- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122046979
感想・レビュー・書評
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しおりをはさむたび、水面から顔をあげた気持ちよさを感じる読書でした。
また来年の夏に読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
南の島でかき氷屋を営み始めたまりと、
祖母の死後、親族同士の遺産相続の
争いから逃れてきたはじめとの、
ひと夏の思い出のお話。
柳が風に優しく揺れる葉音や、砂を踏む感触、
海底に潜むさまざまな魚の彩りと、
照りつける太陽の陽射しなどが強く感じられ、
夏に読むには最適の短くもあたたかな物語だった。
まりにとって夢だったかき氷屋を営む
ということが、実は細々と単調に、地味に日々を
積み重ねていくだけのものだとしても、
彼女のかき氷屋が、毎日海の松林のそばに
あり続けるという事が誰かにとって、
またそこを訪れようと思える、
生きるための励みになる、夢を見つけるきっかけに
なるなら店を持つということの、これ以上の
幸せはないのかもしれない。
この作品の舞台ともなる南の島本来の持つ良さが
現代社会に乗っ取られて、自然が取り壊され、
観光客が減って街の賑やかさが徐々に
消えていく事に非常にナイーブになって
豊かだった昔を懐古するばかりのまりに、
田舎育ちのわたしも通ずるところがあった。
変わらない良さと変わっていく良さの均衡を
保っていくのはなんて難しいんだろう。
夏のエネルギッシュな勢いと暑さに
疲れた体を少しでも落ち着けられるように
秋の風が優しく吹くのだとしたら、季節の
微細な変わり目をもっと深く味わえる、
そういう心持ちで過ごしていけたらいいなと思う。
無欲なはじめとその家族が、新しく始まる網代での
生活の中で田畑を耕し、まりの作った空想の
世界の生き物に物体としての心を宿し、
命を吹き込む仕事を慎ましく送っていけたらと
願わずにはいられなかった。
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故郷でかき氷屋を始めたまりちゃんの元に、心と体に傷を負った、はじめちゃんという一人の少女が訪れた。人間の欲深さ、現実世界での生き辛さ、たくさんの禍々しいものを抱えてどうしようもなくなるときがある。それでも大切なものやかけがえのないものを抱き締めて、「私たちはここで生きている」と伝えたい。
これは2人の眩しくて、儚い、ひと夏の思い出。
【中央館/913.6/YO】 -
好きなフレーズがいくつもあり、とても心に残る本になりました。夏が終わる前に読めてよかった。また夏が来たら読みたくなるような作品。挿絵の版画もじんわりと心に響いて、泣きそうになりました。
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普段は図書館利用。久しぶりに手元に残しておきたいと感じた本。廃れた海辺街でかき氷屋を営む主人公と達観した大人びた少女と過ごす一夏の日常。設定だけで自分好み。海との付き合い方や日常の些細なことを大事にしていこうと前向きな落ち着いた気持ちになれる。
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とっても好きな本。何度もよんでしまう。
海のちかくでかき氷やさんを営み始めた女の人と、その夏を一緒にすごすことになった、とても賢くて魅力的な女の子のお話。二人の会話や、景色、海、かき氷の味(まで感じる)
なにもかも好き。こういう雰囲気の夏が、とても好きだ。 -
ばなな先生の作品でトップ5
毎年夏に必ず一度は読みたくなる -
【読み終わって感じたこと】
よしもとばななさんの綴る言葉は、とっても優しくて温もりがある。生きることは素晴らしいことで、だけど苦しいこともある。それでも私たちはやっぱり、自分の大好きな人やものをめいっぱい愛することをやめられないんだと思う。それこそが人の本質であってほしいなと思った。
【印象に残ったシーン】
「人を傷つけて得たものって、きっと小さなしみみたいに人生につきまとうよ。(中略)誇り高い人生にはならないから。」
とまりちゃんが、家のことで傷ついているはじめちゃんに伝えるシーン。私の胸に刺さる言葉だった。
【好きなセリフ】
「毎日のように会えることって、ものすごいことなのだ。お互いがちゃんと生きていること。約束もしていないのに同じ場所にいること。誰も決めてくれたわけじゃない。」
人も自然も、全ての存在は当たり前じゃない。こういう気持ちを持って生きることができたら、きっと世界はもっと輝いて見えるだろうなと思った。 -
かき氷、食べたい。
一瞬の夢。
わたしも毎日えがおで、
だれかの夢を守りたい。 -
人の良いところを信じたくなった時に読み返したい