海のふた (中公文庫)

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  • 中央公論新社 (2006年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122046979

海のふた (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 少し前に映画を観たけれど、映画とは少し違う部分もあって、当たり前のことだけど原作のほうがよしもとばななワールド炸裂だった。

    小さな町での、まりとはじめちゃんのひと夏の物語。
    ふるさとの西伊豆に戻ったまりは、かき氷屋を始めたばかり。
    母親の友人の娘であるはじめちゃんは、大切な人をなくして傷ついていて、ゆっくりとした時間を過ごすために西伊豆にやってきた。
    ともに時間を過ごしながら、2人は自分らしく生きる道を探し始める。

    基本的にはわがままで独りを愛する部分があるまりとはじめちゃんが、本当は時々お互いを鬱陶しいと思いながらも(そういう描写は出てこないけれど)、一緒の時間を過ごすことで2人でいるのもいいなと思い始めて、しばしの別れ際には本気で淋しいと思う、そういう関係性が素敵だなと思った。
    人と一緒に生活するのは鬱陶しいし面倒くさい。でも、それを超えた感情も確かに存在する。
    ともに過ごすことで相手の嫌な面が目に付くこともあるけれど、それ以上に相手の良い面を見つけて尊敬したりする。そういうことが自分の生き方を見つめなおすきっかけになったりもする。

    おばあさんをなくしたばかりで傷ついているはじめちゃんの言葉や経験で、あぁすごく解るなぁ、と思う部分があった。
    人が死ぬと周りが醜く見える、というのはよくある話で、遺産やお金のことで揉めたり、取り合ったり…自分の利益にならないことは押し付けあったりして欲をむき出しにする。
    私も自分の父親が死んだときそういう場面を目にして、「自分は欲で醜くならないようにしよう、せめて誰かが傷ついているときだけでも」と心に誓ったことを思い出した。
    欲しいものや行きたいところなどの欲は必要なものだけど(それで仕事をがんばろうと思ったりするし)、誰かの持ち物を取り合うような欲は持ちたくない。
    はじめちゃんは心からおばあさんを愛していたからこそ目を覆いたくなった。その気持ちは、ものすごくよく理解できた。

    スピリチュアル要素は薄く、海辺でのゆっくりした時間を感じられる、癒しの小説。
    自分らしさを見つける、自分らしく生きる、って勇気がいるし、一生かかっても難しいものなのかもしれない。
    それを得はじめた2人のたくましさがいいなぁと、素直に思った。

  • 主人公のまりちゃんの地元が寂れていく過程を読んで、あれどっかで。。。と思った。そして、よくよく考えたら私の生まれ育った故郷が、まりちゃんの地元と同じ寂れ方をしていたのに気付いた。

    私の地元は温泉街で観光地。母はそこでずっと育って今も、生活している。母が小さかった頃はまりちゃんの幼少の頃の地元のようにうちの地元も賑わっていて、よく東映のスターなんかが撮影にきたと言っていた。

    私の地元に限った事ではなくて現在、日本全国に昔は繁盛していたけれど今はもう。。。という場所って、少なくない気がする。そこでいくとこの本は、そういう場所に対しての1つの警鐘を鳴らしているようにも捉えられた。

    そして、まりちゃんとはじめちゃんは驚くほどにシンプルに丁寧に毎日を送っていること。
    ちゃんと自分らしく、あるがままに生きている2人。
    なかなか難しいけれど、この2人のような生き方が出来たらと感じている。
    私は、まりちゃんとはじめちゃんの優しくて温かいやり取りを読み進めていく内に大好きになったし、まりちゃんやはじめちゃんのような友達が欲しいと思った。

    文体もとっても美しくてシンプル。
    何か素敵な音色を聴いているような。
    素直に心に響いてくる言葉。
    ページの要所に出てくる版画絵も綺麗。

  • 変な生き物は、どんな姿形をしているんだろう。上質な生地を使って作られた、手の平サイズのぷりぷりしたぬいぐるみ、私も欲しいです。

    かき氷好きな主人公と、火傷の跡があるいとこのお話。

  • ごくごく沁み渡る、大切な1冊。
    普段以上に、生きること、伝えたいことが
    いっぱい溢れ出てたのかな、と思う。

    覚えておきたいフレーズが多すぎて、
    素敵で厳しくて哀しくて優しい
    たくさんの言葉たちと、大きな愛に包まれる。

  • よしもとばななさんの作品をちゃんと読んだのは初めて。
    ふとタイトルと表紙に惹かれて手に。

    起伏があってクライマックスがあって、、という作風では決してないのだけど、人間の「生きる」が本当に自然な流れの文章に詰め込まれていた。

    どの登場人物もすごく人間らしくて、繋がり方がどことなくリアルで血が通っている感じ。

    主人公の母の人物像が素晴らしかったな。個人的に。

  • 読むと主人公たちと同じようにスローライフを送っている気になり、リフレッシュできた。自分の身の回りの人、手が届く範囲の物を大切にすること。そして、「どうにかなる」と楽観的に考え、前向きでいること。簡単そうに思えるけど、主人公たちのように振る舞うのは難しい。でも、それが人生の闇に飲み込まれないためには必要なのかもしれない。

  • 西伊豆の小さな町が舞台。挿画となっている版画がとてもいい味を出しています。正直、私は物語そのものよりも版画のほうが好きでした。
    映画にもなったんですね。ネットで動画を見たら私のイメージとは違っていた。本からのイメージではもっともっと田舎を想像していました。かき氷屋さんもイメージよりずっと綺麗。かき氷も美味しそうでした。

  • どこか、自然があって、落ち着いた静かなところに旅をした気分になりました。

    お金で奪われる自然、人間の中の自然も…。

    それでも、できる範囲で自然と生きていこうとすること。
    自分が愛するものは、なんだったろう、と、少しそれと距離を取っていたことに気づきました。

  • 人生は大変だけどその中で続けることが大事で、その先に光が見えてくる。読んでいると、心が浄化されるような感じ。すっと入ってくる文章がやっぱり心地よい。読みやすいし、ちょっと迷った時に読むとラクになれる、そんな本。

  • 友だちにプレゼントされた本。
    よしもとばななさん、小説を読んだのは初めて。
    なんというか、日常、というか、そんな気がした。私たちの日常の中にも、後から考えるとターニングポイントになるような特別な時間や時期ってあると思うんだけれど、そういう、日常の中の一場面に特化して、そこで感じたものや目にしたもの、出会ったものや話した会話を切り取ったお話という印象。
    私にとってはまるで誰かの話を聞いている気持ちになるような、とても親しみやすい作風なんだなと思いました。
    と同時に、物凄いメッセージ性を感じて、私は何回かに分けないと読めない、、ってくらい力強さがあった。

    p186の最後の行からラストまでが印象的だった。まるで、映画のエンディングを観ているかのように、鮮やかにそのシーンが思い浮かんだ。

    〝私たちは人間だから、すごい力を持っているのだ。誰かがかき消そうとしても、無理やりに均されそうになっても、どんなに押さえつけられても絶対になくならない、そういう力を。〟

    〝みんなが自分の周りのすべてに対して、そんな風に豊かであったなら、きっとこの世の中は……。〟

    あとは、世の中の生きにくさのある人たちに対して、優しい人なんだな、と感じた。

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