狼なんかこわくない 改版 (中公文庫 し 18-13)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122047587

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  • 「若者よ、自分の心の構造を知っていますか」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=078388

  • 庄司薫、青臭くて面倒臭くて好きだ。青春論なんだけど、何も若さの特権とか、逆に若気の至りを説いているわけじゃない。庄司薫は生涯ずっと青二才かもしれないし、むしろ読者としてはそうあってほしい。人間として大切な純粋さや誠実さは、年齢に関係なくいかに獲得してきたか、いかに失ってきたか、それによって決まるものだと。オイラは後悔しない代わりにあまり反省をしないけど、自己否定のきっかけとして時々は反省しようと思った。
    それにしても70年代に書かれたものにもかかわらず、いま読んでもまったく違和感がないことに驚いた。「大きな大人」は2019年でも増加中だ。情報洪水と言っていたけど、いまは自分からそこに飛び込んでいる人の方が多い。電車の中を見たらゾッとする。通学中の子どもも通勤中の大人もケータイでゲームしてるし。個人売買やYouTubeとかでプロとアマチュアの違いがなくなってきた部分があるけど、子どもと大人の違いも曖昧になってると思うな。
    『赤頭巾ちゃん気をつけて』が「男の子」いかに生きるべきか、って十年間考え続けた成果だったというのは嬉しかったな。だから夢中で読めたんだな。「これぞ男の生きる道」とは、みんなの幸せを考えること、そしてそのためには強さに支えられたやさしさとでもいうべきものを育てること。赤頭巾ちゃんが教えてくれたんだよね。だからお袋さんの「自分のことは自分でしなさい」「人に迷惑かけちゃだめよ」の教えをしっかり守って、やっぱり面倒くさい由美にもやさしかったものね。しかしこの歳になっても18歳の薫が考えることに違和感がないとうのはどうなんだろう。これを純粋さと自分では言い難いもんなぁ。

  •  中年に差し掛かった著者が、自身の青少年期を回顧しつつ、その時代への社会の目線を斜に構えながら切り取っていく。
     いい大人がこんな風な自己憐憫満載の懐古的青春録を書いて気恥ずかしくはないのかということと、その斜に構えっぷりな叙述に鼻白む感じ。

  • "若々しさのまっただ中で犬死しないための方法序説"
    庄司薫氏の青春論。

    傷つきやすい青春、とか、そういった類いのはなしはたくさんあるけれど、もしかしたらその中で庄司薫ほど、そんな"青春"をまっすぐ見つめた小説家はいないんじゃないか。
    傷つきたくない、傷つけたくないという若々しさ、他者を愛することのむずかしさに向き合い、10年間、悩み考え尽くした結果が"赤頭巾ちゃん"なのだと思うともうどんどん愛しくなる。

    その人生をかけて、若々しさという壁を正々堂々のりこえて、他者への愛を語る庄司薫、その切実なドラマティックさにわたしはもうすっかり惚れ込んでしまっているのです。

  • 薫君4部作に引き続き、庄司薫を読む。
    この本は小説ではなく、エッセイだ。1971年の刊行なので、かなり古い本だけれども、僕は庄司薫は小説だけしか読んでいないので、この本は初読。
    饒舌な文体で書かれているところは小説と同じなのだけれども、内容は読み取るのにかなり骨が折れる。巻末に素晴らしい解説(萩原延壽と御厨貴の2人)がついていて、この本の読み取り方の素晴らしいサンプルを示してくれてはいるが。
    内容の読み取りが浅いことは承知の上で(内容ばかりでなく、論の進め方もまわりくどいという印象がある)、この本の好き嫌いを言えば、あまり好きではない。

    解説からの孫引きになってしまうけれども、このエッセイに書いてあることの一部を要約すると以下の通り。

    「夢多き青春」を頑張って生きる式の努力は、努力すればするほど結局は他者を傷つけ、自分はその人間らしさを喪失してしまうのではないか。青春の真っ只中で「純粋」と「誠実」を人間の最高目標として求めようとすれば、そのこと自体で「純粋」と「誠実」を喪失するというパラドックスに陥る。このテーゼは、いずれ「自己否定」につながり、「自己否定」の論理を突き詰めていくと、「現実否定」に必然的に激しく転化していく。
    「純粋」と「誠実」を喪失しないためには、複雑で困難な状況にも耐えられる強さ・力が必要であるが、その力を備えようとする努力は、結局は他者を傷つけかねない、という堂々巡りになってしまう。
    とりあえずは(若々しさの中で、あるいは馬鹿馬鹿しさの中で犬死にしないためには)、そういった問題から逃げておくに限るのだ。

    実際に本を全部読んでみないと、これだけでは何のことやらさっぱり分からないだろうけれども、そういったことが書いてある(と思う)。
    「自己否定」や「現実否定」にともすれば陥りかねない青春期の心の動きをもって、題名の「狼」と呼んでいる。努力が他者を傷つける、とは、ドストエフスキーの傑作が文学青年を絶望させ、マリリン・モンローの微笑が他の女性を傷つける、といったようなことだ。
    そんな馬鹿な、と多くの人が思うだろう。他者との比較、優勝劣敗を競うことが人生の本質ではないだろうと思う。人生とはもっと別なもの、例えば、と考え、例えば「赤頭巾ちゃん気をつけて」の最後の場面のような、と思いついてしまい、これはなかなか一筋縄ではいかないな、と思ってしまった。

  • 「優しさ」と「強さ」。「弱者と」と「強者」。強くなるために、誰かを傷つける、若しくは誰かを踏み台にする。そして身につけた「強さ」。その力を多くの人々に還元する。時代は変わっても、思春期の欲望と愛の矛盾をグルグルと回りまわって書かれている。自分にとっては、とっても同感できる作品だった。

  • 現代の青春のまっただなかで、純粋さと誠実さを求め、あくまでも「他者肯定」を夢見て闘おうとする若者のための指南書。

  • 豊かな社会の情報洪水のなかで、若者はいつまでも大人になれない。成熟を困難にする現代の青春のまっただなかで、純粋さと誠実さを求め、あくまでも「他者肯定」を夢見て闘おうとする若者のための、永遠の指南の書。

  • 70点

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