ミーナの行進 (中公文庫)

  • 1626人登録
  • 3.96評価
    • (172)
    • (216)
    • (131)
    • (25)
    • (4)
  • 183レビュー
著者 : 小川洋子
  • 中央公論新社 (2009年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051584

ミーナの行進 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 物語の始まり、朋子を優しく迎えてくれた一家はまるで夢の中の住人のように完璧な存在に思えた。
    朋子がお姫様であるかのように接してくれる伯父さん、入学式についてきてくれる伯母さん、優しく部屋に招き入れてくれるおばあさん、愛情たっぷりのご馳走を作ってくれる米田さん、静かに見守ってくれる小林さん、愛らしいポチ子、そして聡明な美少女ミーナも。
    なんて素敵な家族だろうと、朋子と一緒になって感激してしまう。

    物語を読み進めていくと、彼らが最初に考えていたような完璧な人達ではないことが分かってくる。
    そして、夢の住人に見えていた時よりもずっと好きになってしまっていた。

    私はミーナのマッチ箱の物語がとても好きだ。
    彼女の点す美しい明かりを見てみたい。
    朋子とミーナがローザおばあさんと米田さんにバレーボールを披露しているところが見たい。
    出来ることなら参加したい。
    一緒にジャコビニ流星雨を待ちたい。
    2人の少女の宝石のような秘密の時間を一緒に過ごすことが出来たらどんなに素敵だろう。

    …なんてことを考えてしまうけれど、この物語は十分に夢のような時間を与えてくれたとも思う。
    とっても幸せな優しい時間を。

  • 主人公の朋子、ミーナ、伯父さん、叔母さん、龍一、ローザおばあさん…

    『ミーナの行進』に出てくる人は皆それぞれ心のどこかに埋まらない隙間のようなものを持っていて、それがところどころに顔を出す。ミーナのか弱さ、叔母さんの病的なまでの誤植に対する執着、龍一の父に対する屈折した思い… その隙間が大きく口を開いていて、そこへ顔を埋めることで充足を得るような物語も世の中にはあると思うけれど、この物語に描かれる隙間は、後で時に笑いを交えながら語ることのできるようなものだ。「この傷、子供の時にちょっと転んだ時のやつ」などと見せびらかすような傷。悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。

    馴染みがある土地が多いのもよかった。伯父さんの工場のある阪神尼崎は親戚が住んでいてよく行ったし、伯父さんの通うマンションのある江坂は自分のホームからごく近い。それゆえに彼女らのことをとても身近に感じた、というのもありそうだ。

    読む前からそんな気がしていたが、たくさんの人に読まれるといいなと思える小説だった。

  • ノスタルジー感溢れる優しい小説。登場人物みな暗い面を抱えているので、起承転結のいつ「転」が来るのだろうかと構えながら読んでいましたが、最後まで穏やかな内容で心地良い余韻を残したまま読了しました。

    「写真を見るたび私はつぶやく。全員揃ってる。大丈夫。誰も欠けてない。」

    非常に心に残った素敵な一文。
    自分の思い出の写真に当てはめて、心の中で呟くとぐっと来るものがあります…。

  • 日曜の新聞の別刷りに掲載されていたが、その時は読まなかった。週1回だからボリュームもそこそこあって、なんとカラー刷りでイラストが印象的だった。もしかしたら、新聞を読み始めた小中学生も読者に想定していたかも知れない。
    どこか遠い国のお姫様だったのに、と幼い夢想していたとあるけれど、チョッとありそうな話にしたのが、この小説かな。
    親の都合で叔母さんの家に預けられた少女。お婆さんはドイツ人で、その血をひく叔父さんはダンディで飲料メーカーの経営者。住まいは豪邸で、家事を切り盛りするお手伝いさんも家族のよう。そして、病弱で物語の好きな美少女の従妹、ミーナ。
    叔父さん、留学中の従兄、図書館のお兄さん、と男性は存在感が弱い感じがする。少女の夢は男性はハンサムならそれ以上必要ないのかね。
    しかし、何故コビトカバなんだろう。普通なら白馬、少し譲ってポニーが出てくるところでしょう。確かにカバのお尻に寂しさを感じたけれどね。
    マッチの絵からミーナが語る短い物語。こういう小道具がとても効いている。

