西ひがし (中公文庫)

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著者 : 金子光晴
  • 中央公論新社 (2007年12月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049529

西ひがし (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 三部作の最終巻。

    妻美千代の不倫をきっかけにしたヨーロッパ行きではあるのだが、金子光晴はそうはいっても妻に縛られるつもりは毛頭ないようで、あちこちの街でよろよろしていて、商売女には手を出さなかったとどこかで書いているのだが、信用はまったくならない。妻に対しても男の手前勝手な倫理観を押し付けいるわけではぜんぜんなくて、むしろ逆のようですらあったらしい。

    そういうふたりが貧窮の中でなんとか暮らし続け、ヨーロッパから帰るときはまた別々になり、日本に戻ってから一緒になってやっていくのであるが、ふたりの関係は当時の時代背景から見てもかなり奇妙に映ったのかもしれないが、こういうのは当事者しかわからないものなので、余計なお世話というものだろう。

    金子光晴は女性に対する深い関心を終生持ち続けた作家で、響の強い独特な表現はかれの魅力の一つである。

    彼女が見るということが、すでにおもわせぶりな表情をつくりだして、ただならぬおもいをあいての心に掻きたてるようであった。印度の女だけがもっている、つくられたものではない、生まれながらの情念の眼であった。こういう女のいる限り、男たちにとって、生きるということは、その女たちのゆく先の先までついていって見とどけることであった。
    (西ひがし p.215)

  • 沢木耕太郎氏ご推薦のようなので、旅記つながり。

    金子の手記は沢木のそれに比べると、ずっといかがわしくて後ろめたくて猥雑。沢木のほうが長身で見目も悪くないのに、面白いなあ。

    ”アナルキスト”??・・・あ、アナーキスト、なんですね。

    「眼まぜ」「食べ余し」「半ちく」といった、意味はわかるけど自分は使わない言い回しが散見、これも一興。

    ・・・ブルッセル市は病弱者が捨て身の化粧をしたようないたいけな小都市で、両肘と膝がしらが充血して赤くなっている感じの、小柄なからだが、生姜の根のように痛い。

    ・・・混血が行き渡らないので眼のふちや口の端などが
    ずずぐろい、あくどうようで、芯がからっぽという表情をしていた

    等々、独特な言語感覚が面白かった。

  • 金子光晴の自伝三部作の完結作。危険に感化される。この3冊と詩集を鞄に入れて明日をもしれぬ旅に出たくなってしまう。それって日常を捨てるってことなんだけど。デカダンスとレジスタンスの魅惑。

  • おおよそ受け入れられる要素はほとんど無いはずなのに、自分の中の卑屈な部分と重ね合わせてしまうのだろうか、そうせざるを得なかった、そうするしか無かった、ということがわかるのだ。そしてそうであっても愛してしまうのだろう、ということも想像に難く無い。

  • ねむれ巴里の最後で、三千代夫人を残し、金策の為にアジアに戻ったことが記されている。結局、夫婦二人とも帰国できたことがあっさり短く書かれているのが、実際そんな簡単なことでなかったことが本書で描かれる。

    マライ半島の南端、バトパハで白蛇の精、白素貞との逢瀬。背がゾクッとするような印象。二人の意思が通じているのか、どこまで本当のことか、よく判らないけれど。
    金ができたと思ったら、ポン引きの案内で女を買って、スッテンテンに。何やってるんだろ。サッサと帰国すればいいのに。
    夫人との予期せぬ再会。余計なオマケ付き。ホント、何だろうね、この夫婦は。
    最後は、夫人に遅れて帰国。子供との久しぶりの再会。夫人からの手紙で幕。

    詩は詩人の元に戻ってきたとあるが、そのときの新嘉坡(シンガポール)という詩を探してみたい。

  • 帰途のぶれる旅はこんなにも恐ろしいのか。

    詩人の言葉選びが光る。

    白蛇との夢うつつの境のないエピソードが凄い。

  • 金子光晴の旅の最終章。
    終始けだるいかんじが、
    短いたびでは味わえない、お金のあるたびでは味わえない世界。

    『どくろ杯』からずっと読んでいると
    詩から逃げるように、
    現実から逃げるように飛び出した著者は
    結局のところ詩の心を育てて帰国する。
    こんなたびでも必要な旅だった。

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西ひがし (中公文庫)の作品紹介

三千代夫人はひとりベルギーに残った-。暗い時代を予感しながら暑熱と喧噪の東南アジアにさまよう詩人の終りのない旅。『どくろ杯』『ねむれ巴里』につづく自伝。

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