クレィドゥ・ザ・スカイ (中公文庫 も 25-7)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050150

感想・レビュー・書評

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  • 「僕」が誰か自力ではわからなかった…。
    ので、短編集を読む前に考察サイトを検索して、納得してもう一度読んだ。

    でも「僕」が誰でも「僕」は構わないんだろう。
    空さえ飛べれば。踊ることができれば。

  • 「スカイ・クロラ」シリーズの一冊。物語内の時系列では、第4巻に当たります。過去と現在、夢と現実が交錯して、シリーズ全体が迷宮のような構成に仕立てられています。

    栗太仁朗の記憶の断片を持つと思しき元パイロットの少年は、病院から抜け出して、フーコや相良亜緒衣を頼って組織の追跡をかわそうとします。そんな彼を、なぜか草薙水素の影が追いかけてきます。

    亜緒衣は、過去を持たないキルドレの少年が、やがて記憶を取り戻すはずだという確信を抱いていました。なぜなら彼女は、ひそかに少年に対して、キルドレから普通の人間に戻るための薬の実験をおこなっていたからです。そんな彼女の思いをよそに、少年はただ飛びたいという願いだけを心に抱き続けます。

    そして、そんな彼の生き方は、キルドレを利用する社会を批判するYA新聞の杣中だけでなく、戦いに生きるほかないキルドレに同情的な亜緒衣にも、けっして理解できないものでした。ただ草薙だけが、かつての自分自身の心を受け継いだ少年を理解しており、理解しているがゆえに、もはや自分自身でなくなった彼に死を与えることと、かつての自分自身である彼によって現在の彼女に死を与えることの狭間で揺れ動いていました。

    やがて少年は、組織から逃げるために散華に乗り、パイロットとしての腕前が以前と変わらないことを証明して、ふたたびパイロットに戻ることになります。そんな彼の生き方は、すでに亜緒衣から遠く離れてしまっており、亜緒衣は彼の選択を見届けて、みずから死への道につきます。

    『スカイ・クロラ』を読んだときには、物語の静謐な雰囲気に惹かれましたが、この巻で物語の全体像が示されたことで、改めてこのシリーズが好きになりました。途中、成長することを拒否するキルドレの生き方と、地上に暮らす大人たちの生き方を対比させるピーター・パン賛美の物語になってしまうのではないかと懸念したこともありましたが、キルドレであることをやめた草薙の視点を組み込むことで、そうした安直な図式に回収されることなく、空に生きるキルドレの生き方のピンと張り詰めたような美しさを保つことに成功しているように思います。

  • ナ・バ・テアに仕掛けられた作者の罠、語り手をミスリードさせる手法が、まさかここまでの伏線だったとは・・・・
    正直、混乱して、いまだに何が正解なのかはわからない。
    ただ1つ言えることは、私が漠然と感じていたとおり、これは草薙水素の物語だということ。
    地上での酩酊感と、空での爽快感、この2つが交互にやってくることにより、読者はますます話にのめり込んでいく。

    この作者は凄いな、とあらためて思った。

  • シリーズを通して読んだ後にもう一度読みたい。

  • この空気感はこのシリーズ作品でしか味わえない。
    空を飛んだことはないけれど、空を舞う爽快感、青の美しさに惹かれる「僕」のことも、強いリアリティが感じられる。

    最後の方に押井守の解説があるが、子供と大人、自由についての話が端的にこの作品達の根幹にある何かをきれいにいってくれている。
    個人的には、文筆家の内田樹がかつて言っていた「大人」のロールモデルがうまく形成されなかった現代に生きる人たちの問題意識に通ずるところがある気がする。

  • 「スカイ・クロラ」シリーズ

    96ページからの会話が好き。最初に読んだ時は全く記憶になかったが、よく見ると、認知症について解説しているような場面がある。全体的な認識としては、子供は物事を感覚的に理解しているが、大人は言葉で説明し理解したがる?
    シリーズを読み進めて来ると勢いで読み切ってしまうところかも知れないが、じっくり読めば一番興味深く、感情的で核心を突いている巻の様に思う。

    *2008.6 *2016.10

  • 読み終わった直後の感想、
    え?なに?全然わからない!!でした。笑

    何回もシリーズ読み返して、スカイクロラに戻ってまた読み直して、自分なりに考えて、自分なりの答えを見つけた。つもり。
    いろんな解釈があっていいのかなあ。
    森博嗣の思惑通り。これもきっと。


    シリーズ最終話。「僕」は誰なんだろう、とずっと考えながら読んできて、最後、あーそうだったかと、もうゾクゾクした。
    わたしはこの話の「僕」はクサナギだったと思いますよ。

    もう一冊あるみたいだから、読むのたのしみ。でも、読んでも謎は、解けないんだろうなー。

  • 【怖いかい。信じる事は?裏切る事は?だけどそれも全部君の罪だから。ちゃんと遂行するべきだ。】

    成長とは、育てる側の衰退でも有る。そのことに気が付いたとき、人は前にも後ろにも動けなくなる。それがスカイクロラ現象だ。もちろん嘘である。でもさ、よく考えてごらんよ。僕らだって心は何にも変わってない。見てくれなんてそもそもが両親からの借り物なんだから。僕はぞっとするね。それでも、やっぱり、人だから仕方のないことだと君達は言うのだろうけど。

  • クリタの記憶を失いカンナミとしての「僕」?。クサナギの一人称も僕で本当にややこしい。クサナギは病院で過去に一度カンナミと会っているはずなのに2人ともそれを忘れてるような会話があるのは、キルドレは過去の記憶が曖昧だから…?謎が増える。。サガラに何をされたかもはっきり分からない。

  • スカイ・クロラシリーズ

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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