでいるうちに「ほんとうに夢なのかな?」と、不安になってくる。
    不安になった頃に、たとえば「夢から覚めても忘れないように」、「ここで彼はしばらく忘れていた「これは夢だ」という認識を再び取り戻したのだが、」と、あくまで「彼」は「夢」を見ているのだと強調されるんだけども、いつまでたっても「ほんとうに夢なの?」という疑問が消えない不思議。しまいには、猫視点での綴り(しかもなぜか3人称、「私」ではなく「彼」!)が面白いから、夢かどうかなんてどうでもいいっちゃどうでもよくなります。カフカの『変身』より面白いよ。

    同時収録の『揺籃』で想起したのは、カズオ・イシグロの『充たされざる者』。保坂さんはイシグロに影響を受けて、この小説を書いたのかなあなんて思いながら読んでいたけど、それはとんでもない誤り、なんと1980年、つまり保坂さんのデビュー前の作品だったわけです。『プレーンソング』がデビュー作なのと、『揺籃』がデビュー作なのとでは、ずいぶん受ける印象が違うぞ、これでデビューしていたら保坂さんは一体どういう作家になっていたのだろう、なんて思いました。

  • とてもよかった。これまでに読んだ他の作品とは違い、提供提供するようなところがなく、特に『揺籃』は難解さもありイメージの連続が通り過ぎていくような書かれかただったので読もうと思って読むと疲れたが、この二作は他のものとくらべると絵画的な印象が強かった。『明け方の猫』はなんとなく侮っていたが、とても読みながら気持ちよかった。

  • いつも誰かになってみたいナーと思うものだけれど、こうやって猫になってしまうとやっぱり人間がいいのかなって思う。
    というか、姿が変わってももともとの思考が元になっていて、ふとした瞬間にこの思考は人間だから(自分だから)なのかって気付いたり、気付くと変化したそれそのものになっているのは不思議なことだ。
    だけど、そうやって自分は変化していくのかなとも思う。

  •  夢の中で猫になった、って話。
     ストーリを書けっていうと、それで終わってしまうんだが、なんつーか、すごく不思議な話だった。同時収録されてる「揺籃」も、すごい不思議な話。実験的っちゃ、そうなんだろうけど…。
     好き嫌いが、すごく別れるんだろうな。
     で、私的には……猫が好きってだけで甘くなってる部分はあると思う。が、あんまり…(苦笑)
     とはいえ、もう二度とこの作者のは読まないぞぉっていうより、むしろ「実験的ではない」ものが読んでみたい気になっているので、それ程嫌いだったんじゃないんだろう。

  • “猫が外界から取っている情報の量は人間よりもはるかに多く、当然それらはすべて現在で、記憶という過去の保存が巨大化した理由は現在の希薄さの代償であることは間違いないようにいまの彼には思えた”<br>
    猫になった「現在」は、夢なのか転生か…? CatWalk保坂ワールド

  • 表題作「明け方の猫」は「生きる歓び」と対になっている。猫に関する小説を書かせたら、この人の右に出る人はいない。左にも勿論。猫小説なんだけど、猫小説じゃない。そこが面白い。保坂さんに小説に出会ってから、猫が本格的に好きになったもの。この犬派なあたしが。今や中立です。もう一編「揺籃」は読んでて螺旋階段を昇ってる(降りてるでもいいんだけど)気分になる。読んでいて不思議な気持ちに陥る。最初はそんな感じじゃないのに、どこからか罠にはまってしまってた。ぐるぐるぐるぐる。(05/11/19)

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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