- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122049895
作品紹介・あらすじ
評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ"居候"の本質であり、回送電車の特質なのだ-枠組みを越え、融通無碍に文章を綴る著者の、軽やかで、ゆるやかな散文集。
感想・レビュー・書評
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雑でない。
言葉に対して、たいへん丁寧に対峙しているのが感じられる。
だから、安心だ。
(このところ世の中には、安心できない文章が多すぎる)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
回送電車に「ある同胞意識に似た感情を抱きつづけて」、
「二階家以上の建物のなかでどこが好きかと問われたなら、
迷わず踊り場と答え」、小型三輪トラックを見ては「はざまの
美を体現している存在」と評し、「(ムーミンに登場する)
スナフキンのような存在に、どうしたらなれるのか」と思案
する堀江さんの散文集。
ほかの人から見ればどうでもいいようなことでも、自分が
好きであれば、徹底的につきつめないと気がすまない。
そんな頑固さが伝わってくる。
その頑固さが嫌味にならないのは、やはり上質な文章を
書ける堀江さんの力量なんだろう。 -
この作者の作品は、かなり好きです。脱力した心地よいベースラインを聴いているかのよう。面白みに欠けるのか?というとそうでもなく、ところどころにパルス状の面白さが沸き起こる。この散文集は、久々に手に取った良作。
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『回送電車』堀江敏幸
人や物を運ぶ電車が効率的な運行をするために回送電車が走っています。
著者は利用することのなく周囲の雑踏にかかわりなく、からっぽで優雅に通り過ぎる電車のような、これといった目的を持たない雑文集にしたいと述べています。
通勤時に少しずつ読んで、ゆるやかで、軽快で、落ち着かせてくれ、遠い昔に同じようなことに遭遇したことを思い出しニヤけたり、知らない話題に疎外感をおぼえ少し残念だったりしましたが、楽しく読ませてもらいました。
解説の杉本秀太郎氏が「無用の用」と評した言葉は、言い得て妙と思えました。 -
何処となく小説のような雰囲気も漂うエッセイ集。
日常の風景がふと違ったものに見えて来るような文章が、ちょっと須賀敦子っぽいように感じた。小川洋子っぽくもあるな。 -
モノと言葉に対する視線をならいたい
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冷静できれいな言葉がたくさん出てくる。
秋津に行ってみたい。 -
以前に「めぐらしや」を読んだことはあったのだが,堀江敏幸って「フランス文学の研究者は,こういう文章を書かなければいけない」って感じの文章を書くよね.エッセイは初めてだけど,小説と同様,舞台が日本の話でもフランスが透けて見える気がした.
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表題作に惹かれて(小説だと思っていたけど)購入。
見えないタイムテーブルを駆使しながら、ホームに佇む我々を横目に颯爽と駆け抜けてゆく回送電車の魅力を淡々と語る。
お堅い文章ばかりかと思いきや、後半は抱腹絶倒。
堀江さんは(案外)可愛い人なのだなぁと思った一冊。 -
8/12 読了。
「リ・ラ・プリュス・プリュス」が読めただけで、この本と出会えた甲斐があった。