書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)

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著者 : 保坂和志
  • 中央公論新社 (2008年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049918

書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  小説の書き方と思いきや小説とは何かが書かれた一冊。

     全然ハウツー本ではないのだけど、逆にこれはなかなかいい小説のハウツー本だと思った。
     確かに小説とは何なのかを考えなければ小説は書けない。すごく刺激された気がした。とりあえず作者の小説を読んでみたい。

  • M君レコメン

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    ●感想

    ・べつに小説家になりたいわけじゃない

    ・アートがいかなるものかが知れてよかった

    ・アートとは、世の中の常識の枠を抜け出して、更なる自由を追求する活動、といえばよいか

    ・ガンダム、自然科学、音楽、登山...

    ・僕はずっと、アートに憧れてきたんだ

    ・登山との向き合い方が変わりそう

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    I章 小説を書くということ

    ●小説とは何か

    ・小説とは、社会化された人間のなかにある、社会化されていない部分を言語化すること

    ・普段の生活ではマイナスになったり、他人から怪訝な顔をされたりするもののこと

    ・人間に対する圧倒的な肯定

    ・社会化を目的とする学校教育と小説は一種の対立関係にある




    ●鵜呑みにせず自分なりに感じること

    ・この本に書かれたことを全部マスターして、及第点を取ろうとする律儀な人は、小説家になれない

    ・自分なりに感じるには、他人の言葉を鵜呑みにしないところからはじまる

    ・ある人が発したことばには、その人なりの身体性や経験が反映されている

    ・まずは、他人の言葉を自分の言葉に置き換えること




    ●ふつうの言葉では伝わらないのが小説

    ・まったくわからない芸術に出くわすと、人はその制作者にむかって「意図を説明せよ」というが、それは無意味なこと

    ・日常の言葉で説明できることは、そもそも芸術ではない

    ・日常が芸術を説明するのではない。芸術が、言葉では語り尽くせない日常を照らす




    ●自分が書かなくてもすでに小説はある

    ・大学に入って習作めいたものを書いてみたが、結局自分の容器は空っぽであることに気づいた

    ・文芸誌や文学に関する論評をあれこれ読んだところ、1970年代に、小説というものが行き詰まっていたことを知った

    ・自分が書かなくても小説はある

    ・小説を書くまでには、時間がいる




    ●自己実現のための小説を書かない

    ・自己実現や自己救済のための小説は、たまたま同じように鬱屈した人生を送っている人の共感は呼ぶかもしれないが、読者を感銘させることはできない

    ・また、自分の救済が終わってしまえば、その人は小説が書けなくなる

    ・共感は「わかる、わかる」という気持ち

    ・感銘は、自分より大きなものに出会った感動

    ・共感は得られやすいので、ベストセラーになる




    II章 小説の外側から

    ●ジャズを聞きながら

    ・音楽であれ小説であれ、表現というものは絶えず何か逸脱するものをはらんでいないと、やがて滅んでいく

    ・表現とはそういうもの

    ・どうすれば逸脱できるのか?

    ・カギを握るのは「身体性」

    ・人間の思考というのは、どうしても直接の経験を拠りどころにするから、自身の経験の枠を超えられない

    ・だから、日本人作家の本だけを読んでいたのでは、小説と小説感を相対化できない

    ・相対化するには、外から異質なものを持ってくるのが一番




    ●哲学も小説も「誰も見たことのないもの」を描く

    ・哲学を読むことの本当の意味とは?