    内田樹さんの本に、ずっと一緒にいられないという思いを共有するのが家族だとあった。どの本にあったか忘れてしまったし、正確な文言を書けないけれど、この本を読みながら、内田先生の言葉をついつい思い出してしまった。
    だが、巻末にはそれほどの寂しさを感じなかった。素敵な思い出を共にしたという思いがあれば幸せということかな。

    世代的に、ラジオ英会話のマーシャ・クラッカワさんとかミュンヘンオリンピックの男子バレーとか、普通の読者以上にそれよく知っているよと思う処が多かった。

  • おもしろかった。わくわくすると同に心がほっとするような感じ。
    ホラーめいた奇妙な話とか悲しげな話が苦手なので、小川洋子って避けていたふしがある(スミマセン)のだけれど、これはそういう要素がなく(ファンタジーっぽさはあるけど、これくらいはわたしも受け入れ可能)、とてもよかった。
    やっぱり文章が美しいなーと。ときどき、読んでいると、ぱあああっーという感じで目の前に風景が広がるような感じがした。
    小川洋子さんのエッセイとかも読んでみようかな。

  • 完璧なようでそうでないからこそ素晴らしい、そんな家族と過ごした素敵な一年の流れが柔らかく描かれていて、読み終わるのが勿体なくなってしまった。

    ポチ子が死んでしまった後の朋子の少女らしい気持ちに切なくなった。


    「朋子。月が二つ。だってお月様は二つないもの。ないものなのにこうして二つある。同じ大きさで横に並んでる。」
    「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや」
    好きな台詞です。

  • 1972年、ミュンヘンオリンピックの年に親戚の芦屋に住むことになった朋子。一歳年下のミーナとその家族の一年間を描く物語。
    大きな事件が起こるわけではないが、出会いから別れまでの場面の一つ一つが実に印象深い。コビトカバのポチ子の存在も見事で、この家族を物言わぬ一頭が象徴している。家族の個々に問題や悩みはあっても、底知れぬ包み込むような大きな何か(私は『信頼』を読み取った)があるから、この一家に温もりを感じる。

  • 小川洋子さんの小説らしく、ほっこりとする読後感。
    芦屋のお金持ちの親戚の家に居候した1年間の出来事が、これっと言った大事件もおこらず、淡々と進んでいくのだが、やはり小川さんの小説らしく「ファンタジー色」はあった。
    コビトカバの「ポチ子」がかわいい。
    そして、ミーナが強い女性になっているのも、朋子が図書館で働いてるのも、なんだか嬉しかった。

  • ミーナと過ごした、1972年。
    月日が流れ、あの場所がなくなってしまっても、誰かが天に召されていなくなってしまったとしても、心の中で決して色あせることはない、きらきらした思い出たち。

    終わりが近づくにつれて涙がこぼれたのは、きっと、そんな美しい物語をもっともっと聞かせてほしかったから。

    寝る前におかあさんがそっと読んでくれたような、秋の夕暮れ時のやわらかな日差しが似合いそうな、暖かみのあるほんわりとした物語だった。

  • 朋子は母娘二人で暮らしていたが、将来を考えた母が東京の洋裁学校へ一年修行することになり、その間大坂の叔母の家へ下宿する。そこでは個性豊かな人々が、深く色濃い独特の世界を形成していた。

