犬 (中公文庫 く 20-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122052444

感想・レビュー・書評

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  • 犬ってバカなほどかわいい。

  • 犬好きにはいっそう楽しいアンソロジー。読んだことがない作家ばかりで、しかもほかの作品も読みたくなった。

    阿部知二「赤毛の犬」:高度成長の前の広い空や原っぱに響く子供の声が聞こえてきそうな話。抑制の効いた文体が気持ち良かった。

    網野菊「犬たち」:この人は私小説の人だから、主人公はたぶん当人とかぶるところがあるのだろう。小柄で、声も小さめで、独りでじっとしていそうな、でも心の中では頑固者かもしれない、尾崎翠の話に出てきそうな女の人を想像。

    伊藤整「犬と私」:同時代の作家の随筆から想像していた、きっちりして冷静な人とはだいぶイメージが違う、おちゃめな随筆。内心の動揺を自虐的に描いて笑いを取るスタイルなんだけれど、いまどきのエッセイのよう。

    川端康成「わが犬の記 愛犬家心得」:この人はイメージどおり、だいぶ神経質で気難しい書きっぷり。でも嫌な感触ではなくて、ところどころに犬への強烈な愛情がこもったフレーズがあって、にっこりさせられてしまう。

    幸田文「あか」:童話仕立てなんだけれども、最後の4行で不覚にも涙が出てしまった。電車の中だったのに。3時間後にもう一度読んだら、やっぱりじわっときた。この本の中では一番好きというか、否応もなく心を打たれてしまった。

    志賀直哉「クマ 雪の遠足」:取捨選択がされていないわけがないのに、書き手のフィルターが掛かっていないかのような、ものすごく透明な文章。びっくりした。多くの後進者に影響を与えたことを納得。

    徳川夢聲「トム公の居候」:ほかの作者がどちらかというとキッチリ派なのに比べると、夢聲さんの筆致は大らかでコミカルで、開けっ放しな犬好き魂が伝わってきて楽しい。犬のキャラが立っているという意味ではトップ。

    長谷川如是閑「「犬の家」の主人と家族」:きちんとしつけるのが飼い主の務めであり、それをやり遂げればどんなに素敵な犬ライフが待っているかがわかる。でもこの人すごい。ローレンツ先生みたい。

    林芙美子「犬」:犬とする会話から、「私」にとってその犬がどれほど大事な存在なのかが伝わってくる。たった4行なのに。私も会話したい。サブキャラのミミズクもいい味を出してます。

  • 年末に出た「猫」に比べると似たような話が多いのですが、その中でも幸田文の童話「あか」が絶品です。

  • 2010年1月15日購入

  • 文豪たち一人ひとり、犬に対する気概、が色々に違っていて、面白い。
    伊藤整の、ちょう甘やかされて育った高貴な犬、ミミイの話が好き。
    それにしても旧かな遣い、漢字、読んでいるとタイムスリップです。

    MVP:子犬(雪の遠足についてくる様が可愛らしい)

  • 「猫」と同様、昭和29年に発行されたものをクラフト・エヴィング商會さんが再アレンジして発行してくれたもの。それ故に、ひとと犬とのかかわり合い方の時代の変化というものをしみじみと考えさせられたりします。
     純粋犬派と雑種犬派とがいたりして、それぞれに書き手のこだわりが見て取れて興味深いのです。

    ●いつたい日本人は、動物にたいしては、人間をあつかうようにあつかわなくてもいいように思つています。子供が罪もない蛙に石をぶつけているのを見ても、しかる大人が少い。人に害をしない蛙に石をぶつけるのは、往来の人に石をぶつけるのを見ても、いけないことに決まつているのに、相手が蛙だからかまわないというのはずいぶん乱暴なはなしです。
     犬も、ですから日本のはどうも性質がよくないのが多い。人間にいじのわるいあつかいをうければ、犬だつてわるくなります。でもまだ犬の方がましで、人間はウソをつきますが、犬はウソをつくことができません。(「犬の家」の主人と家族 長谷川如是閑より)

    2010/1/11 読了

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著者プロフィール

1904年東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。’28年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚、幸田家に戻る。’47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。’56年『黒い裾』で読売文学賞、’57年『流れる』で日本藝術院賞、新潮社文学賞を受賞。他の作品に『おとうと』『闘』(女流文学賞)、没後刊行された『崩れ』『木』『台所のおと』(本書)『きもの』『季節のかたみ』等多数。1990年、86歳で逝去。


「2021年 『台所のおと 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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