- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122053052
感想・レビュー・書評
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お風呂の栓を抜く時のように、あるいは
蟻地獄に蟻が吸い込まれていくように世界史の諸相にはそれぞれ「中核(ヘゲモニー)」があり、そしてその「周辺」があった。14世紀末から20世紀初めまでの約500年を主に海から、国にとらわれずに眺める。
はじめはアジアとヨーロッパの貿易は、イスラーム圏などですでに確立していた貿易にヨーロッパが寄生するかたちで利益をえていた[p170、201]。これは19世紀も続いた[p301]。
そもそもそのような辺境の地域でしかなかった欧州諸国が、レコンキスタを契機に海へ飛び出してイスラーム勢力などを回避する新しい航路を見いだそうとしたのがはじまりだろう。そして発見したアメリカ大陸は、レパントの海戦(1571年)で欧州諸国(スペイン)がオスマン帝国を破るまでの経済的バックボーンになる(そのことをオスマン帝国内部でも分析していたらしい[p154])。
そのあとスペインがオランダの独立をゆるすなどして衰退し、「中核」はオランダへ、その後の流行や嗜好の変化(オランダ支配していた植民地で取り扱っていた香料などが時代にあわなくなるという奇跡!)などで[p200]イギリスへ、というのが20世紀前後までの大まかなストーリー。
イギリスの朝食の変化がそのまま時代を表していた[p305]。紅茶に砂糖を入れて飲むというのは、その当時の労働者を効率よく働かせる?食習慣として確立したものらしいが[p309]、世界規模で貿易の主導権を握ってできることだった。紅茶は中国から、砂糖は西インド諸島からもたらされるからである。それぞれ、イギリスからみれば東の端と西の端。
20世紀にはいると、イギリスは工業生産の面ではドイツやアメリカに抜かれるようになる。しかし金融面では依然として大きな影響力を保持(オランダもそうだった)した。その後の「中核(ヘゲモニー)」をめぐって現代の悲劇的な戦争につながっていく流れ。詳細をみるコメント0件をすべて表示