- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122049048
感想・レビュー・書評
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内容ですが、
Ⅰ歴史の真実と政治の正義
――歴史の見直しをめぐって——
1復権の政治の世紀
2二つの歴史の癒着
3歴史と政治の分離をめざして
道徳的価値体系の衝突――真に避けるべき危機
多様化社会の国家像
人権思想――国境を越える価値
Ⅱ「教養の危機」を超えて
――知の市場化にどう対処するか――
1人文学の多様化と分裂
2知の制度化と商品化
3情報化の脅威
4教養の変貌と再建
新たな知的開国をめざして
Ⅲ風のように去った人――追悼・司馬遼太郎
反歴史の文学
反歴史主義の文学
「私」的に語った「公」の文学
『最後の将軍』をどう読むか――追想・司馬遼太郎
終わりと儚さの文学
慶喜の聡明と不幸
逆説的無常観の文学
「精神の外交家」を友として――高坂正堯著作集・解説
あとがき
でしたが、加齢のため頭が回りが悪くなりなかなか理解できない箇所がほとんどでした(涙・笑)。
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まさに今こそ読まれるべき本である。特に表題作が傑作。政治と歴史(学)の根源的矛盾を突き、「混ぜるなキケン」とも言うべき2つを混ぜ合わせた歴史主義やナショナリズムに疑問を投げかける。歴史問題というのは今に始まるものではなく、いずれ止むものでもない。そもそもシロクロはっきりつくような問題なのであろうか。
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山崎正和は実は結構好きで、「社交する人間―ホモ・ソシアビリス」(中公文庫)は名著。ちょっと合理的すぎるところもあるけど、でも読んでて快感。
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私は不思議でしょうがない。
“主義者”ってどうしてこう楽観的になれるんだろう?
改めてこう思ったのは、「正論」10月号に載った
金子肇「「徳育」なくして何の教育か」を読んだからです。
(註:この文章は2007年9月6日に書いたものです)
山崎正和さんの「わたしの「道徳教育」反対論」への反論ですが、理想的な道徳教育を行えば理想の社会がつくれる、とでも言わんばかりの楽観主義がどうしても腑に落ちない。
うまくいえないけど……道徳教育って
たしかに最善のものにもなりうるかもしれないけど、
最悪の方向に行くことだってあると思うんですよ。
いわゆる右傾化のことだけをいってるんじゃなくて、
その逆、左傾化の危険だってある。文化大革命とか……。
勝手に忖度しちゃうけど、山崎さんの考える学校教育は
「たとえ共産党が政権をとっても日本が壊れない教育」
にもなっているんじゃないかと思う。
つまり、最悪の事態に備えた制度だということです。
私は山崎さんのすべてが好きなわけではないけど、
(特に『柔らかい個人主義の誕生』なんて、どこがいいのかさっぱり分からない)笑っちゃうくらい論理的で根元的で、そういうところは好きです。
最悪の事態をふせぐためにも道徳教育は必要だ!と
金子さんは言うかもしれないけど、
でもね、それによってもっとひどいことになる可能性だってあるんです。
「最善を目指す」よりも「最悪を防ぐ」。
「幸福になる」よりも「不幸に耐える」。
そういう前向きなペシミズムが、私は好きです。
「道徳性を育てるための筋道は、学習指導要領にはっきりと描かれており、この筋道で教育すれば、どんな教師でも、さらに教育実習の学生にも、それはできるのです」
という金子さんの楽観主義よりも、
学校教育にあまり多くを期待すべきではない、という
山崎さんの悲観主義の方を、私は支持する。
理想の社会なんて、あんまりあてにしない方がいい。
それがなくたっていい社会はつくれると思う。
悲観主義を前提にして、ね。
ふう……。こういうことはあまり言いたくないんだ。
前置きが長くなりましたが、本書『歴史の真実と政治の正義』(つまらないタイトル!)は、「歴史教育は廃止せよ」という年来の主張や、教養主義が崩れたあとの教養をめぐる論考などを収めた本で、刺激的なところもあるのですが、固有名詞が少ないので時々
「あたりさわりのないことを言ってるだけじゃないか」
と感じることもあります。
だから固有名詞がバンバン出てくる丸谷才一さんとの対談は楽しいんですが、その丸谷・山崎対談も最近は冴えない。
『日本語の21世紀のために』も、『おっとりと論じよう』の漱石論も、この間の「中央公論」に載った教養論も、なんかイマイチでした。お説教が多すぎる気がする。
ただし『半日の客 一夜の友』や『20世紀を読む』は何度読んでも面白い名著です。私もこういう風な議論をしたいな。
2007年9月8日の追記:
実は「わたしの「道徳教育」反対論」の問題点はまったく別のところにあります。それは、いま日本のマンガが人気だ、という話題の中で、マンガのルーツは浮世絵にある、なんて言っちゃってるところです。う~ん……サブカルチャー(山崎さんにとってはきっと文字通りサブカルチャーなんでしょう)には本当に弱いんだなあ。