    ・哲学書に「私」「人間」「世界」という言葉がでてきたとき、読者はそれを形あるものとして読んでいる

    ・つまり、外側からみている

    ・太陽があって、その周りに惑星とその軌道が描かれている図をよく見かける

    ・太陽系を外から見た図だ

    ・しかし、太陽系の全景を実際に外から見た人はいない

    ・この図は計算して導き出した姿であって、実際に見て描いたわけではない

    ・「私」「人間」「世界」も、誰も見たことがない

    ・世間では物事をモデル化して語ることができる人を「頭がいい」というが、そんなものは大したことではない

    ・大事なのは、誰もみたことがないことを知ることだ




    ●小説が光源となって日常を照らす

    ・哲学書が難しいと言われる理由は、哲学が「私」「人間」「世界」を俯瞰することを拒否したところから思索しているからだ

    ・哲学者は、それらが俯瞰できない対象だから思索する

    ・だから、思索したプロセス全体しか答えにならない。結論としてのモデル図は書けない

    ・人間が心の底から知りたいことは、すべて外から見て、論じることができない

    ・これは、哲学も小説も完全に同じである




    III章 何を書くか

    ●テーマはかえって小説の運動を妨げる

    ・小説というのは、読んでいる時間のなかにしかない

    ・読み終わった後に便宜的に整理するテーマとは、作品の一面にすぎない

    ・作品には固有の運動がある

    ・音楽や絵、スポーツでも同じこと

    ・運動に素直に身を委ねることができる者が、優れた作者ということになる

    ・だからといって、何も考えなくていいわけではない

    ・むしろ考えることは増える

    ・五感を全開にして挑まなければならない

    ・私は小説を書くとき、登場人物とそれらの人間関係と舞台を決めたら、テーマなど置かずに書き始める




    ●書きにくいことこそ書く

    ・生まれ育った鎌倉の景色を小説で描きたいと思った

    ・ところが、実際に風景を書こうとすると、これがもうとてつもなく書きにくい

    ・日本の小説を眺めてみても、風景をちゃんと書いている小説はほとんどない

    ・風景を詠んだ短歌や俳句でも、木の細部まで描写しているわけではない

    ・書きにくいものを書くことで、小説家としてレベルアップできる




    ●風景を書くことの難しさ

    ・子どもはみんな絵を描くけど、子どもが描いているのはすでに世の中にある絵を知っていて描いている

    ・花の絵をみて、花の絵を描いている

    ・自分の前に絵がなくても、絵を立ち上げることができるのは、本当の画家しかいない

    ・風景を書くというのは、視覚という、同時に広がるものを、文章という一本の流れにむりやり押し込めること

    ・「古池や蛙飛び込む水の音」は、たったこれだけの長さしかないのに、視覚と聴覚の両方にまたがってイメージが駆け巡るところがすばらしい




    ●風景を書くことで文体が生まれる

    ・風景を書いた文章は、風景のすべてを書いているわけではなく、取捨選択した断片を並べて、風景を再現させている

    ・これが文体の発生であって、文体とはこういう作業の痕跡でしかない

    ・激しい運動として書いたり、抽象的な概念を呼び寄せたり、経験や知識、あるいは書き手自身の世界に対する手触りを重ね合わせなければ書けないのが風景であり、それが小説家の「身体」である

  • 既成の物語を拒否し新しい物語を作ろうとしている作者の心意気がびんびんと伝わってくる。交響曲のような作り込まれた音楽がミステリーなどの小説だとすると、保坂さんのそれはジャズ。だからルールは決めるけどどのように展開していくかは考えない。不幸なことを寸分も感じさせないとか、読みやすさを拒絶するとか、そういった方法論は面白いが、書きあぐねてる人の参考になるかというと疑問。彼のやり方を参考にして書けば、それはそれで保坂さんの真似と捉えられるような気がする。「入門」というタイトルとはかけ離れた独自の非常に高度な論だと思う。タイトルが相応しくないので、ちょっと星を少なくした。

  • 保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』草思社,2003年 読了。
    *
    小説家・保坂和志が「小説とは何か?」「どうしたら”小説風のもの”ではなく、本物の小説が書けるのか?」「小説を書く上で大切なこととは?」等、「小説を書く」ことの本質を説いています。
    小説を読むのが好きな人、もの書きの仕事に携わる人に、おすすめな本です。
    *
    中でも興味深かったのは、作品のリアリティに関する話。
    ”小説には、かならずどこかで現実とのつながり、現実の痕跡、現実のにおい、みたいなものがなければならない”(P.67 L.15-16より引用)
    との持論を持つ保坂氏は、感傷的な小説は罪悪だ、と一蹴します。
    ”感傷的な話は決まって、「私には何もできなかった」と、自分の無力を甘くかみしめるつくりになっている。(中略)感傷的な小説を書く人は、自分を傍観者の立場に置いておくために、文章の世界にこもるのだ。これはリアリティということと正反対だ。”
    (P.201 L.17-P.202 L.9より引用)
    *
    書き手自身も当事者として現実に関わりながら、言語化されていない、日常の言葉では伝わらないものを、言葉を使って作り出す。
    相当ハードな作業だなぁ、と思いながらも、これはすごく大事なことだと思う。
    *
    会社員を5年半も続けていると、『白い巨塔』に出てくるような組織のピラミッド構造や、『半沢直樹』に描かれる管理責任の所在を問う闘い等に、直面する。
    様々な軋轢に耐えかねて、時に「これ小説にしたら面白そうだなーいっそ笑い飛ばしたい…」と思うことがある。
    そんな時こそ、及び腰で、逃げ道を探りたくなる。
    そして、当事者であるにも関わらず、どこか他人事のように考えてしまう自分がいる…。
    そんな姿勢で「小説にしたら面白そう」なんて、何とも安易な逃げだなぁ、目の前の現実に真摯に向き合わなければ、と、自戒した週末の夜でした。

