聖域: 調査員・森山環 (中公文庫 あ 61-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050044

感想・レビュー・書評

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  • 大学時代よりタマ姉と慕って来る啓太から、突然産みたくないと言い出した妊婦の妻の柚実のことで相談を受けた三十六歳の環が、通い婚の夫に心配されながら調査を進める。濃い繋がりを持つ幼馴染みの樹一と共に柚実は特殊な宗教施設のような郷で育っていた。それ故の癖等に触れつつも方向性は重くなくさらりとしていた。

  • 岩倉梓、魚住久江と読んできて、もう、こうなったら、
    女刑事、女探偵ばかり集めて読んでやろうということで。

    今回は、明野照葉さんの「調査員・森山環 聖域」を読み返してみた。

    過酷ともいえる育ち方をした森山環だが、幼馴染の啓太に頼まれて調査を続ける中で、彼女自身も、明日へと続く道を歩んでいくようになる、一つの成長ストーリーでもある。

  • 待ち望んでいた妊娠なのに、実際妊娠すると『産みたくない』と…
    その夫から依頼され、
    原因を調査するという話
    なんだか、あれよと言う間に解決してしまった
    ただ、主人公の旦那さんはとてもステキな人でした

  • 他の作品よりライトな感じ
    ハッピーエンドなのも珍しい

  • 2015.5.20-28
    柚実と樹一の過去の問題は非常に重く、環と啓太の問題も絡んで読み応えはあるものの、もう少し深く描いて欲しいところ。また泰彦の人間性が余りに完璧過ぎるのは少々馴染めない。

  • いつものこの人の作品とはちょっと違うという印象を受けました。
    大体において、この人の作品は登場人物の頭の中の考えでストーリーが進んでいく。
    そして、実際に起きる出来事はさほどでもない、という事が多く・・・と言うのも、登場人物-主人公が内向的で仕事も屋内でする仕事に就いている事が多いから。
    でもこの話の主人公は今までになく行動的です。
    何せ、職業が調査員ですから。

    調査員の仕事をする環は彼女の事を「タマ姉」と慕う大学時代の後輩からある相談を受ける。
    それは妊娠した妻が突然、「産みたくない」と言い出したというもの。
    複雑な家庭に生まれ育ち、自分は理想的な家庭を作りたいと願っている後輩男性。

    そして選んだ女性は家庭的で、同じ思いを抱いていたはずなのに・・・。
    さらにそこには一人の男性の影も見えると言う。
    妻が子供の頃からつき合ってきた、幼馴染の男性の存在。
    そこで、環は妊婦である彼の妻について調査を始める。

    環はまず、自身がその妻に会った時、不自然に感じた事を思い出す。
    それは些細な事だが、夫婦の家に招かれた時に出された彼女の手料理から受けた印象。
    完璧に作られているものの、何もかもが料理本通りに作られた、サンプル見本のような料理。

    そこからは家庭のぬくもりというものを感じない。
    さらに、調査依頼した男性によると、彼女は人のものと自分のものを異様な程きっちりと区別すると言う。
    そんな習性から環は彼女の子供の頃いた家庭環境に疑念を抱く。
    さらに、彼女が夫に話していた出身小学校と中学校は実は偽りであった事が判明する。
    大学、高校なら分かるが、何故、小・中学校を詐称しなければならないのか-。
    さらに彼女の子供時代の事を調べていく中で、彼女が子供の頃に特殊な環境にいた事が分かる。

    この物語に出てくる登場人物はほとんどといっていいくらい、子供の頃、特殊な家庭環境にいた人ばかりです。
    突然産みたくないと言い出した妊婦もそうだし、その夫もそう。
    そして、妊婦の幼馴染の男性も主人公の環も-。

    過去とは決別したつもりでいても、それに知らぬ内にとらわれてしまう。
    特に子供の頃過ごした環境というものはずっと大人になってもその人に影響を与える。
    親の考えや主義により子供に与えられる環境。

    それは子供にはどうしようもなく、ただ受け入れるしかない。
    そして、それが特殊なものであればあるほど、その人の人生に与える影響は大きい。
    多分、過去は過去と割り切ったり、決別するのはどこか無理があるし、どこかでひずみを生むのではないかと思います。
    過去は決別するものでなく、それを見つめて、ある程度折り合いをつけていくものなのだと思います。
    でもそれは本当に難しく、しんどい事で、私も頭で分かっていても出来ていないけど・・・。

    また同じように、理想を描くという事は向上心につながるし、素晴らしい事ではあるけれど、理想だけが一人歩きしてしまうと本人を苦しめてしまう。
    現実を見つめて、理想と現実の折り合いをつけていく。
    それが実際に生活するという事だと-そんな事も書かれた本でした。

    過去と現在、理想と現実の折り合い。
    そういった事を考えさせられる本で、この人の本にしては前向きで読後感の良い本でした。

  • 待ち望んでいた妊娠なのに「産みたくない」という、その夫から相談された調査員・森山環。
    なかなか重い話だけど、とある団体の表面をなぞったような感じ。
    むしろ環自身の生い立ちのほうが興味深かった。
    (図書館)

  • 事件?の謎解きよりも、泰彦のキャラクターと環との関係性に心惹かれたなー。

  • 文庫書き下ろし

    幼少期を桃源郷という理想の共同生活を行うと掲げている反面、もうけ主義の組織で育った娘が、普通の生活を目指し頑張ってきた。

    しかし妊娠をした際、普通の子育てを知らない自分に気づいた。とてつもなく悩んだ。そんなとき、その旦那から環に相談がもたらされた。

    人間ドラマを描いた作品だ。すばらしい。

  • 妊娠を待ち望んでいたはずなのに、いざ妊娠をすると、子供はいらない!とパニックになる妻のことを調べて欲しいと、夫から依頼される。

    子供にはどうしようもできないことがある。
    親とは、家庭とは、を考えさせられる作品。

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著者プロフィール

明野照葉

東京都生まれ。一九九八年、「雨女」で第三十七回オール讀物推理小説新人賞を受賞。二〇〇〇年、『輪廻RINKAI』で第七回松本清張賞を受賞、一躍、注目を集める。ホラーやサスペンスタッチの作品を得意とし、女性の心理を描いた独自の作風はファンを魅了してやまない。『汝の名』『骨肉』『聖域』『冷ややかな肌』『廃墟のとき』『禁断』『その妻』『チャコズガーデン』(以上中公文庫)、『女神』『さえずる舌』『愛しいひと』『家族トランプ』『東京ヴィレッジ』『そっと覗いてみてごらん』など著作多数。

「2020年 『新装版 汝の名』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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