書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫 ほ 12-10)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 982
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122049918

作品紹介・あらすじ

小説を書くときにもっとも大切なこととは?実践的なテーマを満載しながら、既成の創作教室では教えてくれない、新しい小説を書くために必要なことをていねいに追う。読めば書きたくなる、実作者が教える"小説の書き方"の本。著者の小説が生まれるまでを紹介する、貴重な「創作ノート」を付した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに保坂和志を読んでやはり著者の小説観は素晴らしいと実感。小説を読むとは読んでいる体験のことであって、ああこういうタイプの小説ねとか、期待した感情(感動とか、怒りとか、)を得るために読むものではないということ。

    小説家とは小説やフィクションというコードがあってそれに沿って書く人のことではない。だから例えば著者の小説で描かれる猫は単に猫であり、何かを象徴・表象するために書かれているわけではない。また大人の男女が2人いたらそこにセックスが描かれないと小説っぽくないというのもコードだ。さらに単に会話文を続ければ小説になるものでもない。これは著者が引用するトルストイのアンナ・カレーリナの文章を読むと単純な日常の会話が臨場感をもって浮かび上がるように描かれているところなど、ああ小説によってもたらされる体験とはこういうものだよな、と思わずにはいられない。

    本書内で著者が何度か書くようにいわゆる上手い文章は小説らしいのだけれど、それはあくまでも小説のコードに従って書いているだけで、小説を読むという行為の結果として読者の価値観に変更はもたらせられないだろう。そのような小説からいかに脱却するか、それが現代において小説家になるということなのではないか。

    まあ、そうではない小説観を持つ人がいることは否定はしないけれど、私は著者の小説観を支持したいと思う。

  • 書くためにどこに意識を向けなければならないか、どこを考えなければならないか、どこを考え抜かなければならないか、がわかり、そこを乗り越えられれば、あとは書くだけ、なんだなということがわかった。

    あと、書けない時の多くの言い訳をことごとく潰されてしまった感じで、立つ瀬がないというか、退路は断たれてしまったので、書くことに向かうか、書くことを諦めるか、その二択の極めてシンプルな事になってしまった。個人的には。

  • 久々に、最初から最後まで苦痛なく読めた一冊。
    どちらかというとストーリーに重きを置いて小説を読み書きしてしまう身としては、ストーリーにおいて同様のことをすれば、それもきちんと小説では?と思わなくもない。
    他人であるからにして当然に考え方の相違はあるもので、でもそれをおいても、納得してしまう小説感だった。

  • 小説を書こうと思っているわけではないけど、小説を書き始めた知人がオススメしていたので読んでみた。
    (私自身は漫画やイラスト制作畑の人間です)

    冒頭100ページ程は著者の小説論になっていて、後半は小説の作り方に関する指南書という構成になっている。

    私が強く反発を覚えたのは冒頭の小説論について。
    小説を書きあぐねている人に対して惑わせるような話が多く、ますます書くのに迷うのでは?と思った。
    テーマはいらない
    テクニックはいらない(と言いつつ後半はテクニックっぽいことが書かれている)
    小説でしかできないことをやれ
    社会問題は扱うな
    …といった感じ。

    「一気に読めた」という人への否定も悲しかった。
    良い小説であれば長い時間その世界に浸りたいもの、というのが著者の思う良い小説らしい。
    私は面白い小説はその先が気になってどんどんページをめくっていくので、そういうものを否定された気持ちになってしまった。

    この人は小説家を増やしたくないのかな?とも感じた。

    ただ、この本は今から15年ほど前に書かれたものなので今とはまた価値観が違うのかもしれない。

  •  小説の書き方と思いきや小説とは何かが書かれた一冊。

     全然ハウツー本ではないのだけど、逆にこれはなかなかいい小説のハウツー本だと思った。
     確かに小説とは何なのかを考えなければ小説は書けない。すごく刺激された気がした。とりあえず作者の小説を読んでみたい。

  • 図書館本。ちょっと自分には合わなかった…。入門というか、作者の考えをエッセイのようにまとめたものというかんじでした。

  • 書くための技術を与える本ではないからこそ、そこはかとなくモリモリと書けそうな気が湧いてくる本。

  • けっこうズバッとやりがちなことを否定してくれてて面白かった。
    まだ著作を読んだことないんで、読んだ上で創作ノートも読みたい。

  • 読めば読むほど小説を書く難しさと覚悟を感じた。
    色々と考えた上で書かれた小説は面白い。

  • 軽い気持ちで読みはじめたら、「自分の小説とはなにか」考え続ける、とめちゃめちゃ難しいことが書いてあった。むずかしく書かれているわけではないけど、読むのにすごく時間がかかった…
    何かを書きたいと思っている人はすごく勇気づけられる本だと思う。

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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