お腹召しませ (中公文庫 あ 59-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 690
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050457

作品紹介・あらすじ

お家を守るため、妻にも娘にも「お腹召しませ」とせっつかれる高津又兵衛が、最後に下した決断は…。武士の本義が薄れた幕末維新期、惑いながらもおのれを貫いた男たちの物語。表題作ほか全六篇。中央公論文芸賞・司馬遼太郎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 安藝守様御難事だけ理解できない。賄賂を隠れて渡す方法はいくらでもあるんじゃないか。それくらい御一新直前の武家社会が歪な進化をしてると言いたいのか?朝の地下鉄でこの話を読んで一日モヤモヤした。

  • 安定の浅田ワールド。

  • 江戸末期を時代背景とした短編6つの小説。お腹召しませは、お家を守る為に切腹を決意した高津又兵衛が家族や周りの態度からお家制度そなものに矛盾を感じていくとても楽しい物語。大手三之御門御与力様失踪事件之顚末や安藝守様御難事など形骸化した武家社会の仕組みや決め事の中で窮屈に生きる武士達がむちゃくちゃ面白く描かれている。その他、感動するものもあり繰り返し読みたくなるものばかり。

  • 現代の会話から過去の話へと導き出すところ、ほんとうに旨いと思います。「お腹召しませ」他数編の短編集。 「お腹召しませ」もいまどきの人間の感覚から、武士といいながらも数百年も平和だとこうなるねぇ・・・とうなずくような内容。 この他の短編集も現代への課題も織り交ぜて語りかけているようで面白いです。「現代の若者たちは煮え滾る欲望を、政治や思想に託けて発散しなければならないほど貧しくはなく、また愚かしくもないのである」@御鷹狩 などなるほどと思いますね。なかなか楽しめます。

  • 浅田次郎氏は、娘さんがいるのかもと感じた。

  • うぬれ、竹中平蔵。こんなところに迄でしゃばりやがって。斬り捨ててやる。
    「お腹召しませ」
    表題作を途中迄読み進めたところで本書が行方不明になってしまった。何処を探しても出てこない。まぁ、その内、出て来るだろうと高を括っていたら案の定、引っ越しの際に見つかった。

    史実をベースにしたフィクション「安藝守様御難事」は主人公の浅野安芸守茂勲と同じく読んでいるこちらも意味が分からない「斜籠(はすかご)」とは何ぞや?分からないまま文字を追って行くのは苦痛で途中で投出しそうになりながらもんとか文末に到達。
    浅野安芸守茂勲が 「誰も見てはいないのだ」と悟った場面から斜籠に飛び込むシーンに至りビデオを戻すが如く何回もトイレに持込み読み直してやっと理解。
    「女敵討」
    「御鷹狩」
    も価値感が大きく変わる時代の流れの中でもがく人間模様が描かれていて良かった。

  • 「五郎治殿御始末」に続く幕末短編集。
    話の前後に自分の子供の頃などのエピソードがあるのが、話の理解の深さを助けてくれておもしろい。(HPの日記より)
    ※2008.12.12購入@調布Book Off
     2008.12.14読書開始
     2008.12.20読了
     売却済み

  • 浅田次郎の小説は初めて読んだ。歳をとったせいだろうか。登場人物の心の機微が分かる。おそらく若い頃に読んでもピンと来なかっただろう。

    物語は6つの短編で構成されている。
    落語の人情噺のようなプロットで、語り口も落語のようだ。

    全編が家と個人の板挟みになりながらも生き方を決断さざるえをえない侍の話である。こう書くと重々しい小説かと思われるかもしれない。テーマとしては重いのだが、不思議なことにユーモアを感じる物語ばかりである。著者の文体もあるが、死を恐れないイメージの武士が、現代の我々同様の小市民として描かれている点もポイントだ。切腹は痛そうだから避けたいし、惚れた女には会いたいし、知り合いを斬るのは気がひける。

    この時代の常識の中で暮らしている武士の中に、こんな小市民的な奴もいただろうな。そう感じてやまない。不思議なリアリティーがあるのだ。
    学校で学ぶような正史がある一方で、歴史に名前が残らないような小市民が懸命に暮らしていたのだ。
    歴史の足元のリアリティーはノンフィクションでは描けない。なぜなら記録が残っていないからだ。しかし、現実には歴史に残らない人々のほうが圧倒的に多いのだ。だからフィクションというツールが必要になる。

    浅田次郎の時代小説はフィクションの意義と力を教えてくれる。

  • 短編集です。ちょっと物足りなかったが、現代との比較するところが面白かったかな。

  • 稀代のストーリーテラー浅田次郎が自らの幼少時代に祖父母から聞いた話…という枠組みで語られる、幕末から維新にかけての混乱期を舞台にした時代小説6編。枠物語の他に、跋記と称したあとがきでも語られる創作背景が興味深い。

    250年間に及ぶ平安の中で失なわれて久しい武士道(もっとも、近年では江戸期にはそんなものは存在しなかったというのが通説のようだが)の有り様を描いた表題作「お腹召しませ」の他、どの作品も、転換する価値観の中で「旧来の価値観に従えばダメな男」が描かれる。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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