自民党: 政権党の38年 (中公文庫 き 34-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050365

感想・レビュー・書評

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  • 自民党政治の変遷だけでなく政策決定過程や派閥のダイナミズムについても書かれており、勉強になった。

  • 戦後70年を振り返る夏の自由研究、政治編。自民党政治=戦後政治史を概観した秀作。
    自民党の成立には、冷戦・中選挙区・派閥が三位一体で関わっている。(社会党に対抗するための保守合同、かといって圧倒的多数はとれない中選挙区制で多数をとり続けるための派閥制度)。
    もともと派閥は、カリスマ性と明確なビジョンや政策をもったリーダーによって率いられていた。この派閥を拡大する能力が権力への近道となり、その行き過ぎが金権政治となって国民の信頼を損ない、また派閥の組織維持自体が目的化してきた。国際情勢の複雑さが増し様々な責任を求められる時代に、自民党は硬直化し、大胆なリーダーシップを発揮できなくなった。
    本書の取扱い範囲は宮澤内閣までだが、その後、安倍、福田、麻生(ついでに鳩山)内閣が1年交代したあたりなど、本書に登場する彼らの父・祖父と比べた見劣り感には絶望感を覚える。(政治家の経験、人脈、金脈を継承するための二世議員の増加は必然であり、60年代から既に始まっていた)。
    さて本書では、「小選挙区における投票は、実は主として党首に対する投票なのである」と指摘されている。このリーダーで、この政策で政治をやるという明確な方針の提示が求められている。そうして選ばれた現・安倍内閣の源流をたどれば、当然祖父岸信介となるのだろう。本書では、第3代総裁の岸を事実上最初の総裁ととらえている。また保守本流の定義を「日米協調路線の維持強化」とし、その確立を吉田路線と岸路線(安保改定)の融合に置いている。なるほど、さすれば安倍内閣の安保改定路線は、まさしく保守本流中の本流、と言えるようだ。

  • 戦後政治を保守本流の点から考える上で良い一冊である。岸信介が確立した経済重視+日米協調いうスタンスがどのように続いていったか、どのように変化していったか。
    派閥政治においては、政策・人物本位の組閣は難しかったものの、派閥均衡という枠組みの中で政治課題にアタックしたのもまた事実である。そして「政治」に長けた有為なリーダーを輩出できたのもまた事実であり、最近の「言葉」「雰囲気」に長けたリーダーとはまた違うものではあるだろう。
    この本を読んでいて心配になるのはポスト安倍である。派閥の衰退と官邸強化に伴う閣僚人事によって、次のリーダーが全く見えない。良くも悪くも政策・人物本位であり、政策対立がわからない。
    日本政治の来し方を考えさせられる一冊である。

  • 自民党が包括政党化してきた歴史を追う秀作。

  • 僕が読んできた中で、自民党の歴史を学ぶ上では最高の読み物です。政治の裏側とその功罪がわかります。
    人文学部経済学科一年遠藤準也

  • 北岡伸一渾身の作ではなかろうか。読み応えアリ。
    55年体制が崩壊するまでの戦後政治史を、平易に、かつ明瞭に著した本。特に派閥力学の分析を行っている点や、世論との関連などの著述は興味深い。
    渡邊編『戦後日本の宰相たち』と合わせて読めば、昭和戦後政治史の基本的な部分は十分カバーできる。

  • 自民党政治の分析としてはこの本を置いてない。政治過程論・日本戦後政党論の最高峰。
    ただ、この本の中での「保守本流」が親米であるという点から清和会系まで含んでいるあたり、この本が書かれた時期が日本の政治的立場やイデオロギーが喪失し、どういうスタンスを日本が取るのかが見えていなかった時代だったことを思わせる。
    2009年現在、民主党や自民党左派(保守本流)と清和会系との断絶はより大きくなっている。国内政治と台頭する中国への対応という点こそが2009年現在の政治的断絶の深部であり、その意味ではこの本も55年体制の総決算として以上にとらえられるべきではないのだろう。政治学の業績は、うちたてられた傍から風化する。しかし、それがよいのだ。過剰に「聖典」となる社会科学の本に、いい本などない。

著者プロフィール

国際協力機構(JICA)特別顧問、東京大学名誉教授、立教大学名誉教授

「2023年 『日本陸軍と大陸政策 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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