クレィドゥ・ザ・スカイ (中公文庫 も 25-7)

著者 :
  • 中央公論新社
3.79
  • (206)
  • (282)
  • (343)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 2951
感想 : 166
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050150

作品紹介・あらすじ

今だけがあって、それだけを考えていられたら良いのに。未来だって、せいぜい明日か明後日くらいしかなければ良いのに-「僕」は病院を抜け出し「彼女」の車で地上を逃げる。二度と空には、戦闘機には戻れないと予感しながら。永遠の時を生きる子供たちを描く、現代の寓話「スカイ・クロラ」シリーズ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 前作の流れから、主人公の「僕」はクリタだと思って読んだ。そして最後でカンナミが登場して意味が分からなくなった。実は主人公の「僕」はクサナギ(記憶が曖昧になって幻覚を見たり、精神障害が出ている)だと思って読み返すと全てがすっきりする。この本のエピローグから次のスカイクロラまでは病室にいるクサナギ(人格崩壊が起きて自分の事をカンナミだと思っている)の夢だと思う。スカイクロラの最初の方でカンナミがクサナギのミニスカート姿を見てなぜか懐かしく思う所や、クサナギの妹がカンナミと会う場面、スカイクロラのエピローグの最初の文章などスカイクロラと短編を再読してみて所どころにヒントがあり自分なりの解釈が出来た。

  • 『クレィドゥ・ザ・スカイ』読了。
    シリーズ最大の難解読な本にして最終章に当たると思う。「僕」が誰なのか分からないまま読み進めていたんだけど「僕」にとっては過去や未来はどうでもよくて。現在、空を飛べさえすればそれでいいという「僕」。
    そのスタンスに憧れてしまって泣きそうになった。
    大人になると社会性に属すという責任感が伴うけど。彼らキルドレはそんなことはどうでもよくて今を生きているんだよなぁ…それに凄く憧れる。自分が子どもの頃は過去や未来のことばかり考えて今のことを考えてなかった。今もそうだ。煩わしくない世界で生きたかった。せめて、子どもの頃は自由でいたかったなぁ…って思ったな。
    高校生の頃、読んだ時は話の内容の意味が全く分からなかったけど。大人になった今分かってよかったのかも…

    2019.9.28(2回目)

  • そして物語はスカイ・クロラへ…最初は、ん?って感じで、最後は一応「なるほど…」と、わかったようなわからないようなでした^^; 世界観は曖昧で謎だけど内面の葛藤はリアル。まるで子供の目線で世界を見ているようです…短編集も楽しみです

  • 毎度毎度、森さんにはやられてしまいます。

    面白かったぁ。

    毎回意味が分からないまま、戦闘機が飛ぶシーンには興奮させられました。

  • 「僕」が誰か自力ではわからなかった…。
    ので、短編集を読む前に考察サイトを検索して、納得してもう一度読んだ。

    でも「僕」が誰でも「僕」は構わないんだろう。
    空さえ飛べれば。踊ることができれば。

  • 「スカイ・クロラ」シリーズの一冊。物語内の時系列では、第4巻に当たります。過去と現在、夢と現実が交錯して、シリーズ全体が迷宮のような構成に仕立てられています。

    栗太仁朗の記憶の断片を持つと思しき元パイロットの少年は、病院から抜け出して、フーコや相良亜緒衣を頼って組織の追跡をかわそうとします。そんな彼を、なぜか草薙水素の影が追いかけてきます。

    亜緒衣は、過去を持たないキルドレの少年が、やがて記憶を取り戻すはずだという確信を抱いていました。なぜなら彼女は、ひそかに少年に対して、キルドレから普通の人間に戻るための薬の実験をおこなっていたからです。そんな彼女の思いをよそに、少年はただ飛びたいという願いだけを心に抱き続けます。

    そして、そんな彼の生き方は、キルドレを利用する社会を批判するYA新聞の杣中だけでなく、戦いに生きるほかないキルドレに同情的な亜緒衣にも、けっして理解できないものでした。ただ草薙だけが、かつての自分自身の心を受け継いだ少年を理解しており、理解しているがゆえに、もはや自分自身でなくなった彼に死を与えることと、かつての自分自身である彼によって現在の彼女に死を与えることの狭間で揺れ動いていました。

    やがて少年は、組織から逃げるために散華に乗り、パイロットとしての腕前が以前と変わらないことを証明して、ふたたびパイロットに戻ることになります。そんな彼の生き方は、すでに亜緒衣から遠く離れてしまっており、亜緒衣は彼の選択を見届けて、みずから死への道につきます。

    『スカイ・クロラ』を読んだときには、物語の静謐な雰囲気に惹かれましたが、この巻で物語の全体像が示されたことで、改めてこのシリーズが好きになりました。途中、成長することを拒否するキルドレの生き方と、地上に暮らす大人たちの生き方を対比させるピーター・パン賛美の物語になってしまうのではないかと懸念したこともありましたが、キルドレであることをやめた草薙の視点を組み込むことで、そうした安直な図式に回収されることなく、空に生きるキルドレの生き方のピンと張り詰めたような美しさを保つことに成功しているように思います。

  • ナ・バ・テアに仕掛けられた作者の罠、語り手をミスリードさせる手法が、まさかここまでの伏線だったとは・・・・
    正直、混乱して、いまだに何が正解なのかはわからない。
    ただ1つ言えることは、私が漠然と感じていたとおり、これは草薙水素の物語だということ。
    地上での酩酊感と、空での爽快感、この2つが交互にやってくることにより、読者はますます話にのめり込んでいく。

    この作者は凄いな、とあらためて思った。

  • 大人なのに子供のままの存在。戦闘機に乗りたいのにもう乗れないかもしれない苦悩。記憶をなくした青年。スカイ・クロラシリーズの世界観を堪能できる。

  • 飛行機のシーンの表現がいいと思う

  • シリーズを通して読んだ後にもう一度読みたい。

全166件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森博嗣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×