世界見世物づくし (中公文庫 か 18-11)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050419

感想・レビュー・書評

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  • 大正から昭和初期に中国、ヨーロッパ、東南アジアと放浪した詩人の随筆集。当時の様子と雰囲気が伝わる。海外についてのエッセイの寄せ集めなので一貫した印象は薄い。

  • この人の腹が据わっている文章と生き方がとても好きだし、本書も実際とても面白く「支那」関係の洞察は今でもよく通用すると思う。
    貧乏についての文章にはとくに笑った。曰く「貧乏も、ひとり身でやっているのだったら、からだがひきしまって、そんなにわるいものでもない」。「貧乏に平気な女がいたら、と僕はあくがれたほどだ。それほど例外なしに、女は、貧乏ぐらしの苦しさが辛抱できない」。「中西悟堂君は、米や、パンを排して、しばらく松葉を摘んで常食にしていた。蛙をつかまえて、あたまから呑んでしまうのをみていて三歳位だった僕の息子が、わっと泣き出したことがあった」。「真の貧乏人とは、もっと筋骨の通った堂々としたもので、福士幸次郎、吉田一穂、山之口獏などのような、不退転な貧乏のことをいうのだ」。「『お前、一人殺したら、日本金千円やるといったらやる気あるか?』と、Dという友人が言ってきたとき、僕は、それもいいな、とおもったくらいだ。ともかく、巴里の貧乏から脱出できるのなら、たいがいなことはやってもいいとおもったものだった。恐らく、戦後の青年の気持ちもそれに似たようなものではなかったろうか」。「西洋の貧乏は、決してたのしいものではない。竹の家、紙の家の余情はなくて、鉄鎖と石室の非情に終始している」。「ところが戦争を越えてからの現在の日本は、あの頃の西洋とよく似てきて、先にも言った通り、金がなければ一日もすごせない。貧乏はできなくなったのだ」。

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著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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