それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

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著者 : 吉田篤弘
  • 中央公論新社 (2009年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122051980

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ゆったりしたテンポで描かれる心地よい小説。
    「暮らしの手帖」に連載されていたそうです。

    路面電車の走る町に、仕事をやめて引っ越してきた青年・大里。
    隣町の映画館<月船シネマ>によく通っているのが主な理由だった。
    部屋の窓からは、隣の教会の白い十字架が見えるのも気に入っている。

    道行く人が「3」とかかれた袋を持って歩いているのを不思議に思っていたところ、「トロワ」というサンドイッチ屋があるのに気づく。
    3と書かれているのはトロワの袋だったのだ。
    シンプルなサンドイッチがとても美味しい店に通うようになり、店主の安藤さんと息子で小学4年生のリツとも親しくなっていく。
    リツくんにはオーリィと呼ばれます。

    「そろそろお客さんをやめてほしい」と安藤さんに言われた大里は拒否されたかと動転するが、店で働いて欲しいという意味だった。
    サンドイッチの作り方を初歩から教えてもらい、それに合うような美味しいスープを工夫することに打ち込むようになっていく。

    月船シネマでは古い映画がよくかかり、大里はそこに出てくる脇役の女優の実はファンなのだった。
    緑色のベレー帽をかぶった女性に、映画館でよく出会うことに気づいて‥
    不思議な縁とひととき通い合う心が心地よい。

    嫌な人が誰も出てこない、どこにでもありそうでいて、ひととき夢の中に入ったような世界。
    主人公が天職を見つけたと考えれば、何も起こっていないわけではないけれど。
    サンドイッチやスープが食べたくなること請け合いです!

  • ブクログ仲間さんたちにものすごく愛されていて、気になってしょうがないのに
    図書館には例のごとく置いてなくて、古書店でも見かけたためしがなく
    それほど「この本は私の宝物!」率が高いのだなぁ、と予想はしていましたが。。。

    ほんとうに、巡り会えてよかった♪としみじみ思える本でした。

    隣町の「月舟シネマ」に通い詰めるオーリィ君ではないけれど、
    ゴトンゴトンとのんびり走る二両編成のかわいい路面電車も
    アパートの窓から見える教会の白い十字架も
    ガラスの向こうで流れるような手順で作られる、トロワのサンドイッチも
    野球帽をかぶった少年となって口笛をふきながら銀幕を横切るあおいさんも
    ぐつぐつ音をたてる鍋から、温かい湯気をたてて器に注がれるスープも

    小さな映画館のスクリーンに映し出されるセピアがかった映像のように
    温かく、柔らかく、目の前に浮かび上がるのです。

    ハラハラドキドキするような事件は何ひとつ起こらないけれど
    憧れ続けた銀幕の中の少女が、時をこえておばあさんになって現れても
    変わることのない崇拝を胸に、シャツもジーンズもスニーカーも新調して
    彼女を訪問するオーリィ君のように

    スープの冷めない距離にいる(あるいは、いてほしい)誰かをいつも心に描きながら、
    ささやかな日々の暮らしを大切に生きたいと思わせてくれる、素敵な物語です。

  • すごくよかったです...。

    路面電車、おいしいサンドイッチ屋さん、隣町の月舟シネマ、教会、となんだか素敵な要素のつまった町に引っ越してきたオーリィさんのお話。

    安藤さんと息子のリツくんのきっとお互いのことを大切に思っているのに、どこかぎこちない親子関係が少し切なかったです。安藤さんもリツ君も健気。リツ君が教会の十字架に祈る一瞬の場面が好きです。
    大家のマダムとオーリィさんのお姉さんが楽しい人で好きだなぁ。マダムの昔話、お姉さんの思い出も素敵でした。
    オーリィさんとリツくんの会話もおもしろかったです。

    オーリィさんがサンドイッチ屋で働き、スープ作りに夢中になる中で、仕事って誰かのためにすることで、しかもその誰かをできるだけ笑顔に近付けることだったと立ち返るシーンにこちらもはっとなりました。

    そしてオーリィさんが恋した女優との時(というかスクリーン?)を超えた出会い。ドラマチックで心地よい展開でした。

    スープができてからのじんわりじんわりですが、静かであたたかい盛り上がり方がよかったです。

    読み終わってからは、冗談でなくスープのことばかり考えてます!
    ついでに夜啼きそばとサンドイッチのことも…(笑)
    おいしい香り漂う、やさしくてあたたかいお話でした!

    月舟シネマのポップコーン売りの青年のお話とかも読んでみたいです。

  • 読後の余韻が暖かい。
    スープを飲んでほっこりしたくなる。
    私が玉子スープといい、いもうとが野菜スープという、あのスープを作ろうか。
    そしてこの本をもう一度読み直すのもいいな。

    サンドイッチ屋さん「トロワ」で働き始めたオーリィくん。
    お味噌汁の美味しさを買われて、サンドイッチに合うスープを作ることになる。
    こんな風に書くと味気ないのだけど、漂う空気が二両編成の路面電車にゆられているような心地よさ。
    スペインオムレツのサンドイッチ美味しいそう。食べたい。

    「どんな職種であれ、それが仕事と呼ばれるものであれば、それはいつでも人の笑顔をめざしている。」

    「ひと口めより、ふた口めの方がおいしいけど」
    「そうなのよ。でも、よく考えてみると、本当においしいものって、そういうもんじゃないの?」

    彼のあおいさんへの想いとか、安藤さんの不器用さとか、リツ君と森田君の関係とか、ついフフフと笑いがもれる。
    ただ、大人びて礼儀正しい子供はちょっと物悲しいな。