  • 10年くらい前に読んだ時に、この本で紹介されている、田中小実昌「ポロポロ」、アフリカ文学のエイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」に衝撃を受けた、この2作品を紹介しているだけで、この本が確かな本であることを感じた。

    前回読んだ時にはあまりグッとこなかったフレーズが、今は心に響くものが多々あった。(人は歳を取り、感じ方が変わるから。経験を得ることで、若々しい張りのある気分がうすれ、また同時に人の醜さ弱さを受け入れられるようになるから)
    逆に、前回はあまり感じなかった、ロジカルなくどさのようなものも感じた。(哲学に対する叙述など。)

    小説は1970年代ですでに飽和している、これから小説を書くにあたり、いかに新たな表現をするか、を考えながら小説を書かないといけない。と。
    保坂さんの、小説に対する真摯な態度がビシビシ伝わってくる。

  • 小説家を目指していなくてもおすすめできる本。

    長年自分が考えていたこと、感じていたことをうまく言語化してくれた本。
    自分が少なくともまちがってはいなかったんだとすこしだけ肯定できた本。

  • プレーンソングが好きだけれども、なんで好きなのかはわかれていない気がして、読みました。この本では、どのように小説を考えるか、と付録の創作ノートでどのように作品を考えていたがが書かれています。ただ、私にはわかったと思えなくて、そもそもわかったと思ってとしたら、それは単純化しすぎて自分の中の思考パターンに当てはめてしまっただけではないのかとも考えて、もやもやしました。

  • 放っておくと文章はネガティブさを纏う。
    これからは意識的に書いてみようと思う。

  • 「いつかは小説家」、そう思ってる人も多いだろう。私もそのうちのひとりだ。とはいえ本書は「書きあぐねている人」へのハウツー本ではない。一定の着想やプロットの齧りは説明しながらも、「本書を忠実に守る人は成功しない」と語っている。本書は小説に対する著者の愛溢れる本であり、これから小説家を志す人へのエールである。私自身、本書を読むことで小説とは何なのか、多少腑に落ちた理解を得られた気がする。

    同時期に春樹氏の『職業としての小説家』を読んだが、「とにかくたくさん本を読め」「伝えたいことが要約できたら小説なんか要らない」「小説を読んでるプロセスが小説の楽しみ」などなど、全く作風も考え方も違いそうな保坂氏と村上氏が同じことを語っているのはなかなか面白い。

  • 「小説家による小説論。本編とあとがきの二つに分かれた構成。【本編】小説を書くこととは、と心構えからはじまる。技術指南本ではなく小説に向き合う姿勢についてのエッセーに近い。①何を書く②誰を書く③風景を書く④ストーリーを書く⑤テクニックについて【あとがき+創作ノート】保坂和志氏が実際に執筆した際の創作ノート。」という趣旨。以下印象的な箇所の引用。一字一句正確にしるすというよりわたしの曖昧な印象を個人用メモ。感想については後述。

    ーーー
    p98.登場人物の心理が変化することが小説内での正確な意味での「時間」であり、それはストーリーに勝る。

    p143.風景を書くことで文体が生まれる。取捨選択が行われている。だから翻訳小説でも文体が伝わる。

    随時増える(かもしれない)。
    ーーー

    「まさに、息詰まったとき手にとるべき本であると感じた。小手先だけのテクニックでは小説はかけない。特に②、③についてはなるほどと深く納得することも多く、物を書き続けるならば、繰り返し読みその精神を血肉として吸収できたら、と思った」との感想。

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小説を書くときにもっとも大切なこととは?実践的なテーマを満載しながら、既成の創作教室では教えてくれない、新しい小説を書くために必要なことをていねいに追う。読めば書きたくなる、実作者が教える"小説の書き方"の本。著者の小説が生まれるまでを紹介する、貴重な「創作ノート」を付した決定版。

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