    ***

    小川洋子さんの書いたお話にしては明るかったですね(※妙な偏見)。いつも通り浮気ネタも入っていましたが、比較的ライト(※妙な慣れ2)。ラストの収束も前向きでびっくりしました(※妙な慣れ3)。
    さて、タイトルの『ミーナの行進』。作中の印象的な場面、ポチ子(※カバ)にまたがったミーナの登下校の様子を指しています。カバは常に表面から赤い汗が出ているはずですが、ミーナの服は無事なのでしょうか……。まあ、それはさておき、もちろんミーナwithポチ子の登下校=行進にはおさまらないと考えてもいいでしょう。ミーナは読書によって、実にいろいろな世界を渡り歩いています。それは司書のとっくりさんも舌を巻く(※実際にはミーナに対してではないですけれども)ほど。最終的には日本を飛び出していってしまうのですから、ミーナの行進範囲は広い。その内宇宙にでも行っちゃうんじゃないですかね。
    空間の面から考えると、いろんな空間があるんで面倒くさいのですが、印象的だったのは光線浴室でしょうね。そもそもミーナの住む家自体が、とても実在するとは思えない設定なので、現実世界と隔離されている住居と捉えられそうです。その中でも光線浴室はさらに隔離されている。しかも、中には大体シミーズ姿の少女二人が寝っころがってたり、こっくりさんしてたりするんですから、かなり異様。こうした隔絶された空間で、迷信めいた治療やこっくりさんなどを行っているので、ここは原始的な意味合いを感じることもできますし、神聖な空間とも思えそうです。フラッシーを信仰するご家庭っていう時点で、けっこうあの家自体が浮世離れしている場所だとも思います。
    で、山火事の時に一度御屋敷から、おじさんの会社の寮へ移り、そのたった一晩でポチ子が急逝します。見様によっては、俗世へと家族みんな(※ポチ子除く)が降りたら、幻想的な世界の要素として柱を担うポチ子が死んだ。とすれば、ポチ子はなんだか信仰の対象の一部ともなっていたのではないかなー、と思います。アマゾンという原始的なイメージの場所からやってきたこともありますしね。

    ひっくるめて、『ミーナの行進』は世界を開拓していくお話だったと言えそうです。もともと俗世とは程遠いお屋敷に住んでいたミーナが、さまざまな出来事によって次第に世界を現実へと広げていく。それをポジティブに描き切ったことによって、小川洋子さんにしては明るい(※妙な偏見4)となったのでしょう。
    ただ、どこか心に空洞を感じました。小川さんの小説を読むたびに感じる寂しさなのですけれども、これが今回のような前向きな展開に対してどうして起こったのか、自分でもよく把握できていません。おそらく、伯父さんの浮気がうやむやに終わったようである事とか、米田さんとローザおばあさんとの遠い世界へ旅立つ境界越えのイメージだとか、そういうのが原因かなあ、と思います。
    よく聞くお話かと思いますが、子どもやお年寄りが神聖視される文化を日本は持っているといいます。それとリンクさせると、ミーナはかなり現実と離れた世界にいたといえますし、ローザおばあさんの米田さんの死後は、確実に違う世界へと入っています。
    とすれば、ミーナが世界を開拓した、とさきほど述べました意味がさらに延長されます。いいかえれば、ヒトが生まれ生きて死んでいく過程を、世代別に描いていったのではないかということです。それを現実世界と現実ではない世界との混じりあいや越境によって表現したのかもしれません。
    そう思うと、いずれミーナはまた違う世界へと入り込んでしまうかもしれませんし、他の登場人物たちも旅立って行ってしまうでしょう。それを楽観視すべきか、それとも気にしないことが肝要なのか、わたしには分かりません。

全183件中 1 - 10件を表示

小川洋子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
東野 圭吾
伊坂 幸太郎
梨木 香歩
有効な右矢印 無効な右矢印

ミーナの行進 (中公文庫)に関連する談話室の質問

ミーナの行進 (中公文庫)に関連するまとめ

ミーナの行進 (中公文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ミーナの行進 (中公文庫)の作品紹介

美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない-ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。あたたかなイラストとともに小川洋子が贈る、新たなる傑作長編小説。第四二回谷崎潤一郎賞受賞作。

ミーナの行進 (中公文庫)の単行本

ツイートする