  • ブクログ仲間さんがお勧めするこの本。ずっと気になっていてやっと読めました。

    何か大きな出来事とかがあるわけではなく、普通にある日常を描いている。でも、その日常がのんびりとしていて、ほっこりしていて、慌ただしい毎日を過ごしている私を本を読んでいる間、穏やかな時間を与えてくれた。

    「時計」のお話、リツくんが、マダムが、亡くなったお母さんの、ご主人の形見の時計を毎日ねじをまわして動かし続けていた。亡くなった後の時間を受け継いでいるように・・・
    同じことを、小学生の息子がしていたからびっくり!!
    亡くなった私の父の腕時計を欲しいと言い、私の知らない間に息子は毎日ねじを回して動かし続けていた。父との時間を一緒に過ごしてくれてるようで・・
    このお話を読んだとき 涙が止まらなかった・・・
    毎日の何気ない時間を大切にしたいなぁと思った。

  • ブクログでの評判が良く、ず~っと気になっていた本。
    ゆっくり、ゆったり、時間をかけて読むのが似合う本だと思いました。
    肩の力をふ~っと抜いて、とにかくおいしいあったかいスープをふ~っとのむ。
    そうすれば大概のことは大丈夫かも・・・
    そんな気持ちになれる本でした。

  • 前作「つむじ風食堂の夜」でハマったけど、
    この人の小説は
    必ずここではないどこかへ、
    一瞬にして連れてってくれる。


    今回はその秀逸なタイトルに
    惹き付けられたけど、
    まさしくタイトル通り、
    読めば読むほど
    いい香りの湯気が
    たちのぼってくるかのような作品です(^_^)


    アパートの最上階に住む
    気さくな大家
    “屋根裏のマダム”。

    昭和堅気な
    サンドイッチ屋トロワの店主の
    安藤さん。


    安藤さんの息子で
    しっかり者の小学4年生、
    リツ君。


    いつも映画館で会う
    品のいい初老の女性。


    昔ながらの店が立ち並ぶ
    駅前の商店街。


    アパートの窓から見える
    教会の白い十字架。


    気まぐれに鳴る
    教会の鐘の音。


    ポップコーンの香り漂う
    月舟シネマ。


    線路ぎわにある
    昔懐かしい
    「夜鳴きそば」。



    どこか異国の話のようで
    昔懐かしい昭和の匂いも感じさせる
    心ほどけるおとぎ話。


    物語が終盤に近づいてくると、
    心に染み込ませるように
    少しずつ少しずつ
    噛みしめながら、
    ページをめくってたなぁ〜(>_<)


    それくらい
    読み終わってしまうのが寂しいと感じた小説です。



    ハムやキュウリのサンドイッチ、

    チーズに、
    タマゴに、
    いちごジャムに、
    じゃがいものサラダの
    サンドイッチ。


    夜の香りが溶けこんだ夜鳴きそば。


    などとにかく
    出てくる食べ物が
    みんな美味しそうなのもツボでした(^O^)


    食事は今日が一度しかないことを教えてくれる。

    食べちゃえばそれは消えてしまうけれど、
    テーブルを共にした人々の記憶には
    かけがえのない思い出が刻まれる。

    それはお金なんかじゃ買えないし、
    消えてなくなるからこそ
    いつまでもいつまでも
    記憶に残っていく。


    そういった数限りない食事の時間を共にして、
    人は流れていくのかな。



    オーリィ君の恋の行方は?


    サンドイッチに合う
    極上のスープは完成するのか?



    食べた瞬間、
    舌が『もう一度』と要求する
    美味いスープのように、
    何度でも味わいたくなる
    至福の小説です♪

  • 私たちの日常には、小さな幸運と不運がある。

    食事は毎日するから、それがおいしいものであれば少なくとも1日数回は小さな幸せがある。
    おいしいサンドウィッチを食べ、スープを飲み、一服をして、コーヒーを飲む。たまにはラーメンを食べに行く。

    そして小さな幸せの合間に、小さな悩みや、発見、驚きや葛藤がある。
    仕事を探さなくてはいけなかったり、近所の男の子が教会に入っていくのを見かけたり、知らない人と何度も色んな場所で会ったり、スープにあと何が足りないか考えたり。

    そんな当たり前の生活を、街並みや映画館、家の庭、そして料理の描写で美しく色付けして1つの物語にしている。

  • ゆったりとした心温まるお話です。
    心を込めてスープを作りたくなります。

  • 休日にコーヒー片手に読むのに最適な本。
    とにかく日常の温かいお話が読みたくて、
    検索したところおすすめされている方がいたので購入しました。
    読み終わった後にもう少しゆっくり読めばよかったと思うくらい、ファンタジーの作品を読むように夢中になって読んでしまいました。
    ほっこりして、なぜかどこかロマンチックな感じがして、お気に入りの1冊になりました。

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路面電車が走る町に越して来た青年が出会う人々。商店街のはずれのサンドイッチ店「トロワ」の店主と息子。アパートの屋根裏に住むマダム。隣町の映画館「月舟シネマ」のポップコーン売り。銀幕の女優に恋をした青年は時をこえてひとりの女性とめぐり会う-。いくつもの人生がとけあった「名前のないスープ」をめぐる、ささやかであたたかい物語。

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